追記:映画「七つの会議」をネクタイで観る

どうも、野口です。最近買ったスーツの色は「緑」です。

札幌はすっかり秋の気配というかうかうかしてたら雪が降る気がしております。皆様いかがお過ごしでしょうか。本格的な台風シーズンを前に関東圏の被害が非常に気になるところです。復旧に尽力されております皆様の安全と、そして被害に遭われた方々が少しでも早く心穏やかな生活を取り戻せますよう心より祈っております。

さて、前に書きました「七つの会議」スーツネタの続きでございます。BD&DVDも発売となりまして再びファンのツボをビシビシと刺激しておりますが、皆様いかがでしょうか(ちなみに書いてる本人はまだ円盤を見てません、この先の内容を書いたのは実は6月)

今回はピンポイントに「ネクタイ」を見ていきます。流石に情報が(面積的な意味で)少なくて厳しいですが頑張ってみたいと思います(?)

原島万二(及川光博)
・濃いネイビーとライトブルー、シルバーのレジメンタルストライプ(冒頭)
・ライトブルーベースにシルバーとネイビーの細いストライプ
・ネクタイの幅はやや細め
一言で言えば「さわやか」を地で行く原島課長のネクタイ。スーツ同様、柔らかい印象を醸し出しております。ネクタイの幅も、いわゆるナロータイというほどではないもののやや細身でしょうか。やや明るめのグレースーツと合わせて当たりの柔らかさが感じられます。

坂戸宣彦(片岡愛之助)
・赤とシルバーの太目のストライプ(前半)
・シルバーグレーと白黒のストライプ(御前会議)
・剣先はやや幅広
スーツと同様、いやそれ以上に坂戸のネクタイは原島と対照的でしょう。前半で締めている濃い赤はいわゆるパワーカラー、燃え滾る情熱を表す典型的な色のチョイスです。シルバーの太いストライプと組み合わさり、力強さが更に強調されています。ガラッと変わって御前会議の際のネクタイはストライプに変わりはありませんが、白黒とシルバーグレーというシックな、落ち着いた色になっています。不正の渦中にいる人物ゆえのチョイスかと思いますが、無理に深読みすれば「坂戸はクロでありシロ」「黒幕は別にいる」という意味合いも取れるかもしれません。

北川誠(香川照之)
・ワインレッドにベージュとシルバーのペイズリー
・ダークネイビーにライトブルーとシルバーのペイスリー
・厚手の生地感、やや幅広
スーツはしつこいくらい現在のトレンドゴリゴリのブリティッシュテイストの北川ですが、ネクタイもバリバリです。ペイズリー、ペイズリー、ペイズリーです。しっかりした厚手の生地と合わせて重厚感たっぷり、かなり押しの強い柄で、やはり仕事の充実と漲るパワーを表現しているというところでしょうか。ただまあ、スーツ含めだいぶやり過ぎな感はあります。ここまでトレンド要素モリモリですと、凡人が真似したら空中分解する気がします。キャラクターとして成立させている制作陣と香川さんがすごい。スーツに対してのネクタイの組み合わせが固定されているように見えるので、おそらくですがいわゆる「マネキン買い」に近いチョイスをしているのでしょう。トレンドを取り入れてはいますが、シャツとの合わせやシチュエーションなどで細かく使い分けをするほどのこだわりはないように思います。

梨田元就(鹿賀丈史)
・ネイビーとボルドーにシルバーの波文様
・光沢のある生地、幅は広めだが結び目は小さい
・光沢のある赤の無地(営業部長時代)
スーツと同じく、劇中通してほぼ変わらない梨田常務のネクタイです。セオリーとしてコーディネート全体で使うのは3色まで(それ以上になると色がぶつかってゴチャゴチャする)と言われますが、ネクタイだけで2色あります。しかも青と赤、寒色と暖色をぶつける主張の強さ。生地感、厚みの感じなどは非常に上質に見えますが、やはり色と柄の押しが強いです。幅広のタイを長めに結び、ノット(結び目)を小さくするのはやはり'80年代末~'90年代頭によく見られた形でしょうか。少々古く、派手な色柄の組み合わせで全く変化しないスタイルは本人の好みか、時代の変化を指摘してくれる人がいないのか。前者なら本人の感性が止まっている(前回参照)、後者なら夫婦仲が心配になります。ファッションについて相談できる一番身近な存在の影が見えません。
回想シーン・営業部長時代のネクタイは赤の無地といかにものチョイス。イケイケドンドンの時代を象徴するかのような情熱と力の色です。シンプルな成長と拡大の時代を経て、成功と充実、そして停滞を匂わせる時代へと変化しているように思えます。

村西京助(世良公則)
・モスグリーンに白のひし形アラベスク文様
・グレーがかったブラウンにスクエアドット(パワハラ委員会の場面)
・ネイビーに織柄ペイズリー(御前会議)
登場人物の中で一番ネクタイのバリエーションが多いのが村西副社長です(上記3種以外にもあります)。明るいグレーのスーツが多いため、色、柄ともに抑え目ながら流行のアースカラーやペイズリーを上品かつ自然に取り入れています。ノットを見ると左右対称でやや大きめ、ディンプル(くぼみ)の入り方からもしっかりした生地感のものをチョイスし、流行と重厚感のバランスが取れています。アイテムのチョイスについて自分で相当気を遣っているか、家族のアドバイスがあるか、どちらにせよ家族関係は良好なのではないでしょうか(個人的には年頃の娘さんがいるのではと思ってます。設定にないですが)

新田雄介(藤森慎吾)
・オレンジ地にブルー、白の花の小紋柄
・ピンクに白のドット
・水色にピンク、緑のスクエアドットの小紋柄
スーツでは紹介しませんでしたが、経理部の新田です。他のキャラクターと比較すると明らかに明るい色、そして細かい柄です。また生地は若干薄手でテロテロした光沢感(安っぽい気も)があります。若手という年齢・キャリア的な面、そしてキャラクターそのもの軽薄さをネクタイで表現しているように思います。東北行きの内示を受けるシーンではこの映画では珍しくブルーのストライプのシャツを着ています。ネイビーのスーツ、水色のタイと合わせてワントーンでまとめてはいますが劇中一の若手キャラという遊びが見えるところでしょう。

徳山郁夫(北大路欣也)
・黒にグレーの細かい格子とスクエアパターン(御前会議)
・ネイビーの無地(マスコミを背にするシーン)
・幅はやや細目、生地感はしっかりしているが光沢は抑え目
やはり謎が多い御前様こと徳山社長。スーツもそうでしたが、比較的目立つコーディネートのキャラクターが多い中で際立つ点を排除することによってかえって存在の不気味さと大きさを表しているように思います。ネイビーの無地のタイは謝罪時の定番アイテムです。アイテムそれぞれは派手ではありませんが生地の密度など見るからに上質なものばかり。シンプルなものほど質が問われるとは言ったものですが、そこをしっかり押さえているあたりにトップに君臨するものの力を感じます。

八角民夫(野村萬斎)
・光沢の少ないダークグレーにスクエアの小紋パターン
・幅は細目、厚みを抑えた生地感
やはりミステリアスな八角、スーツに合わせモノトーン&細身で統一です。よりシンプルにするならば無地ですが、ネクタイまで無地にしてしまうとかえって浮いてしまうような気がします。シンプルながら柄を入れることでメリハリとまとまりを生んでいます。「違和感」の固まりである八角に実体感を与えるカギがネクタイの柄かもしれません。

※おまけ
八角の革靴 その2
回想シーン:自殺した顧客の葬儀で八角が投げ飛ばされるシーン
靴の底が見えます。
・黒、凹凸がある
→ラバーソール(一般に革底よりランクが一段下がるとされる)
前回のnoteで「八角は良い靴を丁寧に履いている」という妄想を書きました。実はこのシーン、八角は別の靴を履いています。ここで考えられるのは2つのことです。

・まだ若い時分で高い靴を持っていない。
・葬儀に顔を出し座敷に上がることになった場合、脱いだ靴を遺族の方に見られる可能性がある→靴の中に書かれたブランド名でハイクラスな製品と見抜かれる→謝罪の場での態度としてあえて高い靴を避けた

どちらかは分かりません。ただ、八角の場合後者であっても全くおかしくないだろうなというのが前回の靴底考も含めた私の感想です。やはり恐ろしい男、八角民夫。

つらつらと垂れ流しましたが、このようなところでしょうか。細かく見ればまだまだありそうですが、流石に円盤を見ないとこれ以上は厳しいです笑

次は何の作品で書くことになるか分かりませんが、またそのうちお会いしましょう。

Ryohei Noguchi

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