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Shall I

最寄駅の三番出口を出ると傘をさすほどでもないと思われる雨が降り始めており、その雨は多くの通行人を困らせていた。その群れのなかで自分も傘をさすか一考していた。

路上を歩く人々の傘開閉動向を伺っていると、車道を挟んだ先に男女がすれ違うのが見えた。二人はそのタイミングで雨が降っていることに気が付いたのかほぼ同時に互いの右手を軽く胸のあたりまで挙げて雨量を確認した。それは遠近法の関係で私の角度からはまるで『shall・we・dance?』の誘い文句がどちらからともなく飛び出しそうな雰囲気に感じられた。

これがもし現実ではなくフランス映画だったとしたら、運命的な恋の起点を口実にしっとりとしつつも軽快な曲調で弾ける音楽が流れ始め、街中で鳥がさえずり草木は歌い囃し立てるのだろうか。そして、次第にダンスのテンポも上がり二人のヒールと革靴の音が路上に響き渡るのだろう。

東京の端っこの街でそんなおしゃれが起きる訳もなく濡れるのが嫌いな僕は静かに傘をさして歩きはじめた。

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