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「嫌われる勇気」と所属欲求

一昔前に「嫌われる勇気」という本が流行ったが、実際嫌われることを選ぶのは難しい。

というのも、進化の過程で身につけた所属欲求というものがあるからだ。

所属欲求というのは文字通り、共同体に所属したいと願うもので、

この欲求があるおかげで生存・生殖確率があがったのではないかと考えられている。

確かに独りで生きていくよりは大勢に巻かれたほうが安全といえば安全だ。

そして人間には所属欲求が満たされないときには痛みを感じる仕組みがあるともいう。

死別や離別、追放を恐れるのは、そこに心理的な痛みを伴うからだ。実際脳の中を調べてみると、体の痛みと似た反応が引き起こされるという報告もある。

そう考えてみれば「嫌われる勇気」というのは、痛みに耐える勇気と取ることもできる。

集団から離れ、個人として生きることは、自然ではない。しかし、人間の本質は自然の軛から自由になろうとする衝動にあるのではないかとも思う。


本能に盲従することなく、かといって無視するのでもなく、この生を十分に行使できれば、と思う。


【参考文献】

Gere, J., & MacDonald, G. (2010). An update of the empirical case for the need to belong. Journal of individual psychology, 66(1), 93-115.


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