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「煎り酒」ペアリング

本日は、兄貴分から熱烈推薦された調味料、成城石井の「煎り酒」に合わせて考えたペアリング。



そもそもこの「煎り酒」という調味料、私は存じ上げておりませんでした。室町時代の末期、醤油が一般的になる前に使われていた調味料で、日本酒に梅干しと鰹節を入れ、じっくり煮詰めたものだそうです。


梅干し…と聞いて酸味がそれほど得意ではない私、さぞや酸っぱいのではと身構えてしまったのですが、兄貴分のあまりの推奨具合に好奇心に負けて購入。
指先に垂らして舐めてみて納得。
旨味たっぷりのかつおや昆布のお出汁の味わいの後から、とっても上品な梅の香りがほんの少し立ち上ります。
というか、お醤油が使われていないことが信じられない味わいで、旨味は塩分を補うことができるのだなあとしみじみ。お素麺をこれで食べてみたい!


合わせるワインは、SAYS FARM「ソーヴィニヨン・ブラン  2020」。

このSAYS FARM、富山旅行で是非訪れたいと希望して数年前に友達と訪問したのですが、併設のレストランがまた絶品…!熾火で低温調理した豚肉のソテーなど、忘れようにも忘れられない美味…!!
ワインもすいすい進み、研究と称してグラスワインの全種類を感動しながらいただいたのは良い思い出です。ソーヴィニヨン・ブランはその時グラスでいただいた思い出のワインなのですね。



本題に戻ります。
「煎り酒」とソーヴィニヨン・ブラン。結論、素晴らしいマリアージュでした…!

煎り酒の味がよく分かるお豆腐でいただいたところ、ワインのマウスウォータリングな柑橘系の酸味が梅の風味にベストマッチ。酸味のレベルが合うのでワインの甘みも少し引き出されるような感じ。加えてソーヴィニヨン・ブランの松の葉のような青い香りや、中盤から出てくるかぼすの皮のような旨味のある苦味が、煎り酒のかつおや昆布のお出汁の旨味と抱擁し合うのです。

日本ワインは和食に合うというのは鉄板ながら、これは樽シャルドネでは実現が難しい、我ながら素敵なマリアージュだったと思います。豚肉ともやしの蒸し物には酒の代わりに白ワインを垂らして蒸し上げ、ごまだれに煎り酒を混ぜていただきました。


SAYS FARMは日本のワイナリーの中でも私のイチオシのワイナリーの筆頭。こちらのメルローのクオリティに感激し、覆面でワイン会に持参したところ、鋭い舌(味覚&舌鋒)の持ち主たちがボルドー右岸ではないかと述べたほどの味わいです。(ここでメルロー比率の高い「右岸」と断言するあたりが流石のメンバーたち。)

SAYS FARMはなんと、ワインに全く素人の富山の魚問屋さんたちが新事業として打ち立てたワイナリーで、メンバーたちが1年間(たった1年間!)、日本の様々なワイナリーに研修に赴き、経験を集めて既存のセオリーにとらわれることなく果敢にチャレンジした素晴らしく前向きなワイナリーなのです。
こちらのワイナリーに想いを馳せるたび、前例がないとかいうことを言い訳にしていては前進もあるまいよ、と畑違いでもいつも励まされています。

宿泊施設があり、富山の海と山の幸と共に楽しんでもらえるよう、宿泊者自らが魚市場で素材を仕入れてきて調理をしていただくというような、地元との交わりを重視したスタイルをとっていらっしゃいます。山羊も飼っており、いつかは果物狩りや山羊チーズ作りなど、家族みんなで一日楽しんでもらえるような場所になりたいのだと醸造家はおっしゃっていました。

また行きたいなあ。

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