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集団対立の心理学:5つの重要な心理的要素

ウクライナ戦争勃発後、不安定な世界情勢が続いています。戦争は人間の最も醜い面も引き出してしまうのですが、集団と集団が紛争に向かう要素としてはどのようなものがあるのでしょうか。

今回取り上げる論文は、集団が他の集団に攻撃行動に踏み切るときの心理的要因についてまとめたものになります。

危険な考え: グループを紛争へと駆り立てる 5 つの信念。

Dangerous ideas: Five beliefs that propel groups toward conflict.

この論文によると集団間の紛争の引き金となる心理的要因には以下の5つあるのではないかと論じられています。

・優越性
・不正義
・脆弱性
・不信感
・無力感

優越性とは自分や自分が所属するグループが、他のグループよりも優れている感覚になります。この感覚があると他のグループに対し、特権的な行動ができるという認識が生まれます。

不正義とは自分や自分が所属するグループがフェアに扱われていない感覚を指します。このような状態では不正義を正すために暴力を行使してもよいという感覚が生まれます。

脆弱性とは自分や自分が所属するグループが攻撃に対して非常に弱いという感覚になります。この感覚は不安感を高め攻撃行動を誘発しやすくなります。

不信感とは相手や他のグループを信じられない状態になります。このような状態も同じく不安感を高め攻撃行動を誘発しやすくなります。

無力感は自分や自分が所属するグループが無力であることを感じる感覚になります。無力感がある状態では戦おうという意志もなくなり、攻撃行動が行われにくくなります。過去の南アフリカにおけるアパルトヘイトの状態がこれに当たります。

このように集団紛争には5つの要因が絡んでいるのですが、上記4つが組み合わさると、

「われわれは優越な特別人だが、われわれは不当に不公平な状態に置かれている。われわれの状況は、不安定である。われわれが脆弱な状態になっているのは、他のグループがわれわれに不利な行動を繰り返し、裏切ってきたからだ。いまこそ、力を合わせて行動しなければならない。」

といった思考パターンが形成され集団間の紛争が引き起こされるのではないかと論じられています。

Q: 集団紛争を解決できた事例にはどのようなものがあるのか?

明日読む論文

Overcoming psychological barriers to peaceful conflict resolution: The role of arguments about losses
紛争の平和的解決への心理的障壁を克服する: 損失に関する議論の役割


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