レビュー:詳細和訳:CDCのCOVID Data TrackerがCOVID-19の死亡数を下方修正したお話

【詳細和訳】

ジョンズ・ホプキンス大学によりますと、COVID-19のパンデミックは、2022年3月22日の時点で、世界中で4億人以上の確定患者と600万人の死者を出しました。死亡率は、マスク着用、物理的距離の取り方、ワクチン接種等、COVID-19に対する公共政策の指針となり、評価するための重要な指標となります[1,2]。

COVID-19の影響を評価する上で重要である為、COVID-19の死亡者数は、多くの #デマ 情報の標的となってきました。これは通常、COVID-19の死亡者数を軽視する主張の形をとり、Health Feedback では以前こちらこちらで論破しています。

2022年3月中旬、多くウェブサイト報道機関は、CDCがCOVID-19 Data Trackerを更新し、「18歳未満で記載されていた死亡のほぼ4分の1を含むCOVID-19と関連する数万件の死亡を削除した」という主張を伝えました。一例をあげますと、CDCがその修正前に、「特に18歳未満のCOVID-19がもたらす脅威を誇張し」、それによって子供へのワクチン接種の拡大を促進するために、死亡者数を膨らませていたことも示唆されました。

CDCは、電子メールによるHealth Feedbackへの声明の中で、「CDCのアルゴリズムが誤ってCOVID-19に関連しない死亡をカウントしていた為、26州にわたって報告されていた72,277(小児死亡416を含む)の死亡の削除を含む調整が3月14日にCOVID Data Trackerの死亡データに行なわれた」ことを確認しました。報道機関ロイターがCDCの同確認を報じました

2022年3月23日現在、COVID Data Trackerの現在修正された数字は、18歳未満の1,357人を含む全年齢にわたる785,661人の死亡を示しています。訂正がなければ、死亡者数は全年齢で約857,938人、18歳未満で1,773人となるところでした。つまり、この訂正によって、総死亡者数は8%、小児死亡者数は23%、それぞれ大幅に減少したことになります。従いまして、CDCがCOVID Data Trackerの死亡者数を下方修正したという主張は正確です。

CDCの代表者が小児ワクチン接種を促進するために、過大に見積もった死亡数を利用したのではないかという指摘もありました。CDC長官のRachel Walensky氏等のCDC職員は、2021年11月22日にホワイトハウスで行われた記者会見で、実際にCOVID Data Trackerの統計に言及し、ワクチン接種を奨励しました。Walensky氏はCOVID Data Trackerの情報に基づいて、「CDCのCOVID Data Trackerで本日更新・掲載したデータは、ワクチンを受けていない人は、ワクチンを受けた人よりも6倍もCOVID-19陽性になり易いことを示し続けています。そして最も悲劇的なことは、この病気によるワクチンで予防可能な死亡がまだ見られることです。」と宣言しています。

小児の死亡数が23%減少したことは重要であり、COVID-19は当初考えられていたよりも小児における死亡率が低いことを意味する可能性があることを認識する必要があります。しかし、Walensky氏がCOVID Data Trackerの死亡者数を特に小児ワクチン接種の促進に利用した例は見つかりませんでした。

更に、CDCが公衆衛生政策を集団予防接種に向かわせるために、意図的に死亡者数を膨らませたという証拠もありません。COVID Data Trackerには、CDCがHealth Feedbackへの電子メールで述べたように、「監視データからのカウントは暫定的なもので、変更される場合がある」という警告が含まれています。

「緊急時にほぼリアルタイムのデータで作業することは、意思決定の指針として重要ですが、データが最初に報告されたときには、不完全な情報を持っていることが多いことも意味します。私達の厳格な品質管理措置は、新しい情報が以前に報告されたデータの理解を変更した時に、私達を識別するのに役立ちます。」

https://healthfeedback.org/claimreview/cdcs-covid-data-tracker-deaths-downward-reliable-data-still-indicate-covid-19-major-cause-of-death/

つまり、調整は起こるべくして起こっているのです。CDCは、自分達のアルゴリズムが誤ってCOVID-19に起因しない死亡を含んでしまい、2022年3月の修正に至ったと説明しています。The Guardianのレポートでは、この誤りがどのように生じたかについて、より詳細な説明がなされています。同紙によると、誤りは、自治体がCDCに死亡を報告する際のフォームの記入方法に起因しています。

「あるデータフィールドでは、《病気/病気の合併症》 で死亡したかどうかを尋ね、その隣のフィールドでは、死亡日を尋ねる。答えが『はい』の場合、死亡日を記入しなければなりません。しかし、回答が『いいえ』または『不明』であっても、回答者がこの欄に死亡日を記入した場合、問題が生じたようです。CDCのシステムは、日付が提供された場合、『いいえ』または『不明』という回答は誤りであると見做し、回答を『はい』に切り替えていたのです。」

https://healthfeedback.org/claimreview/cdcs-covid-data-tracker-deaths-downward-reliable-data-still-indicate-covid-19-major-cause-of-death/

CDCが意図的にCOVID-19の死亡者数を膨らませたと主張する記事には、CDCの声明に反論する根拠が示されていません。

死亡者数が過大評価されていなければ、それでも小児ワクチン接種が推奨されていたかどうか疑問に思うのはもっともなことです。しかし、ワクチン接種の判断は死亡率だけに基づいているわけではありません。ワクチン接種の目的は、地域社会におけるウイルスの蔓延を抑え、致命的でない健康上の合併症のリスクを減らすことでもあるのです。CDCの疫学データでは、5歳から11歳の子供が感染し、COVID-19の患者3,200人に1人が発症するMISC(小児における多発性炎症性症候群)という重度の合併症の危険性があることが分かっています

実際、CDCが小児へのワクチン接種を推奨するようになったのは、主に、重篤だが致死的ではない状態に対する防御を提供することに心を動かされたからです。現在修正されているCOVID Data Trackerのデータでは、ワクチン接種を受けた子供達の入院のリスクが低いことが示されています。このように、一般的に子供にとって致命的でない病気であっても、子供達はワクチン接種の恩恵を受けているのです。

また、COVID Data Trackerで修正され、死亡数が少なくなったことは、COVID-19が以前考えられていたほど公衆衛生にとって重要な脅威ではないことを意味するのか、という疑問も妥当でしょう。しかし、再度言いますが、他のデータはその考えを支持していません。実際、CDCはCOVID-19による死亡を追跡し、より信頼性の高い別のデータベースを管理しています。COVID Data Trackerの死亡者数は、米国の州や管轄区域から毎日伝達される情報に基づいています。これにはスピードという利点がありますが、先に説明したようにデータの信頼性が低下します。

もう一つの死亡数は、CDCの国立保健統計センター(NCHS)が管理しており、死亡診断書をもとに毎週更新されています。処理に時間がかかりますが、より確実な死亡率の推定値が得られます。「COVID Data Tracker上の死亡データはリアルタイムであり、変更される場合があります。NCHSのNational Vital Statistics Systemは、正式な死因を決定する際に死亡診断書を確認するための強固で厳格なプロセスを持っているので、COVID-19の死亡を含む死亡データの最も完全なソースです」とCDCはHealth Feedbackへの電子メールで説明しました。

2022年3月16日現在、NCHSはCOVID-19を含む967,044人の死亡を報告しています。COVID-19は、そのうちの92%の症例で死亡の基礎原因として記載されています。Health Feedbackが以前説明しましたように、基礎となる死因とは、患者の死に至る一連の出来事の引き金となった出来事または医学的状態のことを指します。死亡診断書に死亡の根本原因としてCOVID-19が記載されている場合、それはCOVID-19による死亡とみなされ、COVID-19による死亡者数に加算されます。上記の割合から、NCHSによれば、COVID-19による死亡者数は889,680人であったと結論づけることが出来ます。

ここで留意すべきは、COVID Data TrackerがまだCOVID-19による死亡を過大評価していた2022年3月以前に、NCHSによるより信頼性の高い死亡データが既に公開されていたことです。従いまして、COVID-19の死亡率への影響を評価する際にNCHSを使用することは完全に可能でした。更に重要なことは、NCHSの死亡数は修正されたCOVID Data Trackerよりも高いCOVID死亡率を報告していることです。従いまして、2022年3月からのCOVID Data TrackerのCOVID-19死亡数の減少は、COVID-19が公衆衛生上の脅威でなくなったことを意味するものではなく、より現実を反映するNCHSのデータがそうではないことを物語っているからです。

小児の死亡数については、NCHSは847人、COVID Data Trackerは2022年3月23日現在で1,357人と報告しています。2022年3月の修正前、COVID Data Trackerは1,773人の小児死亡を報告していたはずです。従いまして、COVID Data Trackerは小児死亡率を過大評価したことになります。しかし、NCHSのカウントがすでに利用可能であったことを考えると、COVID Data Trackerの死亡数の誤差がCOVID-19ワクチン推奨に大きな影響を与えたという証拠はありません。

要約しますと、CDCが2022年3月15日の小児死亡416人を含む7万人以上の死亡を毎日のCOVID Data Trackerの死亡数から削除したことは事実です。しかし、死亡者数が意図的に膨らんでいたという指摘を裏付ける証拠はありません。COVID Data Trackerの死亡者数の下方修正は、COVID-19がもたらす公衆衛生上の脅威が低くなったことを意味するものではなく、より信頼性の高いNCHS死亡データは2022年3月以前に既に入手可能で、実際にはより多くのCOVID-19死亡者数を示しているからです。

【参考文献】



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