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【ほんだな】兼業 副業 自由業

ここ数年のこと、社員の兼業・副業を認めるかどうかという議論があちこちでなされています。いま企業にお勤めの方はご自身の職場はどうですかね。ウチの会社は数年前から条件付きで副業を認めています。

副業と兼業の明確な定義は定まっていないようですが、一般的には副業はあくまで現在の仕事(本業)のサブという位置づけ。一方、兼業は完全なるダブルワークで、現業は必ずしも本業と呼べず、双方かなり張り合っている状態、という位置づけだとか。

ウチの会社は兼業ダブルワークは認めていません。自社の仕事をおろそかにされると困るから、というのがその理由で、まあわからないでもない。

個人的には、好奇心と専門性は両立しうる、軽薄さとこだわりは両立しうると思っているので、必ずしも兼業解禁が自社の仕事をおろそかにすることに直結するとは思わないんだが、とはいえ直結する人も一定数は発生が予想されるため、あえてそんなリスクをとらない、ということなんだろうね。

ただ、ここ数年で採用市場が厳しくなるにつれて兼業解禁の機運が社内で高まりつつあり、議論の場で示し合わせたように口にのぼる「対外的なアピールにもなる」というフレーズに、ものすごくモヤモヤしたものを感じるんです。

兼業や副業に積極的な姿勢を打ち出すことで、求職者へのアピールになる。本気でそう思っているの?
いや、たしかに響く側面もあるかもしれないが、それで採用がうまくいくのだろうか。もっというと、採用後に事業がうまく回るのかな。採用はただの入口であって、何のために人を採っているのかを考えると、ね。

もともと日本は終身雇用が前提で、会社に忠誠を誓う代わりに長期の安定雇用を約束するという、持ちつ持たれつの労使関係があった。それが社会の成熟とともに蜜月関係も変わってくる。やがて終身雇用と右肩上がりの年功賃金の約束を反故することと引き換えに、縛りを緩くすることとした。兼業・副業もその流れの中で発生してきたひとつ、と理解している(それだけでないのはわかっているが、その構図が前面に押し出されていたのは事実だろう)。

しかし、社会が成熟し、勢いを失う企業が増えてくると、優秀な人にとっては企業に魅力を感じる場面がどんどん減っていく。かつては「この会社に入ればこんなことができる」だったのが、いまでは「こういうことをやりたい。そのためには、この会社ではこれができ、あっちの会社ではこれができる」という、仕事(アイディア)を中心にして、周辺に企業が衛星のように配置されている構図を見かける。優秀な人材(≒起業家候補)が中心にいて、それをサポートする有能な右腕企業が脇を固める。この流れは、今後も加速するかもしれない。

そういう状況においては、複数企業をまたにかけて(企業をうまいこと使いながら)やりたいことを実現できるという意味で、有能な求職者にとって「兼業や副業に積極的な会社」は魅力的に映る……のかもしれない。ウチの会社で「対外的なアピールになる」という発言が相次ぐ裏には、そういう意図があるのだろうと思った。そうでないとすると、ちょっとおれには理解できない。

とくに兼業は、上の例に当てはめて考えると、いってみれば複数企業によるシェアリングエコノミーだよ。優秀なリリーフエースを複数球団で共有するみたいなもんだ。

企業はそういう野心的で有能な社員を自社に招き入れ、(フルタイムよりも比較的安価な賃金で)雇用できる。兼業への積極姿勢を見せることで相手が利用価値ありとみなせば、ひきつづき自社につなぎとめる一定の効果はあるかもしれない

しかし、自社はその有能な社員を使いこなすだけの能力があるだろうか。ポイントはそこだよね。多様な活躍の場を提供するのは素晴らしいことだけど、ひるがえって自社は勤務継続するだけの魅力を持ち合わせているのか。

「よそでも働いていいぞ」と恩を売ったつもりが「いえ、他社のほうが魅力的なので来月いっぱいでこちらの会社は失礼します」と見限られてしまうリスクは、依然として付きまとう。やはり、「対外的アピール」も自社に魅力があってこそだ。小手先のテクニックで「最近の人は副業希望が多いから、我が社でも副業を解禁しないと人が採れない」のような発想だとすれば、まあまあ悲惨な結果になる。

だって、自社にあふれんばかりの魅力があって、求職者に「労力を120%ツッコむだけの価値がある」と思わせることができれば、人は採れるわけだからね。もちろんそれは理想論であって、搦手からめてでいかないと採用競争に勝てないというのは承知しています(採用部門が苦労している姿もわりと近くで見ているし)。けれど、「対外的なアピールにもなる」とアッサリ言えてしまう言葉の軽さに、危機感を感じるんです(しかもえらい立場の人が)。
ほんとにそう思ってんの? と。
思っているんなら……しかたないが🥴。


これは何かしらの文章に触れたことをきっかけに、頭に思い浮かんだことをつらつらと書き連ねたものです。
原本と文中の内容は一切関係ありません(いや、少しはあるかも)。
書評でもありません(これはホント😆)。

 


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