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精神疲労と脳:ご褒美で脳が復活する?

疲労というのが何かという議論がありますが、これには脳の損得計算が絡んでいるのではないかと考えられています。何かを手に入れるのに割が合わないと判断すれば、疲労感が生じ、ちょっと頑張れば手に入ると判断すれば疲労を感じにくいというのです。

つまりは価値判断能力が疲労に関係しているという話なのですが、これはいったい本当なのでしょうか。今回取り上げる研究は認知疲労とご褒美、脳活動の関係について調べたものです。

精神疲労と報酬処理の神経相関: タスクベースの fMRI 研究
The neural correlates of mental fatigue and reward processing: A task-based fMRI study

この研究では認知課題を行わせて被験者に認知疲労を誘発させています。そして認知疲労が出た段階でご褒美(もうちょっと頑張ればお金を上げる)を提示して、そこでモチベーションと脳活動がどう変化するかについて調べています。

結果としては以下のことが示されています。

・課題が進み、認知疲労が蓄積されてくるとパフォーマンスも低下して両側の角回、島皮質、前頭眼野など広範囲で有意な活動低下を示す(A)。

・ご褒美が提示されるとパフォーマンスが改善して、認知疲労の程度も下げ止まる。

・また、このとき価値判断に関わる両側の前頭極、前頭眼野、島皮質、前部帯状回などで有意な活動上昇が見られる(B)。


Darnai et al., 2023, Fig. 3

つまり、疲れてくると認知処理や情動に関連した領域の活動が低下するのですが、ご褒美が提示されることで価値判断に関わる領域や認知処理に関わる領域の活動が上がってくるということが示されています。

Q: 認知疲労のマーカーについてもうちょっと知りたい。
明日読む論文

精神的疲労状態の根底にある神経メカニズム:系統的レビューと活性化尤度推定メタアナリシス

Neural mechanisms underlying state mental fatigue: a systematic review and activation likelihood estimation meta-analysis

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