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感謝を伝えます

母へ。読んでみて。損はないだろうから。

挨拶と返事をしなさい。手洗いうがいをしなさい。何度言われたんでしょうね。自分の母はこれを口癖のように言っていました。二十数年生きて、どうして母が何度も何度もこう言ってくれたのかが分かったのです。


さて。


三年ほど前の話です。祖母が急に倒れて救急車で運ばれましてね。自分はその日祖母の家に行く事になっていました。昼過ぎに到着したのですが、祖母はいませんでした。すると、ご近所のおばちゃんが慌ただしく出てきましてね。「おばあちゃん今さっき救急車で運ばれたわよ」と教えて下さいました。それから、運ばれた病院とその病院の電話番号をメモした紙をギュッと握らせてくれたんですよね。

祖母が無事に回復して、後日また祖母の家を訪ねた時、そのご近所のおばちゃんにお礼をするためにうかがいました。そのおばちゃんは「あなたと顔を合わせるといつも挨拶してくれるから、〇〇さんのお孫さんってわかったし、声もかけやすかったのよ」と。

よく遊びに行く祖母の家のご近所さん。外で世間話してたり、お花に水やりをしているおばちゃんに、こんにちはって挨拶してただけなんです。“それだけ”なのに、おばちゃんは助けてくれたんです。だから、挨拶を“それだけ”なんて言っちゃいけないんですね。おばちゃんは自分の挨拶を、“救急隊の方に病院を聞いて、メモをして、電話番号を調べること”と等価としてみてくれた訳ですから。もし挨拶をしていなかったら、自分は不安な時間を過ごすことになったでしょうね。

母の口癖のおかげです。間違いありません。

それからもう一つ。

今世界がコロナに翻弄されていますよね。コロナを身体の中に入れないために有効な手段が手洗いうがいですよ。

自分は外から帰ると、全自動で洗面所に向かい手洗いうがいをします。完全な習慣、クセです。アライグマ君なら共感してくれると思うのですが、本当に全くのオートです。しかも幼稚園の頃に教えてもらった正しい手の洗い方ですよ。

これも母の口癖のおかげなのです。

ありがとうございます、母。


今は離れて暮らしていますが、会える状況になったら直接伝えます。

母、口癖、ありがとう。

母、あなたのご飯は世界一美味しいです。

母、帰ったら、パート先の愚痴聞いてあげます。

母、旅行行きましょう。ご飯代はよろしく。



今、家にお子さんがいて大変なお母さん達、命がけで働かなくてはいけないお母さん達、ありがとうございます。きっと、大切な家族のために、買い物に行く回数を減らしたり、家での家族との時間を充実させたり、たくさんのパワーを放出しているのだと思います。

小さいお子さんは、まだ状況が分からずに、お母さんの頑張りも分からないかもしれません。でもきっと、お母さんあの時ありがとね、って。

自分は母への感謝を言葉にして伝えるのに二十年の月日を費やしてしまいました。早いのか遅いのかはわかりません。感謝の気持ちはあっても、言葉にするのは何故か小っ恥ずかしいのですよ。なのできっと、今は小さいお子さんも、反抗期のお子さんも、時間はかかるかもしれませんが、伝えてくれる日がくると思います。


母の日ということで、母への感謝を書いてみました。もちろんメッセージもちゃんと送りますよ。いまだに小っ恥ずかしいのですがね。