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#創作大賞2022 応募(#3/10)|何故、土木の仕事が嫌だと思ったのか?|廻り巡って結局のところ向き合う他にない。

クラスメイト。

5年生の専門学校でした。2年生の夏頃までは(ほぼ満点)優秀中の優秀だったと思います。そもそも、そこに集まるクラスメイト達は、同類(成績が良くて、リーダーシップがあり、個性的な人達)だったため、誰が一番でドベでも余り関係のない世界だったのです。

そんな素敵なクラスだったのでしょう。


アルバイトと音楽。そして留年。

クラスメイトで始めたバンドが幾つか集まって、オリジナルコンサートを企画することになりました。その打ち上げとして、世論島・沖縄の船旅を満喫しようぜ!というのが、この贅沢さが、「自由」を勘違いする最悪の原因になったのかも知れません。

鰻屋さんで稼いだバイト代を、ギターとエフェクターと、旅行代と、煙草と茶店代と、着飾るための衣服代に費やしました。

「音楽」という自由感に惹かれて、自分を見失っていたというのが分かり易い答えの一つです。

5年制ですが、「道を見失った」ばかりに延べ7年の在籍となりました。

5年生時に脱落し留年を受け入れ、空いた時間を鰻屋さんのアルバイトと音楽のための時間に費やしました。その頃が「桑名正博」または「武田鉄矢」に似ている?と囃された時でした。

6年生時には、未だやはり土木に向き合えずに、さらに半年間を、担任の先生の友人となる会社への実習と位置付けたアルバイトに充てました。
この頃、関西エリアでは「関西新空港」の話題が尽きませんでした。
このお世話になった会社は、各所にあるトンネル工事の付随作業として計測業務を担うものでした。

その中心となった技術が「NATM|New Austrian Tunneling Method」でした。



7年生時に真面目に取り組んだ卒業論文が「NATM|理論と実際」でした。この取り組みは、お世話になった計測会社さんの下で経験したことを、記録に残したい想いからでした。

まさかと想いながら検索してみたところ、何んと(PDF形式とまでは叶いませんでしたが)ライブラリーの何処に保管されているかという情報に辿ることができました。


卒業論文|NATMの理論と実際。


徹夜で何日かを研究室で過ごしたことを思い出しました。
カレーヌードルと初めて触れるパソコン(MS-DOSプロンプトのコマンド入力が必要)、時間を決めて競いあったゲームのことが良い思い出です。
今想えば、一太郎や花子なんて、どうやって操作したのかも全く記憶に残っていません。それでも最終の成果物(紙ベース)で担任の先生宛てに提出した時の記憶が薄っすらと残っています。

NATMとは、地中で掘削した空洞が重力によって崩れようとする力を、大きなアンカーで吊り下げようとするものです(アーチ型のブロック製の橋がバランスを保つイメージです)。

NATM工法のアーチ効果の説明


計測会社での仕事内容とは。

アンカーボルトと呼ばれる異形棒鋼に切り欠きを入れ、そこに歪ゲージと呼ばれる測定コイルを貼り付けます。切り欠いた部分を硬質プラスチックで埋め戻して完成です。この測定装置を付けたアンカーボルトをトンネル内に打ち込み、地盤が崩れようとする動きを測定するのです。


現場に工夫と呼ばれる作業員さんがいる時間帯では、助けて頂きながら計測機器の挿入(設置)作業を行います。

大変なのは、通常作業の隙間を縫って設置作業をすることが多く、計測会社のスタッフ(先輩とアルバイトの私2人)だけでやり遂げる必要がありました。

手元の近い場所の作業は楽勝ですが、真上(天井付近)の作業時には、高所作業者や長梯子を駆使して、全ての段取りを熟す必要に迫られるのです。

斜坑(傾斜30度|三角定規の小角)を利用して地上との昇降をする他に手段はなく、交代時間や休憩前後のトロッコ稼働時間に間に合わせて作業を進める必要がありました。

これがとても恐怖だったことを鮮明に覚えています。

何故なら、どれだけ効率良く早く作業を終えても、地上へは決められた時間にしか戻れない状態だったからです。

ある日の作業は楽勝でした。夜中の交代時に斜坑(トロッコを利用)を通じて、最下へ行き4時間ほどで作業が終わったのです。

先輩と相談しました。「どうする?あと4時間ほどココでぼっ~と待つ?」「それとも、斜坑を歩いて地上へ戻る?」「恐らく、人力で2~3時間ほどは掛かるんじゃないかな?」

未だ若かった私はほぼ即答でした。可能な限りこの地下から抜け出したい一心で「歩く」ことを選択したのです。

途中、何度も諦めそうになりました。作業用の荷物が殆ど無かったことが幸いでした。脹脛がパンパンに張り、汗が洪水のように滴り流れ落ち、ヤッケの下はびしょ濡れ状態でした。安全長靴の中にも汗が溜まって、いつの間にか水の中を素足で歩くような感覚を覚えたのでした。

恐らく距離にして2kmだったと記憶しています。きっちり3時間が必要となりました。

トンネルを抜けた時。先輩と抱き合って「よかった。よかった。頑張りましたね。」と褒め合い、弾ける奇声をあげました。

その帰りに、六甲山の温泉(真茶色の温泉で白いタオルは完璧に染まります)で、鼻の中や耳の中、目尻に溜まった吹き付けコンクリートの異物を一生懸命に洗い流しました。

あの充実感と爽快さは今でも記憶に鮮明に残っています。


もちろん、乾杯は冷たい缶コーヒーでした。


プロが解説。トンネル(NATM工法)の施工方法

地図に残る仕事。

有名どころとしては「鷲羽山トンネル」です。
確か、貫通式の日に仕事が重なった記憶が残っています。

この頃は未だ橋が架かっていない時でした。

その他、神戸北トンネル、遠方では富山の宇奈月温泉、様々な地で計測機器の設置作業を先輩方々と共に熟しました。


「土木の仕事っていいな~。」「なぁ。そう思うやろ?」「だってな。考えてみぃ。」
「地図に残る仕事なんやで。」「どや。凄いやろ。」「でっかい仕事やろ?」

確かに。言葉では理解し、苦労が清々しい気持ちとなって戻ってくることに、感動を覚えた記憶はありました。

ただ、本当の意味での「人を支える」「誰かの命を守る」「半永久的な構造物」という理解には至ることはありませんでした。


山岳トンネルのつくりかた

知れば知るほど、奥の深さと興味は湧き上がりました。

ただ、一つのプロジェクトは長ければ10年単位。短くても5年単位。

その頃の小さな考えの自分にとっては「同じ場所、辺鄙、僻地、楽ではない場所」に拘束されることが、とても怖かったのだろうと思っています。

未だまだ自分には「他にできること。」「他の方法で花開くこと。」そんな可能性という言葉から卒業することができなかったのです。

今、振り返って想えば、長期間の仕事が約束されるだけでも、どんなに有難いことか。そんな簡単な発想さえも思い浮かべてみる心の余裕(器)は全く無かったのです。


卒業と就職の決意。

世の中の当たり前をいい加減に始めなければならないと感じ、卒業という節目を創り、遅ればせながらの就職を決意しました。

お世話になった計測会社の皆さまへは、感謝という言葉より愛情に近い想いを抱いています。
大好きでした。皆さん。本当にありがとうございました。

社用車のバンで出発の時には、いつもエメマンの缶コーヒーでしたね。
呑みに連れて行って頂いて、会社の事務所の床で一緒に添い寝して頂きましたよね。
海浜公演で夜通しバーベキューを焚きましたね(玉ねぎを食べ過ぎて、後が大変でした)。
一気飲みで挑戦し合いましたよね。
ちょっと暴れて、器物損壊ぎりぎりってこともありましたよね(内緒)。
社員旅行にまで合流させて頂いて、ヘベレケにして頂きましたよね。
皆んなの慕う可愛い事務員さんが結婚発表した時に、泣きましたよね(羨ましさと寂しさで)。
ただのアルバイトなのに、盛大なお別れ会をして頂きましたよね(一緒に泣いてくれましたよね)。


あの全ての思い出は、今も胸の奥にしっかりと残っています。

本当にありがとうございました。

きつく苦しい仕事の中に、皆さんのお互いの気配りと思い遣りが大切で貴重なオアシスでした。

その時代ならではの心の繋がりだったのでしょうか?

これらの記憶を励みに呼び覚ましたり、後悔となって思い出して寂しくなることもあったりしています。


こうしてその当時は、土木への興味を持ったことになったまま、2年遅れの7年生として5年制の学校を卒業することになりました。

22才でした。


つづく


最後までお読みくださり、ありがとうございました。

胸の内を全て書き出し終えるまで、向き合い直す他にありません。

「楽観の部屋」でしか、言葉にできないことに気付かされました。

書き出すことで生じる嬉し悲し複雑な苦悩の時が、暫くは続きそうです。


静かにお見守りを頂ければ幸いです。


_(._.)_

※ペコリ _(._.)_ は、誤字脱字(見直し)の確認の印です。
(発見された方は、是非ご指摘願います。真摯に受け止めます💝)



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※この記事の悩みどころ(表現や判断に迷った事などをメモしています。)
・「共感」を求めるための綴りではありません。ただ淡々と「飾らない言葉」で表現するつもりです。思考を曲げないために、妨げないために。ある意味でそう宣言します。自分のために。


※参考・引用など


<イメージ写真・動画など>

幾つもの峠を越えて|K-systemさん制作
https://www.photo-ac.com


以上



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