ゲーム漬けの生活

ゲーム漬けの生活がセロトニン神経を弱らせるのには、二つの側面が考えられます。
一つは、ゲーム脳として最近、注目を集めている「大脳皮質の前頭前野の機能低下」との関連です。
ゲーム脳の命名者である森昭雄先生によると、一日数時間、週に四日以上のゲーム漬け生活を何年も送った子どもに、脳波検査で前頭前野の機能低下が明らかにされています。

前頭前野の機能低下はうつ病のときにも認められる現象です。
最近の研究では、前頭前野とセロトニン神経は相互に影響を与えていることが分かっています。
動物実験で前頭前野を刺激すると、縫線核セロトニン神経の活動が活性化されます。
一方、縫線核セロトニン神経は前頭前野へ軸索を送って、そこの働きを調整しています。

前頭前野だけが損傷された患者では、衝動的な行動が目立ち、計画性がなくなり、社会ルールに従って生活することができなくなると記されています。
これは、キレる子どもの行動特性とかなり似た部分があると考えられます。
したがって、ゲーム脳によって前頭前野の働きが弱ると、衝動的で、非社会的な行動が出るようになると推測されます。

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一方、前頭前野の働きが落ちると、セロトニン神経を弱めることにもなります。
それはさまざまな症状につながってくるものと考えられます。
それだけではなく、セロトニン神経が弱ると、前頭前野の機能を調整する働きが落ちてしまいますから、衝動的、反社会的な行動への歯止めもきかなくなると考えられます。

さらに、ゲームをしている行動によっても、セロトニン神経は弱まります。
ゲームというハラハラドキドキの状況は、極度に息を詰めた状態に相当します。
呼吸のリズム運動を調べてみると、非常に抑制されています。
息抜きの遊びではなく、息を詰めた真剣勝負の世界に近いものがあります。
息を詰めることは呼吸を意識的に抑えることですから、その状態が長く繰り返されると、やがて、セロトニン神経の働きにマイナスに作用します。
この点でも、ゲーム漬けの生活はセロトニン神経を弱らせてしまうと考えられます。

このように見てきますと、「自分の部屋(殻)に閉じこもる日常とゲーム漬けの生活」は、セロトニン神経にとって最悪の条件と言えるでしょう。
現代の子どもの置かれている社会環境は、一見恵まれているようにも見えますが、キレる子どもを生みだす温床となっている可能性が指摘できます。

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