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ロシアの軍事侵攻に思うこと

今やコロナ禍のニュースはそっちのけで、ロシアのウクライナへの軍事侵攻がメディアの報道を独占していると思います。

ドイツもそんな感じで、連日ウクライナのニュースが流れていて、あまり普段ニュースを見ていない僕もずっとニュース速報を追っている感じです。

このニュースが、中東やその他の地域での紛争と比べて、「自分事」のように感じるのは、ドイツにとって隣の隣の国で起きていることだということ、そして制裁の影響が自分たちの生活にも直結しかねない、ということが原因なのだと思います。

自分で恥ずかしい限りだと思うのですが、紛争というものを身近なものとして受け止めたのは、今回の件がようやく始めてのように思います。

ウクライナには昔出会ったことのある同い年の外交官がいて、彼女が今一体どうしているのか、彼女の旦那さんや家族は一体どうなってしまったのか、というのを考えたりします。

彼女と仕事で知り合ったのはちょうどクリミア併合が起きた時で、「もうクリミアは二度とウクライナに戻ってこない」と話した彼女のとても悲しそうな顔が脳裏に焼き付いています。

ドイツはロシアと繋がりの深い国なので、ロシア人、ウクライナ人、ロシア系ドイツ人が国には多く住んでいるため、より一層ウクライナ危機を身近に感じるのかもしれません。

昨日も、知人と素敵なレストランで美味しいご飯を食べながら、当たり前のような日常を過ごしていたのですが、どこか心にやましさを感じていました。

キエフとベルリンは、東京から鹿児島まで自動車で行くのと大体同じくらいの距離離れているのですが、そう遠くもない場所で、この一分一秒に生死がかかっている人がいると思うと、自分がこんな風にのんびり生活して良いのだろうか?と思えてくるのです。

でもそれって、実はずっと前から、世界のあらゆる場所で紛争は起きているわけですから、今さら何を、ということでもあるんですよね。

地続きの、それもそう遠くはない場所での戦火、という理由で、今までとは違うくらい、自分事のように考えているのかもしれません。

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ドイツ政府の対応は、ロシアの軍事侵攻前から既に軟弱だと批判されていました。ドイツの天然ガス輸入の約3分の1【訂正➡「55%」が正しいです】がロシアからのもので、ロシアのSWIFT除外という厳しい制裁措置を課すと、却ってドイツの経済や国民生活が大打撃を受けてしまいます。

ドイツは今年、脱原発を達成する予定ですし、脱石炭火力を遅くとも2038年までに実現するため、旧来のエネルギー源からの移行を始めています。一方で、電気自動車への移行も進めているので、電力需要は今後更に増えていきます。

かと言って過渡期のエネルギーの安定供給を維持する必要があり、再エネだけでは安定供給が担保できないので……やはり中長期的には化石燃料は必要で、それも安価なロシアの天然ガスに依存してしまう。

ドイツは、安価とはいえ天然ガスをロシアから輸入するという地政学リスクを、ちゃんと計算していたのだろうか??と思ってしまいます。

ドイツの経済と国民生活が大打撃をこうむる可能性があるからSWIFT除外措置には同意できない、という、ドイツの主張は理解できます。

実際、まだドイツは寒いですから、産業だけでなく家庭でのガス需要も多いはずで、国民生活が悪化すれば世論が硬化する可能性もあります。

制裁も一度課してしまうと、ロシア側が態度を変えない限り撤廃できないのですから、慎重になるのは分かります。

ただ、欧州がまさに今こそ結束を示さないといけないとき、あまりに自国角都合を真正直に、オープンに言ってしまうのは、戦略としてどうなんだろう……と思います。

それも「(SWIFT除外措置に)反対したのは自分たちだけではない。フランス等も反対していた」という発言も、すごく後ろ向きで、早い話が言い訳がましく聞こえるのです。仮に何もできないとしても、もう少し「結束感」、せめて「頑張っている感」だけでも示せないのかな、と感じます。正直すぎるのは、ある時にはドイツの良いところでもあるのですが……。

そして、結局いくら制裁を課したとしても、ロシアのエネルギー産業は欧州からのお金で潤うわけですから、果たして今の制裁にどれほど意味があるのか……。

このままでは、プーチン大統領率いるロシア側に足元を見られているだけですし、「自分勝手」と言われても仕方ありません。ここまでドイツって欧州の中で存在感(やリーダーシップ)が落ちたのかな、、、と、驚くほどです。

現に、ドイツは事実上ウクライナを見捨てたと批判が出ていますし、この危機がどのような顛末を迎えようとも、ドイツ政府の一連の対応は、後年に至るまでドイツの外交に禍根を残してしまうのではないか、、、とも思います。

早く軍事侵攻に終止符が打たれることを願っています。


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