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日本昔ばなしに見る共生共存の世界

海ノ民話のまちプロジェクト

アニメの「まんが日本昔ばなし」。
昭和時代の人なら知っている人が多いと思います。私はこのアニメが好きでよく観ていました。いつのまにか放映されなくなってしまったのが残念でした。

昨日「海ノ民話のまちプロジェクト」を知りました。

海に関わりのある日本の民話や伝承を子供たちに伝え語り継ぐプロジェクトだそうです。ここに出てくるアニメを見ると、子供の頃に見た「まんが日本昔はなし」を思い出します。それもそのはず。これの制作に関わっていた方の息子さんが引き継いで、今、このプロジェクトに携わっておられるそうです。

上記サイトにもYouTubeにもアニメ動画がたくさんアップされています。1本が5分ぐらいの短いストーリーにうまくまとめてあります。気になったので見てみました。私がそこに見たのは、今必要とされると私が思う世界観を示唆するものでした。同時に、近年の日本人が失ったもの、そしてこれ以上は失うべきでないことが見えてきました。

このプロジェクトのアニメストーリーは、実際にある伝承や民話から作り上げたものです。監督の沼田氏は、昔話には教訓や私たちが大切にすべきことが盛り込まれていると言われます。アニメを観てそれを強く思いました。

アニミズムの共生共存の世界

ほとんどのストーリーが人間と人外が交流しています。人外は、神さま、動物や植物などの生き物や、鉱物などの自然物、精霊の類です。それらが戦うのではなく、助け合う方向に向かう話が多いです。それぞれが良心に基づいて行動します。なかには悪いことをする者への戒めの話もあります。

アニメは子供向けにわかりやすく作られています。短い時間なのでシンプルにまとめてあり、実際の伝承とは多少違うかもしれません。いろんなストーリーがありますが、全体を通しての一貫性があります。それは敵対したり競争する勝ち負けのストーリーではなく、生きとし生けるものが共存している風景や、自然の一部としての人の姿です。

動物や植物、神さま、妖怪、もののけなど、自然界の霊的なものが具現化して人と交流します。アニミズム的な感覚ですが、人と人外の区別が曖昧です。

変性意識では自我の境界が曖昧になる

日本は昔はそうだったと思います。自我が私個人としてではなく、まわりの「なんとなく」を含めたあいまいな場としてあったと思います。
理性的な理路整然とした意識だけでなく、イメージや象徴、直感や五感などによる感覚的な「感触」・・・正体はわからず、言葉になる以前の状態で存在している何かを無意識がキャッチしています。意識はキャッチしていることだけをなんとなく感じ取っている、という状態。

簡単に言えば、変性意識状態。
その状態だから、神様が現れたり、動物がことばをしゃべっても不思議に思いません。そういう空間作りができています。

日本人が自然に身につける倫理観

自分のしたことが返ってくるという教訓的なこともストーリーの中に織り込まれています。言葉での説明がなくても、アニメを観ながら「やましいことをしちゃいけないな」とか「困っている人は助けよう」などいう考えが育っていきます。

今の極端な競争差別社会が崩れた先に現れるであろう次の時代がこのプロジェクトのアニメで表されている共生共存的なメンタリティーだと私は感じます。

昭和の時代に「まんが日本昔ばなし」を観て育った人たちは、そういう倫理観を自然と身につけたと思います。「生き物は大切にしよう」「神様に感謝しよう」「やったことは自分に返ってくる」「良心に従って行動しよう」など自然に思うわけです。

と言ってもみんながみんなそうなるわけではないですし、昔から非情なことをする人たちや戦いを好む人たちはいます。しかし、日本で落とし物をしても戻ってきやすい、自販機が壊されないという安全安心社会や従順な日本人の資質のベースにこれらの物語に見るような倫理観や世界観があるからだと思います。

このアニメを観ていると、1万5千年も続いたのに争いがほとんどなかったという縄文時代のメンタリティはこんなふうだったんだろうなと思います。

破壊されていく古来日本の一体感的な世界観

例えば、最近よくある飲食店でのあるまじき行為。SNSにアップして話題をとりたいという、以前はなかった機会があるとしても、倫理観がちゃんと育っていたら「お店や他のお客さんに迷惑だ」と思ってしません。
逆に見れば、今までは暗黙の了解で、人に迷惑をかけることはしないというフレームの中にいたのだなと気づきます。今までは回転寿司などで食べ物に悪さされることなく機能していたわけですから。みんな、そういうことをしちゃいけないと思っていたか、思いつきさえもしなかったでしょう。

昔話伝承はタブーや悪とされることへの抑制力があります。今は漫画やアニメ、SNSが代わりになっていますが、刺激を求める傾向が強く、過激な内容が多いです。日常で得られない刺激をバーチャルな世界から得ようとしますが、それには際限がありません。

日本には仏教や神道はあれど、西洋から見たらそれは宗教ではないそうです。神との契約も教義もありません。けれども日本の自然観に基づく倫理観は深く日本人の心と文化に浸透していました。

残念ながら長年かけてそれが意図的に破壊されてきて、今があります。この先もどんどんとそういうメンタリティと文化は殺されていく方向に向かうでしょう。内側からじわじわと国の良き文化や伝承が置き去りにされて消えていっています。
それをキープするもしないも私たち一人一人にかかっています。そのように仕組まれてきたとはいえ、西洋文化を取り入れることを選んだのは私たち自身ですから。

はなさかじぞう、したきりすずめ、鶴の恩返し、、などいろんな昔話を聞いて育ちました。物語にある教訓は自然と脳裏に入っていきます。何度も繰り返し聞くことで自然と身につきます。これも洗脳と言えますが、ホワイト洗脳というか、世の中が争わず平和になるためのヒントが盛りだくさんです。いいことばかりでなく、自然の危険さや人生の厳しさなども盛り込まれています。情緒面を豊かにするのに適しています。

お子さんがいらっしゃる方は、ぜひこれらの動画をお子さんに見せてあげてください。きっと心豊かな大人になっていかれることでしょう。


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