キングオブコント2022感想&個人的採点

賞レース3兄弟、末っ子の頑張りと怠慢

2022年10月8日土曜日 キングオブコント2022の決勝戦が行われ、ビスケットブラザーズが第15代目キングに輝きました。

賞レースの1年は1月ではなく、kocの決勝が行われる秋から始まると思っていて、この大会の有様が2月のR-1決勝までのわくわくに繋がります。
M-1/R-1に続く賞レース3兄弟の末っ子であるkocは、しっかり者で優等生の長男と、長男のやることを真似したり自分のやりたいようにやってみたりとマイペースな次男に比べやんちゃで、じゃじゃ馬な面があるもので。

優勝を決める最終投票で出場者自身に棄権するかどうかの無意味な選択をさせる未熟さ、気まぐれに変わる審査方法、思春期を迎え決勝メンバーの発表を拒んだ反抗期、、、
紆余曲折ありつつも、その末っ子の力は誰もが認めるところであり、中学入学にあたる13年目から賞レースの3台巨頭としての自覚を持ち始めたkocは徐々にその一歩一歩を大きく、力強いものにしてきました。

私は、賞レースにもっとも必要なものは権威・重厚感・かっこよさだと思っています。
2020年のOPと煽りは本当に痺れました。今年は賞レース3股R-指定擁する梅田サイファーがテーマソングを担当。1組1組にリスペクトがこもったOPは秀逸だったと思います。

が!しかし!youtubeアカウントはどうした末っ子!!!
準決勝の密着はもうやめたのか!!開幕から決勝の1週間前まで更新一切なかったじゃないか!
こういうやんちゃなところがある末っ子。来年からは義務教育を終え、16歳になるkoc、近年本当に素晴らしい大会になっているので今後に期待したいところです。
カーネクストのcmの1つで舞台裏を撮影したものがありましたが、ああいうのを事前にアップしてほしいんですよね。M-1のエレカシ宮本の曲を起用した動画なんか鳥肌が立ちました。

上客が集まる温かい決勝戦

1組ずつ、個人的な感想を書きたいと思います。()内の個人的採点は本当に大した意味はなく、自分だったらどうするかな、という楽しみの一つでしかありません。偉そうだという自覚はあります()
(ネタのタイトルはwikiから)

1.クロコップ「ホイリスト」 
山内 90秋山 93小峠 94飯塚 90松本 93 合計460 (90)

今回のお客さん随分温かかったというか、沸点低くなかったですか!?例年以上で驚きました。このネタ、最初に「ホイリスト」ってワードが出た時点で笑いが起こってたのが驚きです。ホイリスト、というワードだけであっち向いてホイ、に結びつけたのだとしたら天才過ぎないか?
内容としては、あっち向いてホイの対決を仰々しくばかばかしく繰り返し。カードゲー要素を取り入れることで展開をプラスしていきますが行きつくところは同じ。今回この種のネタが非常に多かった気がします。賞レースで勝つためには繰り返すだけではダメで、そこに要素を足さないといけない。
このネタはそれがカードでめくる展開と、梯子に代表される徹底的なバカバカしさだったでしょうか。オープニングではD-CAPを被って登場した荒木さん。リリックでもしっかり触れられていました。

2.ネルソンズ「結婚式」
山内 96秋山 92小峠 92飯塚 94松本 92 合計466 (86)

ここもまだ仕掛けも何もない夫婦2人の会話だけでそこそこ笑いが。
kocは2016のこともあるので客層に本当にヒヤヒヤさせられます。あと審査員席とステージの間にも席あったんですね。知らなかった。カメラに映る審査員後方はモデル枠でしょうか。
ネタに話を移すと、和田まんじゅうさんがツッコミ、というのは彼の持つキャラクター性を考えると相当思い切った選択に感じました。(koc以外で彼らのネタを見たことがないので、普段からそうだったらすみません)何も話さなくても2人に振り回されている表情だけでウケる、凄いんですが彼が常識人ポジションにいてしまうのはすごくもったいないような気がどうしてもしてしまいます。
あとあんな体型で足速いわけないだろ、っていうw

3.かが屋「女上司と部下」
山内 94秋山 93小峠 93飯塚 92松本 91 合計463 (94)

いい意味で驚きました。部下が本当にドMであることを、女上司が演技でドSをやっていることを、お互いが気付かないまま会話劇を展開していくのがかが屋だというのが私のイメージでした。
しかし、ネタの中盤で早めに種明かし。意外でしたがそうすることで、二人のやり取りがぎこちなくもエスカレートしていく様が笑いを増幅させたと思います。
ただ、構成の面で気になったのは、(後で理由がわかるとはいえ)前半2人のあまりに不自然で大きな笑いがない会話に時間を割き、種明かし後の会話もそこそこに大将とのやり取りに移行しコントを畳む、凄く高い山を急いで登って急いで降りたような感覚になりました。

4.いぬ「夢の中で」
山内 91秋山 94小峠 90飯塚 89松本 95 合計459 (96)

「キスは禁じ手」飯塚さんの言葉に彼の矜持が窺えました。けどセーラーブリーフはいいのか!w
私は初見のコンビだったのですが、どう見てもヤバそうな太田さんのルックスにちょっと大かき回しを期待しすぎた面があります。夢の中って「何が起こっても不思議ではない場面」ではあるので、確かに異常な状況ではあるんだけど、でも、夢だしな、、、と思ってしまいました。でもやっぱり髭面の細マッチョとパーマババアのキス合戦は面白かった。山内さんも「キスの面白さ」と言ってましたね。
太田さんはなぜエンディングで脱いでいたのでしょうか?特に触れられることもなくw

5.ロングコートダディ「料理頂上決戦」
山内 92秋山 95小峠 92飯塚 92松本 90 合計461 (87)

これもゴールは決まっていて、それを繰り返す「ロッチ方式」
もちろんずっと前からある手法ですがkocでこのスタイルで(良くも悪くも)目覚ましい成績を残したロッチとどうしても比べてしまいます。
中岡さんも兎さんも(うさぎさんって打ってて可愛い)状況を把握できない、端的に言えば「バカ」なんですが、兎さんは完全にイかれてるヤバイ「バカ」。なぜそうなったかを一切考えようとしない、羞恥心を覚えていない兎さんより、パンツが見えていることは恥ずかしい、リアクションも取れる中岡さんの方が私は好きでした。

6.や団「バーベキュー」
山内 93秋山 95小峠 93飯塚 95松本 94 合計470 (97)

徹底的なバカが大会を持って行ってしまいがちな賞レースですが、今回は(或いは審査員一新から)しっかりした本が評価されやすいように思います。
面白かったのは勿論ですが、15年の積み重ねに好感も覚えました。そりゃあ飯塚さんは好きでしょう。バカリさんが吉住さんを評価したように、やっぱり自分がやっていることが一番面白い、そう思っているからこそ突き詰められるんですよね。

7.コットン「証拠」
山内 96秋山 96小峠 91飯塚 91松本 96 合計470 (92)

浮気証拠隠滅業者のコント。実在しない職業の人間を、当たり前にある前提でやるコントですが、やはり笑わせ所としては仕事の道具でしょうか。
チョコプラのポテチ開封のコントもありましたが、道具を使いこなすボケは笑いよりも「おおっ」ってなる感じであまり好みじゃないのが正直なところ。
男性が女性を演じるコントは何一つ珍しくありませんが、それを逆手にとって男に戻ってみせたのには驚きました。

8.ビスケットブラザーズ「野犬」
山内 95秋山 96小峠 97飯塚 95松本 98 合計481 (97)

松本さんが自身の歴代最高評点となる98をつけました。これまではチョコプラの「密室ゲーム」、にゃんこスターの「リズム縄跳び」、空気階段の「火事」につけた97が最高点でした。
ビスブラは3年ぶりの決勝ですが、前回の決勝ネタ(記憶をなくした二人は実は婚約していた)は全く意味がわからなかったので、見違えたネタにいい意味で驚かされました。2人のキャラが濃いのは言うまでもなく、あんな体型した男がセーラーブリーフで出てきたらそりゃあ面白い。
ただ、そこで出オチで終わらなかったのが今回の勝因だと思っていて、セリフのいたるところに散りばめられた尖ったハイセンスなやり取りは、大味な設定のキャラコントにいいスパイスを加えていました。
「俺はこっちが前だ」「いや絶対後ろでしょ」なんて賭けに等しいでしょう。

9.ニッポンの社長「人類再生計画」
山内 89秋山 93小峠 92飯塚 91松本 90 合計455 (89)

これもロッチスタイル。(勝手に名前つけてますが)
クロコップはカード要素とアニメ要素、ロコディは話が通じないイカれ野郎要素、ニッ社が足した要素は照明と音響と顔芸でした。
二人の狙いがどうだったか、審査員がどう受け取ったかは分かりませんが、期待が高かった分爆音の音響と顔芸にほぼ終始したのは少し残念でした。
このタイプのネタは、展開が分かりきってる以上「裏切るな!あれを見せてくれ!」という状況にしたら勝ち確な反面、「あーこの後あれね」と思われたら盛り返すことは不可能。
前者の状態に上手く持っていけたのがロッチや(あくまで私の中では)いぬで、今日のニッ社は後者だったと思います。
これが最初から爆ハネしていると、自販機パートやオチフェイントも物凄くウケるんだとは思いますが、、、
ただ、私がこれまで賞レース以外も含め何本か見た彼らのネタの殆どはロッチスタイルのネタで、「もっと見せてくれ!」と思わせてくれるネタも沢山あります。これで萎まず4年連続の決勝進出に強く期待したいところです。

10.最高の人間「岐阜ワンダーランド」
山内 91秋山 92小峠 93飯塚 93松本 93 合計462 (96)

私は岡野さんの発想が本当に好きで、パチンコ玉からおっさんを作るネタ、寿司屋が刑務所になっているネタ、、あのクレイジーな発想には本当に痺れさせられます。大好き。先述の巨匠時代の2ネタは本田さんが振り回されるだけですが、吉住さんという更にスキルを兼ね備えた相方を置くことによって、ただ振り回されるだけではない強い人物を登場させられるのが大きなアドバンテージになっていると思います。
暗転自体は悪いことではないし、ニッ社に比べてさっさと明暗を切り替えていたとは思いますが、賞レースのネタは往々にして右肩上がりフルスロットルが求められる傾向にあり、ネタの終盤の回想シーンで、それまで以上の笑いを起こせない暗転の繰り返しはやはりマイナスになりますね。しっかし吉住さんの演技力は凄い。cmに何度も出てた朝日奈央より可愛く見えたもんなーいかんいかん。

見事なウイニングラン、しぼまなかったファイナルステージ

ファイナルステージにはビスケットブラザーズ、コットン、や団が進出。
ファーストよりもファイナルの方が点数が低くなることが多いですが、今回は3組ともファイナルの方が上回るという結果。
おそらく自身がある方を1本目に持ってくることによるものなのでしょうが、2本同じクオリティのものを揃えてくる、というのは本当に凄いですね。

1.や団「雨」
山内 95秋山 94小峠 94飯塚 96松本 94 合計473 (98)

私も今回一番面白かったです。伊藤さんのシンプルな狂気、中嶋さんの無邪気な狂気、2本ともそれを上手く生かした素晴らしいネタだったと思います。来年も、再来年も見たい。でも、このネタ準決勝何回かかけてるんですね。ある意味集大成に近いよう。もっと決勝で見たいけどなー。このクオリティのネタが何本かあれば絶対優勝できると思います。

2.コットン「お見合い」
山内 96秋山 95小峠 95飯塚 95松本 93 合計474 (91)

当然ながら本当にタバコに火を点けるわけにはいかない中で、あれだけ情景を浮かばせる力は凄いですね。
タバコ吸う女あるあるのネタは、尖ったボケを求めている層にははまりにくいと思いますが、今日の客層にはばっちりハマっていたと思います。
煙指輪のオチは、煙で輪っかを作って遊び始めた段階で「その展開はあるだろうな」と思っていました。
このネタの審査員講評で、松本さん・飯塚さんがマイナスコメントをした直後、浜田さんは2度3度山内さんにコメ振り。M-1とは違いMCと審査員の力関係で浜田さんの方が優勢であるため、こういったやり取りで重くなりがちな空気をコントロールできるのが強みですね。

3.ビスケットブラザーズ「ぴったり」
山内 95秋山 96小峠 96飯塚 97松本 98 合計482 (99)

このネタのタイトルこれでいいんですか?何がぴったりなんだw
デカ女2人の会話劇かーと思ったのも束の間。衣装を脱ぎ捨て実は男だったと言い出した段階で完全に心をつかまれました。その後も飽きさせることなく男と女を行ったり来たりするジェンダーレスコント(?)、1本目同様、大きく振りかぶった強設定キャラコントと、その中に滲み出る尖ったセンスのボケの数々。「君が完成させてみる?」は腹抱えました。
途中原田さんが一瞬セリフを間違えましたが、総合的に見て見事なウイニングラン、必要な点数は464点でしたが何の心配もいらなかったでしょう。


必要なのは多様性

最後の総評で松本さんが口にした「面白いだけでは勝てない、演技力も必要」という言葉。
「キャラ」「台本」「見た目」「演技」・・・
これまではどれか1つだけでも突き抜けていれば勝てる、決勝まで来れることもあったkoc、今後はそうはいかないということですね。
審査員に同じコンビの両名が入らなくなったことで偏りが薄まったのも大きな要因の一つで、1つの要素が強いだけでは5人の内1人にしかハマれなくなりました。

着実に大会として成長しているkoc、ビスケットブラザーズの優勝で華々しく幕を開けた賞レースの新しい1年。今年も大いに笑わせ、わくわくさせ、感動させてくれることでしょう。

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