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月間最高売上6000万円を記録! スタッフ60人を指揮する大型店舗のキーマンが明かす、店長育成のキーワードは「組織の仕組み化」①/菅野久幸(MINX銀座店ディレクター)

 今年4月25日、「MINX流デキる店長革命」(女性モード社刊)を上梓したMINX取締役の菅野久幸氏。本書発売の1週間前に開催されたビューティービジネスの総合見本市「ビューティーワールドジャパン」において、セミナのメインコンテンツステージにも出演し、美容師のみならず、エステ・ネイルのサロン関係者などの注目を集めた。ここでは、本書の内容に基づいてセミナーをダイジェスト版として書き起こし、読者の皆さんにお届けする。

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美容室の店長って何をすればいいの?

 美容業界に限らず、たいていのショップにおいて店長という役職が存在していますが、セミナー活動で全国各地を回っていて、各地域の美容師の方にお話を聞いてみると、店長の業務とは何なのか、きちんと教わったという方はほとんどいないんですね。実際に店長の役職にある受講者の方に、「店長って何をやっているの?」と聞くと、「別にこれといったことはやっていない」と答えるんですよ。「じゃあ、なんで店長なのか」と聞いてみると、やはり説明はできなくて「役職はもらってはいるけど、深く考えてことはない」と要領を得ない回答が多いです。

 実際、そのことで悩んでいる店長は少なくなく、いざ、店長になってみたけど、オーナーにも相談しにくいという方は相当数いらっしゃると思います。そういう悩みに応えて差し上げたいという思いから、このたび『MINX流「デキる店長」革命』(女性モード社刊)というタイトルで、店長が考えるべきこと、すべき行動のヒントを、1冊の本にまとめました。

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 私が勤務するMINX銀座店は、スタッフが60人のかなり大規模な店舗で、自分は5人いる役員を統括する役割にあるのですが、本書には、普段から店長に話していること、心がけてもらっていることを全て詰め込んでいます。今日はその内容をダイジェスト的にお伝えし、新たな気付きがあれば嬉しく思います。

「デキる店長」になれない7つの理由とは?

 まず最初の入り口としては、「売れているスタイリストが必ずしもデキる店長になれるわけではない」ということです。美容室でいうと当然、売上が高く、支持されるお客さまが圧倒的に多いスタイリストが、現場の第一線において存在感を発揮します。中にはその存在感で人を引っ張れる人もいます。ただ、これまで多くの店長と接してき中で、やはりデザインや技術の追求はしていても、人を管理する勉強はしていませんので、目の前の店長を手本にしたり、コミュニケーションを取ったりする中で、経験を積みながらリーダーシップを学んでいくことになります。

 要はリーダーシップというのはスキルなんですね。中には生まれ持ってのリーダー気質という人もいますが、技術と同様、経験によって誰でも磨いていくことができるスキルですので、売上面でハイパフォーマンスを発揮できていなかった人でも、逆にデキる店長になる素質が隠れている可能性も大いにあるわけです。

 では、デキる店長になれない理由としてどういったことが考えられるのか。自分なりに7つの理由にまとめたのですが、大前提としては、冒頭にも述べました通り「店長がどういうものか分からない」ということ。売上を管理する立場であることは、なんとなく分かっているのだけれど、任命されたスタッフは、具体的に明日から何をすればいいのか、先のことが見えていないので動けないんですね。

 そして2点目。当然サロンワークにおいては、プレイヤーとしても働いていますので、店舗管理に集中できない状況になります。実際の営業と店舗リサーチの時間について、うまくバランスを取ることができないと悩む店長は多いと思います。

 よくありがちなのは、店長がいろいろな仕事を抱え込んでしまうこと。当然、自分でやった方が早いかもしれないし、間違いはないかもしれないのですが、ある程度、スタッフに任せる意識を持たなければ、自分の時間がどんどんなくなってしまいます。

 4点目は、オーナーから評価されないことでモチベーションを下げてしまうこと。店長は店の中では一番上の立場にあるので、なかなか褒められる機会がないのです。そこは自分で自分のモチベーションを上げて、働く意欲を高めていくしかありません。

 感情のコントロールが利かない人も店長としては力不足です。平常時は良いのですが、忙しい時こそ真価が問われると言いますか、そういう時に限って、スタッフが次々と問題を持ってくることが多くあります。例えば営業上でのクレームなど、いよいよ店長が出ていかなくてはならないという場面で、忙しさのあまり感情的な対応を取ってはいけません。

 6点目は、コミュニケーションスキルが低いことです。スタッフとコミュニケーションがうまく取れないと、なかなか互いの意思疎通ができずトラブルの元になります。背中を見せるというタイプの人もいるかも知れませんが、とは言っても自分の考えをきちんと伝え、スタッフが何を思っているのか、言葉にしなければ伝わらないことの方が多いと思います。世代間のギャップが大きいほど意思疎通は難しくなります。

 そして最後の1点は、スタッフの底上げができないこと。6点目のこととも結びつくのですが、スタッフの人柄や能力を理解できないと、気の利いたアドバイスもできないし、スタッフの良さを生かした売上をつくることもできません。

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店長スキルを高める7つの意識

 以上のようなことが原因で、店長職に行き詰まりを感じている方は多いと思いますが、その7つをクリアできれば、“デキる店長”への道が見えてきます。その対策として、私が大切にしている7つのことを実践することで、店長のスキルは飛躍的に高まっていくと思います。

 まずは価値判断の基準を持つこと。例えば売上で考えるなら、当然会社の掲げる目標数字もあると思いますが、自分の中でもボーダーラインを設定しておいて、ここまでは確実に守っていこうという、良し悪しの判断を独自でブレずに行うことが、店舗運営の安定化につながります。

 次に、スタッフの評価は人と成果の両方で行なうこと。スタッフを売上で評価することは一番分かりやすいのですが、人の評価もきちんとしてあげましょう。人というのは人柄ではなく、お店や他のスタッフにとって貢献してくれているかどうかの評価です。自身の売上が伸び悩んでいたとしても、しっかり周りのことを考えてくれているかどうか。そういった側面をプラスした総合的な成果でジャッジすべきと考えています。

 3つ目は「任せて任せず」です。店舗の中でいろいろな役割がある中で、店長権限から「これをやってね、お願いね」で采配することも大事ですが、注意すべきは、任せたとしても完全に任し切りらないことです。会社から、「これはどうなっているの?」と問われた時、「誰々に任せてる」では不正解。しっかりと任せていながらも、経過も管理もしつつフォローもしていくことが大切です。

 4つ目は「傾聴」する姿勢。傾聴というのは、スタッフ一人ひとりに耳を傾けるのは当然として、心にも向き合うというか、そのスタッフは何を考えてそういうことを言っているのか。ただ話を聞くのではなく、スタッフの価値観に寄り添った上で咀嚼して、それぞれに応じたフォローアップをして初めて「傾聴」と言えると思います。

 続いて5つ目は、環境を整える。スタッフは働く環境に対していろいろ求めてくることがあると思いますが、そういったインフラ面のことではありません。働きやすい方がいいに越したことはありませんが、それ以上に、スタッフが成長できる雰囲気づくり、美容師としてどのように成長し、どのように夢を実現していけるか、目標達成に向けてモチベーションを高めていくことも、一つの環境づくりと考えています。

 6つ目は「信念を貫く」ことですね。店長として掲げた目標とか、自分がとても大切にしていることをしっかり貫いてほしいと思います。実感として、今は優しい店長が多いように思います。やさしいというのは、今の若いスタッフにとって、接しやすいということになるのでしょうが、信念を持っていなければ、ただやさしいだけの店長になってしまいます。自分はこの目標を達成しようとか、オーナーから課せられた数字を達成するために、時には厳しくてもいかにスタッフを導いていくか、自分が美容師として大切にしている信念を示していれば、それに応えてスタッフもついてきます。

 最後の7つ目は、店長向けのセミナーでも必ず言っていることで、そもそも店長は何のために存在するかとう問いに対する回答です。私は簡単に言うと、店長は店舗の目標を達成するために存在する役職だと思っています。それは数字だけでなくスタッフの成長も含めた目標の達成です。それには時に、オーナー以上に力を発揮する必要があります。単店ならオーナーのリーダーシップが届きますが、2~3店舗になると、店長が目標を達成するためにスタッフとどう日々を過ごすかが大切になります。

 ですから私が日頃、店長によく言っていることは、売上目標を立てるのも大切だけど、どうやってそれを達成させるのか。具体的な計画をレポートにまとめさせ提出してもらっています。そしてスタイリスト全員に、それぞれの目標や考えを書いてもらって、自身のロッカーの内側に貼っておくなどして、意識付けをしています。

何かをやりとげるための力「GRIT」とは?

 先ほど、“リーダーシップ”も店長が備えるべき大切なスキルで、勉強や経験によって高めていくことも可能だと言いました。それはスタッフ全員をゴールに導いてゆく牽引力ですが、もう一つ大切な力として、自身を鼓舞する力が必要です。アメリカの心理学者が唱えたキーワードで、結果を出す人に備わった4つのマインドの頭文字を組み合わせた「GRIT(グリット)」という言葉があります。

GUTS(ガッツ);困難に立ち向かう度胸
RESILIENCE(レジリエンス):さまざまな状況に対応する順応力
INITIATIVE(イニシアチブ):自分で目標を見据え行動する自発性
TENACITY(テナシティ):最後までやり遂げる執念

 私はこれを「やり抜く力」と定義しています。自分がMINXに入社して、高橋マサトモオーナーをはじめいろいろな先輩から、「“夢をかなえる方法”は一つだけある」と教えられてきました。それは「諦めずに最後までやり遂げること」だと。そういう意識を一人ひとりが持つことで、お店は確実に反映していくと、私は考えています。(その➁に続く)

PROFILE 菅野久幸(かんの・ひさゆき)/1978年生まれ、山形県出身。現在、東京都内に5店舗を展開するMINXグループの取締役。2013年にオープンした銀座店の責任者を務め、2年で160坪、セット面37面、スタッフ数60人に拡大。美容室のミシュランガイド「KAMI CHARISMA」銀座店として「トリートメントスパ部門」2年連続受賞。MINX全体で7部門最多受賞。コロナ禍の中、2020年12月店舗売上6060万円。この功績は業界でも話題になり、多分野で講師として活躍。中国では「菅野経営学院」を開講。2019年には年間3500人が受講している。

MINX流デキる店長革命_350

MINX流「デキる店長」革命
菅野久幸[MINX]/著

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