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読み書きのきろく

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創作(短編、長編)、ぼくのどくしょかんそうぶん
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記事一覧

【ほんだな】そして映画館を出た

5年後、3年後、いや半年先のことだって、何が起きるかを言い当てることはできない。 そんななかで企業は生き抜いていかなければならないわけだけど、自分たちの将来を考えると、同じことが個人にも当てはまると思うのね。極端な話、企業という「手段」が今後なくなるかもしれないとさえ思っている。 企業というよりも組織といったほうが適切か。組織、つまり人は群れることによって目的をより効果的に達成しようとした。その始まりが何かは知らないけれど、原始の時代であれば最初はパワーの足し算だよね。獣

【ほんだな】兼業 副業 自由業

ここ数年のこと、社員の兼業・副業を認めるかどうかという議論があちこちでなされています。いま企業にお勤めの方はご自身の職場はどうですかね。ウチの会社は数年前から条件付きで副業を認めています。 副業と兼業の明確な定義は定まっていないようですが、一般的には副業はあくまで現在の仕事(本業)のサブという位置づけ。一方、兼業は完全なるダブルワークで、現業は必ずしも本業と呼べず、双方かなり張り合っている状態、という位置づけだとか。 ウチの会社は兼業は認めていません。自社の仕事をおろそか

【ほんだな】多様性に潜むワナ

多様性は企業のため 少しまじめな話。 企業における多様性確保というのは、完全に戦略のひとつなんだが、これを情緒的にとらえる向きが少なからずある気がするんだ。それは大いなる勘違いなんだけれど、えてして気づかないのだと思う。 企業がおこなう多様性確保は最終的に企業のためにやっているのであって、従業員のためではない。もちろん、従業員のため「にも」なる面はあるが、それはあくまで副次効果というか、中間目標であって、最終ゴールではない。 たいていの企業には経営理念がある。『これ

【ほんだな】NewTypeへの道

いきなりですが、創造するには想像が必要だと思うんです。 逆に言うと、想像できないものは創造できない。 そして、想像のおよぶ範囲は(読書などの間接的なものも含めて)じぶんの過去の経験に規定されるように思う。映画を総合芸術とよぶけれど、あらゆる創作のプロセスにおいて総合芸術的な側面は見られるはずなんだ。 霊界からなにかが降りてきて自動筆記で出来上がるならともかく、たとえAIをツールに活用したとしても、思考・判断をともなう創作であれば自身の意識が介在しているはずで、そこには過

【ほんだな】次回無料の曲がり角

コンビニやスーパーで買い物すると、クーポンがもらえることあるでしょ? 「次回のお買い物にクーポン提示でこちらの商品無料」みたいなやつ。あの商法が厳しくなり始めているらしい。もっとも、この原価高騰のなかじゃ無理もないけど。 新商品の売り上げを上げるためには、まず消費者のあいだで認知度を上げる必要がある。だから、最初のうちは広告を打つとか、無料で味見してもらうとかして、とにかく費用をつぎ込んでみんなに認知してもらうことが重要なんだ。次回無料クーポンもその一形態ってわけ。 ただ

【短編伝承回顧録】傀儡師

 これは私のおばあちゃんから聞いた話なんですが。  私のおばあちゃんというのは高知県の田舎のほうに住んでいましてね、今でこそ大きなビルも建っていますが、若い時分は村人みんなが農民で、自給自足の生活を送っていたんです。その中にただひとり、伝統的な日本人形を作っている人形師さんがいました。人形制作から作品演出までひとりでこなす、かなりお歳を召したパワフルなおばあさんなんですが、この人の作る人形が少し変わっていて、とにかくリアルなんですよ。で、あちこちの関節が動くんです。  普

【ほんだな】望まない若者たち

フラティズム(Flatism)というライフスタイルが、アジア圏を中心とした一部の若い世代のあいだで浸透しつつあるらしい。 フラティズム、つまりフラット(平板)に生きるということで、あまり生活に変化を求めない。そしてこれが恋愛観、結婚願望にも影響を及ぼしている可能性があるという。 ずいぶん前に流行った「草食系」なんて言葉も想起するし、欲をかかないというか、ガツガツしないというか、現状を受け入れて積極的に満足する。ポイントは「我慢しているわけじゃない」ってところ。現状に満足す

【ほんだな】米大統領選 参謀記

タイムリーな話題だったので、記事が目に留まりました。 共和党、民主党とも相手陣営へのネガティブキャンペーンとしてフェイク動画を打ち合って、さながら「でっちあげ祭」になる予感がするぜ、というニュースです(記事は一番下にリンク張っておきます)。 記事のタイトル「どう対処すべきか」に興味を惹かれ、「そうだよ、どうすればいいんだ? 教えておしえて!」と期待しながら読んだけど、最後まで対処方法はでてこなかった……🥴。 だから、おれが教えてあげます、対処法を。 たとえば、バイデン大

【ほんだな】小飯生活

これまでずっと「朝ごはんは食べるべき」説を妄信してきたんですが、最近になって疑いはじめているんです。 以前、仕事に忙殺され昼食をまったくとれない時期が数週間続いたことがあって、その時はとにかく仕事を片付けたい一心だったから、昼飯に時間を割くなんて無駄以外の何物でもない、という心境。で、身体もその環境に慣れていって、ふしぎと空腹は感じなかった。 体調もすこぶるよく、まったく日常生活に支障をきたすことはなかった。それが数年前の出来事。 最近になって嫁がオートファジーに目覚め😵

【ほんだな】会社で寝るということ

仕事が深夜にまでおよび、仕方なく会社で寝たことはあるでしょうか。 世の中のながれが「長時間勤務は惡」に傾いている現在でも、無茶な働き方をさせる会社は一定あるんじゃないかと思います。 以前のブラックな職場は残業上等だったので、日をまたぐ前に帰れれば御の字、終電がデフォ。タクシーになることも多く、その時間も過ぎると、いよいよ「お泊り」になるわけです。 最近は防災意識の高まりで、会社の中に看護用ベッドを用意するところも出ているけれど、当時はそんな気の利いたものはありません。もち

【短編ホラー】ソフィア(4 of 4)

《 第4章 》  金曜日。夜中に目を覚ました。聞こえる。またあの唄声だ。そっとベッドを抜けだして、音を立てないようにそろりと廊下を歩く。  離れたところからでも、妹の部屋のドアが少し開いているのが見えた。電気は消えているようだが?  声はその部屋から聞こえる。  引き寄せられるように、わたしは息をひそめてゆっくりと歩いていった。まるで食虫植物へ向かって一歩ずつ歩を進めるちっぽけな虫ケラのように。  隙間から中を覗くと、やはり電気はついていない。窓から入ってくる明かりで、部

【短編ホラー】ソフィア(3 of 4)

《 第3章 》  最近、妹と意思の疎通をはかった記憶がない。 確かに同じ屋根の下で生活してはいるのだが、あの日以来、わたしたちはよそよそしい関係を続けてきた。通学途中で沈黙を保つのはもちろん、家の中でも目すら合わせない。そして、深夜に例の唄声で目を覚ます日だけが徐々に増えていった。  夜中に目が覚めると、わたしはゆっくりと上半身を起こして耳を澄ます。そして、家の中には人の気配がまったくないことに気づくのだ。いつも同じ。だぁーれもいない。わたし一人だぁーけ。そして、聞こえて

【短編ホラー】ソフィア(2 of 4)

《 第2章 》  今日はちょうどわたしたちの8回目の誕生日。双子というのは損なもので、二人分のお祝いを一度に済まされてしまう。とはいえ、へそをまげようにも誕生日ケーキの誘惑には抗いがたく、わたしたちは毎年その1週間くらい前から大きなイチゴのホールケーキを想像してはお互いにニヤニヤが止まらないのだ。  しかし、今年はささいなことから、居間で珍しく妹とケンカをしてしまった。きっかけはテレビのチャンネル争いという、ほんとにつまらないものだった。  一方的に相手をなじると、ムシ

【短編ホラー】ソフィア(1 of 4)

《 第1章 》  あの木偶が我が家にやってきたのは、夏休みも間近という頃だった。6時間目の授業が終わり、わたしは妹と一緒に通学路を家へ向かっていた。すると、とつぜん妹がランドセルをおろし、あわただしく中身をひっくり返しだした。ランドセルを持って道の端に寄り、必死に何かを探している。 「どうしたの」わたしが声をかけると、妹はノートと鉛筆を取り出して、なにやら書き始めた。  妹はわたしといっしょに生まれてきた、いわゆる1卵生双生児。しかし、いつからだったか、言葉をしゃべらな