眉毛

眉毛について書こうと思う。

私は眉毛に酷くコンプレクッスを持っている。

化粧の中で一番難しいとも言われている「眉毛を描く」という行為。

とても苦手だ。

＊

眉毛に対するコンプレックスを語る前に、私の化粧への憧れを書いていこう。

私は中学生になった頃に化粧に興味を持った。

自分では化粧品を持っていない。

どうしても化粧をしたい人は、次に人の物を借りるだろう。

例えば母親とか。

残念なことに当時の私の母は、肌が弱く化粧をすると荒れる肌質だった。

したがって「化粧品」を持っていなかった。

当時化粧品を借りる友人なんていなかったし、ダサくて暗くて本だけが友達の私が、友人と化粧の話をするなんてもっての他だった。

よって友人から借りるという選択肢もなし。

「中学生のお小遣いから化粧品を買う。」

その発想もなかったし、金額が少額過ぎて一式そろえる余裕もなかった。

それに、母親が中学生のくせに化粧をするなんて絶対ダメだという雰囲気を醸し出していたので、万が一そんな物を持っていたら、何を言われるかたまった物じゃない。

そんなこんなで、化粧に対する興味だけが膨れ上がっていた。

図書館で読めるティーン向け雑誌を読み漁り、キラキラした自分とは違うモデルさんを眺めては、自分と違うとため息をついた。

そんな想いが遂に爆発したのであろう。

私は母に、化粧がしたいと迫った。

当然返事はＮＯ。

でも、ことあるごとに化粧をしたいと言い続けたら、とうとう

「近所に住む綺麗なママ友に、私に化粧の仕方を教えてくれと頼んだから行っておいで」と言われた。

嬉しかった。

ウキウキしながらその人の家に遊びに行った。

楽しすぎて記憶がないのだけど、マスカラや口紅を塗るだけの簡単な化粧をしてもらってルンルンで帰ってきた。

それを見た母の様子は覚えていない。

＊

高校生になり、休日に少しメイクをすることを始めたが

基本はすっぴんだった。

母親の呪縛（化粧が必要ない若いお肌に、わざわざ化粧するなんてもったいない。と言われていた）もあったし、化粧をするより毎日生きていくことが大変だったからだろう。

＊

大学生になり、本格的に化粧を始めた。

少ないバイト代から、毎月１０００円くらいのメイクアイテムを１つだけ買うのが当時の楽しみだった。

そうやって揃えていった化粧品を、試行錯誤しながら毎日化粧する時間が楽しかった。

＊

その頃から、人から私の化粧の腕前をジャッジされるようになった。

とある男の先輩から、つけまつげまでしている私の顔面を見て「今日すっぴん？なんで化粧しないの？」と言われショックを受け

同性の同級生から「今日のアイラインの引き方良い感じ」と褒められては嬉しくなり

「その化粧品何使ってるの？」と情報交換したりしていた。

＊

化粧するようになってから、ずっとコンプレックスだった眉毛。

自分でも毎日なんか違うこれじゃないでもどうすれば？

と思い雑誌を読み漁り、試行錯誤していた。

プロにメイクされる機会があると、その手順をまねしてみたり。

でも、納得のいく眉毛になったことは、まだ一度もない。

＊

そうして社会人になった。

私の職場の上司が、「私の眉毛変」と言ってきた。

続けて「眉毛サロン予約したから行ってきて」と

驚きつつ感謝しつつ、サロンに行ってきた。

仕上がった眉毛を見て、上司は嬉しそうだった。

でも私には、続けてサロンに行く余裕はなく、自力で維持しようと必死だったが無理だった。

＊

その頃私は家を出ていたので、たまに帰省して、朝化粧をしていると

母が「その眉毛ないわー。ちょっとこっち向いて」と、私の眉毛を勝手に整え出す。

そういうことは大学生くらいからたまにあった。

自分でやるのも限界があるから、人に任せても良いかな。と思っていた。

それでも、毎回のように帰省すると眉毛について言われるのはいやだった。

＊

一度、親戚のおばちゃんと母が一緒になって、私の眉毛のダメだしをし始めたことがある。

あれには参った。

地獄のような拷問の時間だった。

＊

最近もまた、帰省したら

眉毛のことについて言われた。

「あんた、なんでそんな変な眉毛してんの。ちゃんと整えてるの？こっち向いて」と、整えられた。

もう内心いやでいやでしょうがない。

自分でやるよりましだからと思いながら。

整えられた自眉に自分で眉を描いたら、兄弟や母にさらにダメだしを喰らい

心が折れたので、完成した化粧を全て落として最初から化粧をした。

それもからかわれ、さらに

「何拗ねてんの。こんなこと、家族ぐらいしか指摘できないのだから、アドバイスはありがたく受け取りなさい。」と言われた。

もう散々だった。

確かにアドバイスは的確かもしれない。

私が描く眉毛はおかしいのだと思う。

おかしいと言われ続けて、悪い意味で開き直ってるのに、他人から言われるとヘコむという訳の分からないことになっている。

私にとって化粧とはもう、自分のためにするものではなく、人のためにするものであり、化粧の時間は苦痛であった。

＊

でも、違うんだ。

自分でも納得していない眉毛のことを、上から目線であぁだこうだ言われることに自尊心が削られて、こんなこともできないのか、自分なんてかわいくもないのに、さらに不細工になるだけじゃんって思ってしまう。

自分では結構努力しているのに、結果だけしか見られないんだな。

楽しくもない苦痛な時間のために、1000円以上する高額な化粧品を買うのは辛かった。

でも、メイクのキラキラしたパッケージを見ながらウィンドウショッピングするのは好きだった。買えない自分に腹を立てながら。

これを買ったら綺麗になりそう、買えない自分はただの不細工。

そう思う自分がいやなんだ。

あと、母との関係がうまくいっていないので、そんな母から言われるのが一番むかつくのだ。

化粧させてくれなかったのに、（年齢的に仕方なく）するようになったら、上から目線でのアドバイスなんて聞くわけないじゃん。と思ってしまう。

＊

でも違うんだよ。

ここまで書いてきて思った。

結局、私の努力不足なんだ。

本当はプロに頼むのが一番早いし確実。

でもお金がないからその選択肢はないと思い込んでる。

それなら、無料コンテンツで独学で学べば良い。徹底的に。

それすらしてない私が、他人からのダメだしにヘコむってコトは

努力していないのが分かってるから、それを指摘されて拗ねてるってことになる。

私だって綺麗になりたい。でも、なってはいけないと思い込んでる。

（この問題は根深いのでまた今度書くことにしよう。）

＊

そっか。そうなんだ。

眉毛に関しては努力不足なのか。

ＰＣを閉じて、眉毛と向き合ってみようかな。