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月間最高売上6000万円を記録! スタッフ60人を指揮する大型店舗のキーマンが明かす、店長育成のキーワードは「組織の仕組み化」➁/菅野久幸(MINX銀座店ディレクター)

 「MINX流デキる店長革命」(女性モード社刊)の著者である菅野久幸氏が、先般開催された「ビューティーワールドジャパン」で出演したセミナーの内容を特別編集。前半は店長の心構え、持つべきスキルについて持論を展開した。後半においては、サロンワークにおける店長の役割について言及する。

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店長はマーケターであれ!

 これまでは店長としての心構え、考え方を中心にお話してきましたが、実務的な面にも触れていきたいと思います。特にマーケティングは大事なのですが、あまり専門的になりすぎると、負担が大きくなってしまいますので、MINXでは、店長、スタッフに対して要点を抑えた形で実践するよう促しています。

 美容室・美容師という目線で考えますと、サロンブランディング、またはセルフブランディングというところが注力されていますね。サロンブランディングはサロンを展開にするに当たって欠かすことのできない当たり前のことになっていて、ここ10年くらいでセルフブランディングの必要性が問われるようになってきました。そのブランディングというのは、マーケティングに含まれる一要素であり、マーケティングをしっかりやっていこうと突き詰めていくと、必ずブランディングに行き着くという関係性です。

 皆さんが日頃、サロンで行っているブランディング、例えば、どういうメニューをつくるのか、お客さまに何を提供するのか、スタッフ1人ひとりがどうやって技術を磨いて、何を武器にしてがんばるか、というのがリアルマーケティングです。

 今の時代、もう一つ考えなくてはいけないのはデジタルマーケティングです。いわゆるウエブやSNSを活用した、何らかの発信やコミュニケーションによってブランド価値を高める手段で、セルフブランディングにおいてかなりの有効性を発揮します。このリアルとデジタルで大きく分けたマーケティングをしっかりやっていかないと、売上がなかなかついていきません。

 ではマーケティングとは何か、ということを考えると、私は「恋愛」に例えて考えると分かりやすいと思っています。美容師は目の前のお客さま、女性を喜ばせるために、会うたびに何かを与え続けていかないと、また来てくれないとか、そういった心理的な戦略につきましては、本の中で簡単なステップ方式で紹介させていただいています。

 その前の基本として、マーケティングを行う人、ビジネス用語では「マーケター」と呼ばれていますが、私は店長に、そのマーケターの資質を持ってほしいと考えています。なぜかというと、競合他店もたくさんいるという中で、マーケター的な思考をを持たないと、この情報社会を勝ち残っていけないからです。「SNSを毎日あげています」と言っても、「お客さまが1人も来ません」「その理由はよく分かりません」では無駄なんです。

さまざまな要素からサロンブランディングを構築

 美容室におけるマーケティングでは、マーケティングミックスという考え方がフィットすると思います。言葉通り、いろいろなマーケティング要素を組み合わせて、サロンブランディングを掛けていくというもので、売りとなるメニューや商品、適性単価を決定する際の指針となります。

 process(具体策)、physical environment(店の雰囲気、仕組みづくり)、price(価格)、promotion(打ち出し)、place(ポジショニング)、people(人=スタッフ)、それらをトータルでコントロールしてサロンのブランド価値を構築していくわけです。それをさらに各スタッフに落とし込んでいったものが、セルフブランディングという位置づけになります。

 例えば、髪質改善のメニューを打ち出していこうという時、サロンの立地エリアにおいて、または通常メニューとの比較で、提示したい価格は高いのか、安いのか。SNSにおいては何をどのように発信していくのか。どのようなプロセスでメニューの説明を行っていくのか。そして、メニューを提案するに当たってどのような環境にあるのか。そういうことを1つずつ考えていくのが「マーケティングミックス」で、このスタイリストを売り出したい、このメニューを打ち出したいというときに実践すると、いろいろな要素の相乗効果で成功率が高まります。

 失敗する事例も多くありますが、最もいけないのは一貫性がないことです。考えがスタッフ全員に伝わっていなくて、髪質改善をイチ押ししているのにもかかかわらず、アシスタントがそのことについて説明ができなかったり、一部のスタッフが忙しさを理由にメニューの提案を面倒に感じた態度を見せたりすると、せっかく引き寄せたお客さまの心が、サロンから離れていってしまいます。

 シンプルにいうと、サロンの強みや特色を明確にして、あらゆる視点から可能性を見出して、ブランド価値につなげていくのが「マーケティングミックス」を行う大きな意味と言えます。ただ、必ず成功するという保証はありませんので、PDCA(計画→実行→評価→改善)のサイクルをしっかり回して形にしていくことが大切です。

 マーケティングの基本的なお話をしましたが、今の時代はビジネスモデルの賞味期限は10年、もっと早いと5年とも言われていて、同じメニュー、アプローチを続けていては、そのうちお客さまに飽きられてしまうということも、肝に命じてください。それくらい時代の変化スピードが上がっていて、コロナ禍においてもかなり状況が変わったと言えるでしょう。

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WEBマーケティングを制する者が集客を制する

 サロンブランディングにおいて、デジタルマーケティングも欠かせないと申しました。世の中にはさまざまな検索サイトがあって、皆さんも自サロンを検索してみたことがあると思います。国内のみならず、世界的に最も使われている検索エンジンは間違いなくGoogleで、MINXにおいてもそのリサーチに関する研究を強化しています。

 検索サイトにおいてはSEO(Search Engine Optimization)という検索エンジン最適化の仕組みによって、ワードにヒットしたサイトのページが表示されますが、最近では最上位にリスティング広告が来て、店舗検索の場合ですと次に来るのがMEO(Map Engine Optimization)、地図上にブックマークされた状態のポータルサイトページがありますよね。要はお客さまが美容室を探すとき、いかにMEOの上位に表示されるかで集客効果は大きく左右されます。

 では、そのために何をすれば良いのか。Googleで言えば「マイビジネス」というサービスの中に、webマーケティングに活用できる無料のツールがあります。その中では検索ユーザーが、どんなキーワードで自社サイトにたどり着いたか、インサイト(円グラフ)で確認することができます。それがエリアなのか、メニューなのか、または「MINX」と直接打ち込まれているかどうかで知名度を計ったり、間接的にたどり着いたのであれば、これから顧客になる可能性のある人がどれだけいるのかを推測したり、その情報だけでも集客のヒントが豊富に含まれています。それをやっていないのであれば、すぐにでも着手することをお勧めします。

誤ってはいけないクレーム対応の手順

 これまで述べた通り、集客・売上の管理をしながら、目標達成のためにスタッフを導くことと同時に、店内で起こるさまざまな課題の解決、トラブルの収束に努めるのも、店長にとって大変ではありますが、大事な業務の一つです。中でもクレーム対応は、ちょっとした見解のズレで大きなトラブルに発展するおそれがありますので、冷静な判断と的確な対処が求められます。

 クレームが起こった場合、店長が基本的にするべきことは、まずクレームの全貌を把握すること。スタッフからの報告を鵜呑みにして対応してはいけません。それはクレーム対応が長引く原因になり営業への支障をきたします。そこで店長は、スタッフからの報告をしっかり聞いた上で状況を把握し、お客さまとも向き合って言い分を聞くことをしなくてはいけません。

 状況把握ができたことで、お客さまにクレームを入れさせてしまったことに対して、謝罪の意を表しましょう。「本当はクレームなどしたくはないのでしょうが、申し訳ありません」という気持ちを態度で示すことで、お客さまにも冷静になっていただけるかもしれません。

 互いの話を整理できたたら、その落としどころを探ります。お客さまは何を求めているのか。返金すればいい、というのは最も簡単で分かりやすい決着ではあるのですが、私はそれは最終手段で、話がこじれてしまった最悪の結末と考えます。クレームを入れるお客さまの多くは、お金を返してもらいたいわけでなく、納得いかない気持ちの落としどころを求めているのだと思います。私たち美容師がプロとして提案したことに対するクレームには、最後までプロとして責任を持つことが当然だと思います。

 そして事後においては、スタッフのフォローも忘れてはいけません。クレーム対応の処理は気分が下がっても仕方がないのですが、それをどう学びにつなげて、その後の営業にフィードバックしていけるか、店全体の課題としてスタッフと共有していく働きかけも、店長の大切な役割です。

SDGsはサロンブロンドを高める新要素

 最後に、MINXのサステイナブルの活動について紹介したいと思います。本日の講演のテーマ「令和時代のサロンマネジメント」という意味からも、SDGsへの取り組みというのは、私たちの仕事にとって有意義なものであると考えています。

 例えば、SDGsの基本として“世界が続くための17の目標”が色分けで提示されていますよね。すでに日本の事業者の7割が、そのいずれかに取り組んでいるんです。そうすると今、皆さんのサロンを利用されているお客さまの7割くらいは、その企業に勤めていたり、家族を通してそういった話をしていたり、何らかの形で意識していることが想像できます。

 さらに身近などころでは、ファッションブランドや生活雑貨のショップでも、SDGsに関連した商品、またはサービスが導入されていて、世界中で環境保全の運動が広がっているという話題を耳にする機会も増えているように、そういったものを皆で取り組もうというのが、未来の子どもたちのために課せられた私たち大人の宿題なんですね。

 まずは世界のルールが変わったということを理解しましょう。そしてできることからで構わないので、継続して積み重ねていくことが大事。美容室だと、ラップや手袋の素材をどうするか、シャンプーや薬剤のボトルはどうするか、改善すべき点はたくさんあります。SDGsに取り組んでいることでコミュニティーが生まれて、それがブランドイメージにも反映されていくわけです。

 ダーウィンの有名な言葉に「最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き延びるのでもない。唯一、生き残るのは変化できる者である」とあります。今は正にそういうことが求められています。その変化を考えるきっかけになればと思います。
 ご清聴ありがとうございました。

PROFILE 菅野久幸(かんの・ひさゆき)/1978年生まれ、山形県出身。現在、東京都内に5店舗を展開するMINXグループの取締役。2013年にオープンした銀座店の責任者を務め、2年で160坪、セット面37面、スタッフ数60人に拡大。美容室のミシュランガイド「KAMI CHARISMA」銀座店として「トリートメントスパ部門」2年連続受賞。MINX全体で7部門最多受賞。コロナ禍の中、2020年12月店舗売上6060万円。この功績は業界でも話題になり、多分野で講師として活躍。中国では「菅野経営学院」を開講。2019年には年間3500人が受講している。

MINX流デキる店長革命_350

MINX流「デキる店長」革命
菅野久幸[MINX]/著

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