見出し画像

#宮廷画家の歴史 ベラスケスとヤン・ファン・エイクについて知る

1. 初めに

先日、「名画で読み解く ハプスブルク家12の物語 」を読みました。著者は中野京子さんです。この本はタイトルの通り、ハプスブルク家の繁栄から滅亡までを名画に合わせて読み解いていきます。

この本が面白いのはさることながら、私は歴史における宮廷画家の存在の重要性を感じ、興味を惹かれました。本書中ではハプスブルク家の人々が、芸術に対する興味と慧眼を持ち合わせていたことで優秀な宮廷画家を雇っていたこと、さらに彼らによってハプスブルク家にまつわる絵画が多数残されていたことが記されています。


中でも私が最も気を惹かれた絵画はこちらです。

画像1

ベラスケス『黒衣のフェリペ4世』

この絵からわかるように、フェリペ4世は「長い鼻・突き出た下唇と顎」というハプスブルク家の特徴を大きく受け継いでいます(美男ではない)。
にもかかわらず、この絵画からは、王としての気品と威厳が感じられる。これはベラスケスの巧みな技術によってなし得たものだと本書で紹介されていました。

このように、宮廷画家の作品は歴史を知る手がかりとなるだけでなく、優れた作品が多く存在しているに違いないと感じました。ということで、宮廷画家の作品に関して追っていこうと思います。

2. ディエゴ・ベラスケス『ラス・メニーナス』

画像2

ディエゴ・ベラスケス『ラス・メニーナス』

この絵画はベラスケスにとって最高傑作であり、後の印象派画家たちにも大きな影響を与えた絵画です。左端の男性がベラスケス本人であり、中央の少女が5歳のマルガリータ王女です。この絵の登場人物は、一見9人に見えます。しかし、よく見ると中央の鏡に2人の人物が写っています。彼らは、マルガリータの両親であるフェリペ4世と、王妃マリアナなのです。この絵の優れた特徴として、実はこの絵画において、鑑賞者たる私たちと同じ目線に立っているのは私たちだけではないこと。つまりマルガリータ王女の両親もこのシーンを私たちと同じ目線で見ているのです。

実はこの技法を用いた画家が15世紀に存在しています。ベラスケスは、彼に大きな大きな影響を受けたと言われています。その人物とはベラスケスと同じ宮廷画家であり、「15世紀の北ヨーロッパでもっとも重要な画家の一人」と称されている、ヤン・ファン・エイクです。

3. ヤン・ファン・エイクの生い立ち

生誕~死没: 1395年頃~1441年7月9日 
生誕地: (リエージュの教会教区マースエイクという説がある)
国籍: フランドル
運動・動向: 初期フランドル派
・1422年~1424年:  バイエルン公ヨハン3世に仕える宮廷画家として活動
・1425年~: ブルゴーニュ公フィリップ3世の元で活動
作風:
宮廷画家としてだけではなく、市井からの個人的な絵画制作依頼も受けていた。中でも『ヘントの祭壇画』は「北ヨーロッパ写実主義の最終到達点」とまで言われる作品。ファン・エイクをはじめとした初期フランドル派の画家たちは、ギリシア・ローマ時代の理想化の再現ではなく、自然そのものを正確に観察して絵画に表現することを追求した。
(wikipediaより)

4. ヤン・ファン・エイク『アルノルフィーニ夫婦像』

画像3

ヤン・ファン・エイク『アルノルフィーニ夫婦像』

ヤン・ファン・エイクの代表作として『アルノルフィーニ夫婦像』があります。この絵画こそ、ベラスケスの『ラス・メニーナス』の技法のもとになった絵画です。
この絵画は、ベルギー北西部ブリュージュに住むイタリア商人ジョヴァンニ・アルノルフィーニと妻との結婚記念図です。この絵では、アルノルフィーニ夫妻が全面に描かれています。また、男性が黒で統一された服装であるのに対し、女性は華やかな緑、また横には赤いベッドも描かれており、この色の対比からもやはり夫婦に注目してしまいます。


ただ、ここで注目すべきなのは中央の鏡です。

スクリーンショット 2021-07-26 23.39.15

この鏡を拡大してみると、『ラス・メニーナス』と同様に新たに二人の登場人物が浮かび上がってくるのです。(彼らは、ヤン・ファン・エイク自身と結婚立会人だと言われています。)
つまり、鏡を使って、本来描くことのできない空間を描く・絵の中の空間を拡張させるということをエイクは行ったのです。

スクリーンショット 2021-07-26 23.33.11

実は15世紀にこの凸面鏡が、フランスで高級なインテリアとして人気を博していました。エイクはこの凸面鏡を巧みに扱って、最高の一枚を書き上げたのです。

5. 最後に

今回は、ベラスケスの『ラス・メニーナス』とエイクの『アルノルフィーニ夫婦像』に関して紹介しました。今後も興味を持った絵画があったら紹介していこうと思います。

6. 参考文献



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?