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英語の「仮定法」について、更にややこしく考えてみました

こんにちは!
今回は、色々とヨーロッパの言語をかじってきた僕が、
改めて英語の「仮定法」について考えてみようと思います。

「仮定法」と日本で呼ばれているこの形ですが、
英語では「subjunctive mood」と呼ばれています。

フランス語をはじめロマンス諸語を学ばれた方は「subjunctive」と聴いてピンと来るかもしれませんが、

「接続法」と他言語では呼ばれているものです。

なぜ「仮定法」と日本の英文法では言うんでしょうかね…。

接続法とは、ざっくり言えば接続詞(if や that など)の後ろに来る動詞に使われる形のこと(もちろん、例外もあります)。

取りあえずここから先は英語についても「接続法」と呼ぶことにします。

ちなみに、「仮定法」もとい「接続法」という、「法」の入った見慣れない用語が突然出てきますが、
実は英語を勉強し始めた時から習っていた別の「法」があります。
それを文法用語で「直説法」(indicative)と呼びます。
「直法」と言えばピンと来るのに、「直法」なんですよね。

欧州言語を学ぶと物語の終盤の「伏線回収」のように「実はあなたたちがこれまで習っていたものは、直説法だったのです」と事実が明かされるのですが、
なぜか英文法ではあまり耳にしたことがない気がします。
閑話休題。

ロマンス諸語で「接続法」と言うと、用法と活用形、覚えることが多くてとても面倒臭いイメージの文法項目なのですが、

英語の場合は、少なくとも活用形についてはとても簡単
今まで習った形がそのまま使えるためです。

そして、人称によって形が変化しないので、そもそも「活用形」という言葉が当てはまるか謎ですが…。

英語の「接続法」の形の単純さは、例えばスペイン語、フランス語、英語と並べて見ると一目瞭然です。

接続法現在の比較

スペイン語、フランス語は人称・数に応じて変化していますが、英語だけはどの人称・数でも変化がありません。

しかも「be動詞」の場合は、

be動詞の接続法現在の「活用」

と、人称・数を問わず全部「be」になります。
こんな表は普段なかなかお目にかかりませんよね。

さて、ここまで扱ってきたものは「接続法現在」と呼ばれる形です。

「現在」と書いているのは、形が普段使う(でた、直説法)の現在形と似ているからです。
(明らかに形の違う「be動詞」は例外ですが…)。

特に「現在」という時間(時制)と関係があるわけではありません

英語の接続法には、
「現在」「過去」「過去完了」
がありますが、
これも全て、時間と関係があるのではなく
形が直説法のそれと似ているからこう呼んでいるだけです。

例えば、
I insisted that he come with us. 

と言う時、過去の話をしているのに、「come」は「接続法現在」になっていますね。

一方で、

If I had money, I would travel to Spain. 

と言う時は、今の話(というより、仮定の話)をしているのに、「have」は「接続法過去」になっています。

ちなみに、この「would travel」の部分の時制は、学校英語では「would+原形」とだけで説明される、個人的に「謎の形」だったですが、
フランス語やイタリア語をされた方ならピンと来る通り、
これは「条件法」と呼ばれる「法」の形です。
つまり、英語の「反実仮想」の文も、仏伊語と同じく、

if 接続法過去 ,  条件法現在…. 

という形で作っているわけです。

スペイン語文法では「過去未来形」と呼ばれているものですね。そう言えば英文法でも「過去未来」という言葉を使いますよね。
閑話休題。

「過去」と「過去完了」は、現実にはならない願いや仮定、いわゆる「反実仮想」として学校英語でも習う、「接続法」の中の定番どころですね。

「現在」は学校英語でも学びますが、「過去」や「過去完了」ほどのインパクトはない気がします。

でも個人的に「接続法」の面白みは「現在」にあると思います。

英語はそもそも活用が少ない言語ですが、
その中でも「3単現のs」はとても意識されており、
これに逆らう「接続法現在」は異質な雰囲気を放っているからです。

「過去」や「過去完了」になると、僕は直説法と接続法の違いが分からなくなり、使い分けがあやふやになるのですが、

その点、「現在」は直説法との違いがはっきりと出るので、面白いです。

3つ例を挙げてみようと思います。
(Wikipediaのページを参照し、一部変更しました)

①We demand that he leave us alone.
(私たちを放っておいてくれるよう私たちは彼に要求する。)
②It is important that this task be done tomorrow. 
(この仕事が明日終わっていることが重要です。)
③It's preferable that you not publish the story.
(あなたがその話を公表しないことが望ましい。)

English subjunctive - Wikipedia

……どうでしょうか?

①は、「『s』忘れていますよ」という指摘が入りそう。
(主にイギリスでは「should leave」となりますが、ここでは「should」を使う例は省いています)

しかし、②に至っては明らかな確信犯。3単現のsをうっかり忘れることはあっても、「be動詞」を「be」とするのは明らかに意図的です。

そして、③の例では、英語の動詞も「do/does」がなくても否定文が作れるんだ(確かにbe動詞とかそうですよね)という事実に気づかされます。

この「現在」は、主文(thatの前の文)に願望や期待、評価、主張などを表す動詞や表現が使われている時、従属文(thatの後の文)に現れてきます。

この用法も、ロマンス諸語を学ばれた方であればピーンと来ると思います。
スペイン語等の「接続法現在」の使い方とそっくりですよね。

このように、英語では「接続法」専用の形というのがないので、
そもそも「法」と言われてもあまりピンと来ない方も少なくないのではと思います。

活用が単純である分、意識する必要があまりないからでしょうか。

そして、英語の「接続法現在」は、言い回しが古くなってしまって、直説法で言い換えられてしまうものもあるので、他言語の「接続法現在」に比べて成句を除きそれほど目にしないのもあると思います。

他のヨーロッパ言語を学んでから英語に立ち帰ったときに、気付きの多い形ではないかと思います。

ここまでお読みくださいましてありがとうございました!

【画像】beasternchenさま(Pixabay) 

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