呼吸法によって脳波にα波が現れる

ただひたすら腹筋のリズム運動を20~30分間継続すると、頭がすっきりした感じになります。
この20~30分という時間は、お線香がちょうど一本燃え尽きる時間に相当します。
まず、頭がすっきりした感覚を科学的に検証するために、脳波の測定結果をお見せしましょう。

これまで100例以上のデータが集まっていますが、非常に再現性のよい結果が得られています。
呼吸法をスタートして数分経過するまでは、脳波にはっきりとした変化は出ていません。
その程度では、けっして脳波に変化は起きないのです。
この点で、ちょっと憤慨した経験があります。
あるときたまたま見ていたテレビで、「腹式呼吸」を話題にしていて、解説者が出演者に数回だけ腹式呼吸をさせ、「どうです、すっきりしたでしょう、リラックスしたでしょう」と感想を求める場面がありました。
残念ながら、専門家のデータでは、最低でも3~4分間の呼吸法を継続したあとでないと、脳波に変化は出てきません。
そして、5分間程度ひたすら呼吸法を続けていれば、ほとんどの人の脳波にα波が出てきます。
脳波に馴染みのない方のために分かりやすく説明してみましょう。
起きているときに見られる脳波というのは、低い振幅の細かい波で、β(ベータ)波と呼ばれます。
呼吸法10分経過の脳波を見てもらうと分かりますが、β波の中に比較的振幅が大きくて、はっきりとリズムの分かる波が、ところどころ現れるようになります。
これがα波です。
呼吸法を続けていきますと、α波が頻回に出るようになり、また、持続時間も延びていきます。
α波という言葉を聞いたことがある人は多いと思います。
α波の出る音楽とか、リラックスするとα波が出る、などと使われます。
このα波というのは、脳波をコンピュータで解析すると、はっきりします。
その定義は、リズムの周波数が一秒間に8~13回(8~13ヘルツと表現)の脳波のことです。
それよりも速い周波数の脳波をβ波といいます。
一般に、速い周波数の脳波は大脳皮質の活動が活発なことを表します。
したがって、起きて活動しているときにはβ波が認められます。
リラックスすると、少し遅い周波数のα波がβ波のあいだに混ざってきます。
ちなみに、寝ているときには、もっと周波数の遅いθ(シータ)派(一秒に3~7回の周期)、あるいはδ(デルタ)派(一秒に三回以下の周期)が中心に
なります。
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さて、呼吸法の時間経過に沿って、脳波のコンピュータ解析を一分ごとに実施してみますと、非常にはっきりした傾向が認められるようになります。
約5分後からα波の山がはっきりとしてきて、しだいにピークが高くなり、10分から15分ごろに最大になります。
20分経過するころから、α波の山は上がったり下がったりと、不安定になってきます。
このころになると、被験者は、もう十分だという一種の飽和感を意識するようになり、しだいに腹筋リズム運動に対する疲れも出てきます。
この傾向は誰にでも多かれ少なかれ現れます。
普段から呼吸法をやっている人は30分ぐらいまで平気ですが、まったく経験のない人では20分程度で限界に達します。
坐禅の修行としての呼吸法はお線香一本分ですが、それがちょうど20~30分になります。
経験的に決まってきた呼吸法の時間は、われわれの脳波の解析データからも、理に適っていると言えます。

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