戦火のウクライナにある製薬会社の拠点について、誤解を招くような投稿が共有されています。

ウクライナの首都Kyivに事務所を構える製薬会社のリストが数十件表示される動画が、ソーシャルメディア上で数万回再生されています。この投稿は、戦乱のウクライナにある米国の資金提供による研究所が生物兵器を開発しているという、ロシアの国営メディアが喧伝した証明されていない主張を連想させるものです。しかし、このビデオは誤解を招く文脈で共有されています。ビデオに映っている企業は全てKyivにオフィスを構えていますが、殆どは別の場所に本社を置き、他にもグローバルなオフィスを持っています。

➡『国際的な製薬会社の(恐らくは営業窓口しかない)事務所が首都にあるのは別に不思議なことではないでしょ?』と言いたいのだと思います。

「わぉ‼️ ウクライナは巨大製薬会社のメッカだったようだ 」と、2022年3月10日にFacebookで動画と一緒に公開されたキャプションに書かれています。

動画は、Kyivにある様々な製薬会社の上場オフィスをスライドショーで紹介したものです。

動画に重ねられた文章に「業種と立地に注目」と書かれています。

A screenshot of the misleading Facebook post as of March 18, 2022.

この投稿は、ウクライナにある米国の資金提供による研究所が生物兵器を開発しているという証明されていない主張を暗示しています。

米国の元政府高官や核不拡散専門家は、研究所は実際に生物兵器の検出と拡散防止に取り組んでおり、病気の発生を食い止めるのにも役立っていると述べています。AFPはこの主張をこちらで論破しています。

また、この動画は同様の主張とともに、Facebookではこちらこちらで、TikTokでは94,000回以上シェアされています。

しかしながら、この動画は誤解を招くような文脈で共有されています。

製薬会社リスト

Kyiv周辺にあるバイオテクノロジー及び製薬会社のリストは、求人情報サイトGlassdoorの検索から引用されたようです。

AFPの調べでは、所在地を"Kyiv"、業種フィルターを「バイオテクノロジーと製薬」に設定して検索していました。

しかし、この投稿に掲載された企業を更に検索したところ、殆どがKyiv以外に本社や事務所を構えていることが分かりました。

アメリカの多国籍企業IQVIAは、IRページで連絡先住所をコネチカット州ダンベリーと記載しています。

ドイツの製薬会社バイエルは、ドイツのレバークーゼンに本社を置き、アルバニア、モロッコ、ラトビアなど世界各地に事務所を構えています。

ウクライナ以外に本社を記載している製薬会社には、デンマークの多国籍企業ノボノルディスク(デンマーク・バグズバード)、フランスの多国籍企業サノフィ(フランス・パリ)、英国の多国籍企業グラクソ・スミスクライン(英国・ブレントフォード)、英国・スウェーデンの多国籍企業アストラゼネカ(英国・ケンブリッジ)等があります。

AFPの調べでは、動画に登場する企業のうち、ウクライナの企業は2社のみです。

ウクライナの製薬会社Arteriumは、ジェネリック医薬品と先発医薬品を製造する国内有数の企業であると述べています

Farmak JSCは、「ウクライナを代表する製薬会社の1つ」だとウェブサイトに記載しています。

以下は、誤解を招く投稿に登場する製薬会社とその上場本社のリストです。:

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