言いがかり香水06_スロウ・ダンス
主旨:これを読んで「この匂い推しがつけてるかも」と思った誰かがいれば私が「フーン…… その人、ネ…」とおこぼれにあずかってニヤニヤできる
まずは現物
【おことわり】※定型文
香水に手を出し始めてさほど日の経っていない一介のオタク(エンジニア)が、休職中のリハビリとして始めた趣味の記録です。業界も御社も弊社も全く関係なく、広告収入なんかもありません。
▼公式通販
▼Celesさん
第一印象:パーティタイムなんだけどそれにしてはエッチなんだよな……
オタクすぐエッチって言う。
その通りです。すみません。
でもこれなんていうか……最初にシュッてしたときの華やかさは、シャンパンを景気よく開けたような感じがしてたしかにパーティタイムなんですけど、香りが落ち着いてくるにつれてまずハーバルな感じ?フレッシュさのある爽やかになり、最後はパウダリーな甘い香りに着地するので、「パーティ会場ですっごい好きな人を見つけてそのままホテルに行きました。今は朝ですね」って感じで終わるんですよ。
エッチじゃん?
正直この香りのする人にバーで会って、騒ぐってほどじゃなくいい感じに話が弾んで、あっちもこっちもくすっと笑う、みたいな空気が出来上がったとしたらその後のお話を断るわけがないんですよね……。ま、この香りがする人に会ったことないけど(休職して人にマジで会わなくなった引きこもりエンジニアなので)。
言いがかりをつけていく
ユニセックスだよ!
嘘じゃないもん。
これはマジモンのユニセックスだと思う。
つけてる人が男性でも女性でもメロメロになる。私は。
J-SentさんのYuzuのときみたいなシンプルな完成度の高さではなくって、作り込みで畳みかけてくるタイプの完成度の高さなので、今回は男女分けずにしゃべります(書きます)。
これをつけてる人のイメージ
すっごいざっくり言うと「誘う人」だと思います。
ちょっとした微笑みをすごく魅力的にしてくれる香水。なので、「この匂い好きだなぁ」ってつけてるタイプと解釈するとそれは魔性の星のもとに生まれた人なんだと思う。で、何かの意図をもって、印象を作る一要素として香りを使っているタイプの人であれば、それはもう間違いなく「誘う」気ですよ。
もちろん性的な意味にとどまらず。
「誘う」先っていっぱいある。
たとえば、「頭のキレる悪い人」。
誘いをかけた相手がその先どうなるか、そこへの興味の有無はどちらでも素敵だと思いますが、「こっちへおいで」と深い谷の先から微笑みかけてくる人。彼の背後からこちらへ向かって風が少し吹くだけで、この香りがほんのすこし鼻先をかすめるだけで、もうその人のことしか見えなくなるんですよね。足元にどれだけ分かりやすく穴が開いていても、地面の裂け目があったとしても、そんなもの視界に入らないんですよ。
「行っておいで」と声を掛けられるならもっとです。声につられて振り向いてみたら、自分の動きで揺れた空気がこの香りをはらんでいる。もうだめですよ、おしまいです。
たとえば、「同志を求める思想家」。
この香りをさせながら爽やかに、または少しだけ微笑んで「一緒に頑張ろう」と言われたらもうだめ。
どれだけリスキーでも、どれだけ荒唐無稽でも、語られた言葉から顔を背けられなくなる。性的な「誘い」に限るとすこし破滅が物足りないかな……と思ってしまうくらい、べらぼうに魅力的な香りです。
>>>魅力<<<を圧縮したらこうなるんじゃないかな……
フルボトル38,600円は伊達じゃねえ。
紹介文を読む
プロムってあれですよね、若人が卒業記念とかの節目節目にダンスパーティ開いて、好きな子とダンスしたい!って頑張るやつ。
噂でしか知らないんですが、「分かる」と「分からない」が交互に来る。
分かるポイント:華やかさ、不安定さ、夢見心地の感じ
分からないポイント:ティーンのダンスパーティでこの匂いしてたらその……、伝統的で文化的な儀式に使われる香草のお焚き上げ(オブラート100万枚)ちゃうんか
いや、でも私はお焚き上げ(オブ略)をしたことがないんですが、なんとなく「トリップの気分いいやつの時」みたいな気持ちにはなる。今度海外で合法のお焚き上げを経験した友人に嗅がせてみようと思う。
いくぜ雰囲気イングリッシュ
:A rites-of-passage moment for both girls and boys before they metamorphose into women and men.
「女子や男子が女性や男性になる前に与えられる、一瞬の通過儀礼」
こんな感じでどうだろうか。儀式的にわずかにあるその一瞬、ていうところにフォーカスしている感じだと思うんですよね。
rites-of-passage >通過儀礼
moment >一瞬
for both girls and boys >女の子と男の子両方のために(の)
before they metamorphose >彼らが変化する前に(の)
into women and men >女性や男性に
:A feeling of exhilaration tempered by awkwardness, a heady collision of innocence and experience, not knowing and knowing, felt across countries, cultures and time
「純粋さと経験、無知と知、共同体や文化や時間を経て感じたことが、激しく衝突する居心地の悪さのせいで浮き立った気分」て感じかな…
長文は難しいね。感覚としては、青少年(少女)のモラトリアム、思春期的な、理想と現実の合間にある不安定さ、と受け取るくらいでいいのかも。
A feeling of exhilaration >浮き立った気分
tempered >手を加えられた(超意訳 色んな意味が出てくるが、いずれも人の手や意図が加えられた結果の形容詞なのでこうとした)
awkwardness >居心地の悪さ
a heady collision >激しい衝突(google翻訳)
innocence and experience >無垢さと経験
not knowing and knowing >無知と知
felt across countries, cultures and time >共同体、文化、時間を経て感じたこと(結構意訳 acrossが越境する感じの意味をたくさん持つので)
:Slow Dance mixes ideas of the feminine and masculine, bitter and sweet, in a rich, intoxicating distillation redolent of warm skin and breathless exchange
限界が見えてきた。
「スロウダンスは、女性性と男性性、苦さと甘さの複数の発想から作られています。温かな肌と吐息の交歓の記憶に酔いしれ夢中になる、贅沢な時間を得ることができます」
限界でしょう…… ofが多いよ……
なんとなく二文をまとめている気がしました。横着するな。いやでもこういうのって音が大事なんだよな、とくに英語圏はな……という気持ちもある。私が読めないだけです。八つ当たりです。認めます。
Slow Dance mixes ideas >スロウダンスは複数の発想からできている
of the >(これたぶんこのあとのand繋がり全部にかかる)
feminine and masculine >女性的で男性的
bitter and sweet >苦さと甘さ
in a rich >豊かに
intoxicating >酔わせる、熱狂させる
distillation >蒸留
redolent >香りのいい、気配がある(日本語でいう 殺人事件の香りみたいなものらしい。そこから派生して、思い出させる、という意味もあるよう)
warm skin and breathless exchange >温かな肌と吐息の交換
:Here (high school) clichés mingle and become something more; at once familiar and iconoclastic, the ancient perfumer’s arsenal is made modern and anew
勘弁してくださいバイレードさん……!
「ハイスクールではお決まりの慣習が交錯し、発展する。親しみをもって、破壊的な革新と共に、伝統的な調香師がそうしてきたように」
もう超意訳。たのむ、私が感じた雰囲気はこれや……!助けてくれ
Here(high school) clichés mingle >ハイスクールでは「お決まりのこと」が交錯する (あまりいい意味では使わないらしい。初めて見たよこんな単語)
and become something more >そしてもっと他の何かになる
at once >一度に、直ちに、さっそく(など)
familiar and iconoclastic >親しみ、破壊的な革新(iconoclast が慣習を打破しようとする人、みたいな意味らしい。初めて見たよリターンズ)
the ancient perfumer’s arsenal is made modern and anew >伝統的な調香師の武器庫(ナレッジとかのことか?)は、近代的で革新的な構成
フィーリング英語読者にはかなり無理がありましたが、なんとなく言いたいことは「誰もが経験したティーンの不安定さと、あの日の夢見心地を豊かに思い出させる香りです。ハイスクールカルチャーでも、香りの世界でも、伝統と革新が同時に存在しうるのです」みたいな、こう……
読んでいる人に求めるもの第一位!共感!!!て印象です。
”あの頃”って、みんな違うはずなのになぜか分かり合えたりすることがあるよね。実は私たちも、みんなと違うはずなのに同じ”あの頃”があるんだ。
そう言われるとなんだか、知らない仕事をしている遠い世界の人のように思えていた、香りを作っている人(ジェローム・エピネットさんというらしい)がすごく親しい人のように思えてくる。
このサイトの文章書いた人、魔性なんじゃねえかな。
あとがき(毎回のやつ)
以上の全て、一個人が趣味で、「覚書」として残したものであって、あなたが香水をワンプッシュした時の印象はあなたのものです。
筆者はムエット(試香紙)で感じる香りと現物の香りを全く異なるものと感じるタイプなので、あなたにも同じことが言えるかもしれません。
中々ハードルの高い、機会の少ない部分はありますが、香水は「香り」そのものだけでなく、吹いた時、その後の変化、それが誘起する自分の感覚などを味わう「体験」としての側面もあると、私は思い、楽しんでいます。
こういったメモ書き、覚書が、業界や担当者さんの利益を損なうようなことがあった場合、私の望むところではありません。ご連絡いただければ非公開などの対応を行います。お手数ですが、よろしくお願いします。
どこかの誰かの思考の肥やし、体験の助けになれば幸いです。
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