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死別の悲しみを脳はどのように調整するのか

人間の営みのあれこれに興味があって調べたりまとめたりしているが、悲嘆について何かを語るのは非常に気が引ける。というのも別れの痛みは科学で語れるものではないと思うからだ。これを読んでいる中には必ず悲嘆の渦中にいるひとがいるはずで、そんな人に向かって「脳科学的には・・」としゃあしゃあというのは心苦しい。とはいえ、私の業として、調べて考えたことを書かずにはいられないというところもある。

なので、もしこの記事のタイトルを読み痛みを感じる人がいたら、今回の記事はスルーしてほしい(7-8回シリーズで大分続くが)。

さて本題の死別の悲しみを脳がどのようにしてコントロールするかというテーマだが、問題になっているのは悲嘆感情である。

愛する人を喪失したときや大事な役割を喪失した時には、悲嘆症状が現れる。この悲嘆症状は通常喪失後数ヶ月続くが、これが18ヶ月以上続く場合は、医学的には複雑性悲嘆と判断される。ちなみに発症率は喪失を経験した人の7-22%で全世界でおよそ2億人が該当するという。

また悲嘆の特徴は悲しむだけではなくて、悲しむものを繰り返し思い返したり、追い求めたりすることである。今回取り上げる論文は、ペットをなくした人を対象に、悲嘆に関わる脳活動を調査したもの。

悲しみを制御する神経機構
Neural mechanisms of grief regulation

この研究では、ペットを最近なくした人を対象にストループテストと呼ばれる認知(注意)課題を行わせ、その時の脳活動を調べている。結果として悲しみの強さは扁桃体の活動に反映されており、前頭前野(背外側前頭前野と吻側前帯状皮質)が悲嘆症状(注意の偏りや悲しみ)のコントロールに関わっていることが示されている。

論文 figure 4 を参考に筆者作成

Q: この論文で示されているImpact of Event Scale-Revisedという評価尺度のことを知りたい。悲嘆の侵入思考と回避性を評価するもののようだが。

明日読む論文
The impact of event scale-revised (IES-R)
イベント規模の影響-改訂版( IES-R)


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