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疲労の脳科学:疲労の二重モデル

人間、働いていると自然と疲れてしまいますが、この疲労とは一体どのようなものなのでしょうか。なぜ机の前で座って作業しているだけなのにぐったり疲れてしまうのでしょうか。

頭を使って疲れる現象は精神疲労と呼ばれていますが、今回取り上げる論文は、この精神疲労がなぜ起こるかについて仮説的なモデルを提示したものになります。

Neural mechanisms of mental fatigue

精神疲労の神経メカニズム

この論文によると、認知負荷がかかると脳には二つの変化が生じるのではないかと論じられています。

一つはやる気を高める仕組みである精神賦活システムを高める変化で、もう一つはやる気をげんなりさせる仕組みである精神抑制システムを高める変化です。

Ishii et al., 2014, Figure 3を参考に筆者作成

このような矛盾した変化は一見納得がいかないような気もしますが、重いバケツを持ち続けることを考えてみればわかるのではないでしょうか。

重いバケツを持つと、落としてはならないと気が張って筋肉がみなぎります。しかし同時に重さに耐えかねて筋を緩めようとする力も同時に働きます。

筋をみなぎらせるのと緩めさせるのが張り合って、どちらかが強ければどちらかの方に傾きます。重いバケツも持ち続けると、緩めさせようとする力が上回り、最後にはバケツを落としてしまします。

精神疲労も同じで、難しい課題を行うときにはテンションを上げる仕組みと下げる仕組みが同時に賦活されます。その塩梅によって精神疲労が起こったり、起こらなかったりするのでないかというのです。

また、毎日頑張りすぎると、頑張ろうとしても疲労が溜まって頑張れない状態になってしまいます。これは、連日頭を酷使していると、最後には体の設定が変わってしまって、慢性的な疲労が引き起こされるのではないかと、このモデルで説明されています。

なかなか説得力のあるモデルだな、と思いました。

Q: 実際の脳活動としてはどのように説明されるのか?
明日読む論文:
精神的疲労とモチベーションがニューラルネットワークダイナミクスに及ぼす影響。 EEG コヒーレンス研究
The influence of mental fatigue and motivation on neural network dynamics; an EEG coherence study

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