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言いがかり香水08_ラクシュデュディアーブル

主旨:これを読んで「この匂い推しがつけてるかも」と思った誰かがいれば私が「フーン…… その人、ネ…」とおこぼれにあずかってニヤニヤできる
というのがいつものなんですが、今回は私情によりちょっと方向性が…違うかもしれない……

まずは現物

【おことわり】※定型文
香水に手を出し始めてさほど日の経っていない一介のオタク(エンジニア)が、休職中のリハビリとして始めた趣味の記録です。業界も御社も弊社も全く関係なく、広告収入なんかもありません。

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▼Celesさん


第一印象:薬酒のにおい

 蒸留酒寄りのハーブ感と、強い甘みがガッ!ときます。
 ハーブ酒、薬酒、スコッチウイスキー、それからスパイス強めのダークラム。そんな感じのイメージをまず抱くんですが、あれらとは違ってほんとうに「甘い」んですね。
 甘い、で足りるか?甘ったるいって言ったほうがいいかもしれない。
 フルーツとかの甘さではなくって、もっと重たい、どろっと鼻の奥に溜まるような甘さです。メインを張ってくるのがこの「ハーブ感」と「重甘さ」なので、まぁそんな系統もあるっちゃある……んですが。
 すごく個人的に、この二つがこのバランスで成立している、ということに「違和感があるはず、と思って探すのに、そんなものはどこにもない」という感覚を見ます。
 ひと吹きのトップでそうやって混乱している間に、少しずつ香りが増えてくる。ちょっと埃っぽさを感じたり、煙たさを感じたり。古書やアンティーク家具なんかに感じるような、あぁいうものがちらほらと顔を出すんですが、甘さとハーブ感は残り続けているんです。
 香水、というコンテンツでの「香りの変化」が、表情や顔色の変化ではなく「人の動線」を感じさせることがあるのか、と感銘を受ける私の脳の上の方。
 しかしそれはそれとして、依然あるはずの違和感が見つからずに困惑し、隙だらけのその隙間をこの香りに埋め尽くされているのが、私の脳の下の方。
 ひとの持っている色んな顔、いわゆるペルソナの交換が、私の今まで経験してきた多くの香水のトップ→ミドル→ラストのイメージなんですが、これに関してはその顔を剥がした内側をじわじわと、見えるか見えないかの瀬戸際で焦らされ続けるような。きっと蓋を開けると、どろどろと中身が溢れ出してしまうのだ、と思われるような。

 冒頭に書いた「私情」なんですが、お察しの通り私がこの香りメチャクチャ好きです。どのくらい好きかというと2L欲しいくらいです。好きなあまりに、TRPGで遊んで頂いている創作キャラクターにこの香りがする!と言いがかりをつけて一人で暴れ倒しているわけです。
 なので、権利などの心配もしなくてよいわけですから、今回は参考までに「私がこのにおいする!」と思った人間の特徴や解釈としてこの後を書いていこうと思います。


言いがかりをつけていく

ユニセックスです

 というか、この香りに性別という概念がない気がする。
 薬酒、と書いたところでご理解いただいているかな、とは思いますが、これ自体がほんとうにすごいクセの強い香りです。何なら液色も強いので、色の薄い服のときは首など、布にかかるかもしれない場所に吹くことをお勧めできない。
 つまり、この香りの強さをまとってしまえば、つけている人間が男か、女か、なんていうのは些細な問題になるわけです。
 この香りを「こなす」には、年齢や見た目の落ち着きの方が重要になってくるのかな、という感じ。

これをつけてる人のイメージ

 ひとつめ、「装いとして」。
 先述の通り、この香りの強さとクセ、ほんとうに人の印象に残ると思います。好き嫌いも相当に分かれるんじゃないかと思う。それを装いとして身にまとう、というのはある種の盾であると考えます。
 ひとから自分へ向けられる第一印象をコントロールするのに、この香りで一発脳髄をブン殴っておいて、例えば柔和に、穏やかに笑い声を掛けたりすると。そういうような打算をするタイプの人間であるかもしれない。
 また、第一印象をこの香りにすることで、自分が振舞い、見せる自分の姿以上のものを探らせないようにする。余計な詮索を避けたい、そういう考えもあるかもしれない。

 ふたつめ、「これが好きな場合」。
 私がそうなので、いつも以上に主観的なお話になりますが。
 例えば愛書家。骨董品などが好き。そういうタイプは、この香りからにじみ出てくる埃っぽさや煙たさにほっとすると思います。
 例えば愛煙家。これもそうですね。私も喫煙者ですが、煙草を吸った後でも全然紛れないです。わかばとかはまた別かもしれないが。あ、煙草で思い出したんですが、「ガラムスーリヤ」吸ったことがある人は、この香水、あれにも近いところがあるのでピンと来るかも。
 ちょっと話がそれましたが。この香りをつけて、ボヘームのNo.6を吸って、その後にふっと動くと、ボヘームで少し角が取れて煙たさが丸さになったような感じになります。大変良い……
 で、もちろんお酒、とくに香り系の蒸留酒が好きな人。私はもともとダークラムがめちゃくちゃ好きで、特にキャプテンモルガンだとシェリーオークとか、あとはキャノンブラスト。あのあたりが好きな人間です。そういう路線の匂いなので、好きな人は好き。

 さて、ここまで挙げてきたイメージをだいたい網羅している例の創作PC(プレイヤーキャラクターの略)は、1930~40年代の日本を生きる、40代の職業男性です。現代フィクションでいうところの公安警察のように、さまざまな場所に密偵として潜り込んでは、国家や国民の存亡に関わるリスクを洗い出し、排除する。そういうお仕事をしています。
 彼のキャリアは、元軍人。最終的な階級は少佐で、前線ではなく軍学校の教官でした。そこから、上記の公安ライクな組織が設立される際に天下りのようにして流れてきた。
 ・秘密
 密偵先で、自らのほんとうの内面や経歴に探りを入れられたくはない。香りで強烈な印象を残すことで、例えば髪形や服装を変え、香りを変えることで、別人として様々な装いを手に入れることができる。
 ・過去
 蓋をしたい過去、開いてしまえばどろどろと溢れ出す後悔。そういうものを持っています。若人たちを戦地に向かわせるべく教育をした、その罪悪感などです。
 ・教養
 いわゆる天才肌、というのではない、勤勉さと努力によって得た知性を、私は教養と呼んでいますが。そういうタイプです。古今東西、入手可能なさまざまな書籍を手に取り、読み、筆者にとってはたわごとにすぎないかもしれない言葉のひとつひとつを噛みしめて吟味し、消化する。
 ・憂い
 一人静かに過ごす時間を楽しむではなく、思索や憂いに費やす。橙色のランプがひとつっきりソファ横に灯った、薄暗がりの蒸留酒。

 全体的に、明るさや活発さを与えるような香りではないです。
 落ち着いた、静かな、場合によっては「澱んだ」とさえ形容できそうな、重く甘く捻じれた香り。どれだけ言葉を尽くしても足りない気がしてきたので、この辺りで……

これを贈るということ

 これね、すっごい悩みました。
 「これが似合うかもしれない」と思って手に取るというよりは、たぶん「これ好きそう」と思って手に取るタイプの香りです。
 ですから、贈る、というのはこの場合「相手への理解」「相手への許容」そういう路線になるのではないかと。加えてうっすらと思うのが、乾いた感じの印象です。つまり「こういうの好きなんじゃないかと思って。私の好みじゃないけど」というような、相互理解を望まない故に成立しうる距離感をにおわせることができるのではないか……、と思います。


紹介文を読む

奥底深く赤々とくすぶり続ける焔のように罪への耽溺と悔恨が支配する夜、心の中に眠る悪魔を目覚めさせる甘美な罪の結晶。ウードのあたたかみとバルサミコのベースにスモーキーなラブダナム。神聖な煙にも似た空間に包まれてフルーティな妖しさが揺らめく。一度足を踏み入れたら二度と戻れない、たちまちと身も心も悪魔の虜となる甘い香りです。

Celesさん 通販ページより

 ラブダナムって何……?と思って調べました。
 どうやら地中海原産の花のようで。香りの系統としては樹脂系の、重たくて煙たいのがこれのよう。
 何ならついでに「シプレ調」と呼ばれるものに使われることがおおいこと、シプレ調にはパチョリやオークモス、ベチバーといった私の好きな香りが含まれることを知りました。すごい。

 さて本文。筆者が「罪への耽溺と悔恨が支配する夜」という言葉で暴れ散らかしているのは、長々とした言いがかりをご覧の方にはとっくにバレているものと存じます。加えて「一度足を踏み入れたら二度と戻れない」。
 ほんとうにもう、この言葉から受ける印象がすべてである、と思います。この香りから受けるもの、この言葉から受けるもの、それです。

[悪魔の寝床]
悪魔に厳命を下すために、地獄に行く必要はない。 求めよ。この地は与えるであろう。 奥底深く赤々とくすぶり続ける焔のように 罪への耽溺と悔恨が夜を支配する。

[力強く独創的なウッディの香り]
沈香(ウード)、シスタスラブダナム、フルーティーノート、ローズ

Serge Lutens公式 商品ページより

 悪魔はあっちから来るらしいです……(頭を抱えるオタクの姿)

 深い夜。橙色のランプに照らされて飲む蒸留酒。ランプを消し、月明かりのうっすらとした中で沈み込んだ布団の中で、装った人間の蓋が開いてどろどろとしたものが溢れ出す。悪魔は枕元に片肘をついて、そのさまを微笑み眺めている。
 視線を合わせたらおしまいなんですよ。分かっているから、そのまま瞼を閉じて眠りにつくわけです。自分の頭を後ろから抱きしめてくる、悪魔のくぐもった笑い声を聞きながら、それでも振り向かず、目を開けない日々を過ごしている。

 そういう人に!!!!!!!!!!
 この香り!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 ※販売終了予定らしいので 私はあわてて一本注文しました※



あとがき(毎回のやつ)

 以上の全て、一個人が趣味で、「覚書」として残したものであって、あなたが香水をワンプッシュした時の印象はあなたのものです。
 筆者はムエット(試香紙)で感じる香りと現物の香りを全く異なるものと感じるタイプなので、あなたにも同じことが言えるかもしれません。
 中々ハードルの高い、機会の少ない部分はありますが、香水は「香り」そのものだけでなく、吹いた時、その後の変化、それが誘起する自分の感覚などを味わう「体験」としての側面もあると、私は思い、楽しんでいます。

 こういったメモ書き、覚書が、業界や担当者さんの利益を損なうようなことがあった場合、私の望むところではありません。ご連絡いただければ非公開などの対応を行います。お手数ですが、よろしくお願いします。
 どこかの誰かの思考の肥やし、体験の助けになれば幸いです。



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