ドパミン神経の強さと有名人
性欲や食欲は、なくてはならない本能です。
性や食は生存に不可欠ですから、それを演出するドパミン神経は、人の心を形成する上で重要です。
前に、ノルアドレナリン神経のことを取りあげたときに、痛みを感じなくなれば、われわれは今日まで生き延びてこられなかったという説明をしました。
同じことが、ドパミン神経にも当てはまります。
ドパミン神経が非常に強い人物として、故ケネディ大統領をあげる記事を読んだことがあります。
意欲的に生きるという点では非常にタフな人物であり、好奇心が強く、新しいことに対するチャレンジ精神の旺盛な人であったと言われます。
マリリン・モンローとの噂も有名です。
一方、ドパミン神経が強いことによって生じる欠点は、切り替えが速いというか、すぐに飽きてしまうことのようです。
呼吸法の創始者である釈迦の本に、面白いエピソードを見つけました。
釈迦は呼吸法に到達する前に6年の歳月をかけて、荒行をしました。
荒行の神経科学的な解釈として釈迦がノルアドレナリン神経を自らの心と身体で検証をしたであろう、と想像しています。
荒行のあと、釈迦は修行の森を出て、菩提樹の下で、七日間、呼吸法を行います。
呼吸法はもちろんセロトニン神経の活性化につながるものです。
この七日間に釈迦は欲望との戦いをすることになります。
ドパミン神経とセロトニン神経の戦い、と考えてもいいでしょう。
面白いエピソードとは、呼吸法を実践している釈迦に、魔王が邪魔に入る際のものです。
この時、魔王は三人の妖艶な娘を派遣して、釈迦を誘惑するのです。
あの手この手で誘いをかけてくるのですが、釈迦はまったくそれに乗らず、魔王はついにあきらめて退散することになります。
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この仏法的エピソードについて、神経科学的には次のように説明できます。
誘惑はドパミン神経の刺激で、快の情動回路を刺激します。
普通の人なら、本能に従う場合が多いはずです。
ところが、釈迦は呼吸法を実践していますから、セロトニン神経が鍛えられ、活性化していると考えられます。
したがって、欲望によって興奮するドパミン神経に対して、無理なく抑制できる状態にある、ということになります。
結果だけを見れば、高い倫理感に律せられたことになるのかもしれませんが、セロトニン神経が活性化されていたため、きわめて自然に欲望を抑えられ、妖艶な娘たちの誘惑を退けられたのではないかとも想像されます。
つまり人付き合いの境地に達したのです。
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