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言いがかり香水01_ロー・トロワ

主旨:これを読んで「この匂い推しがつけてるかも」と思った誰かがいれば私が「フーン…… その人、ネ…」とおこぼれにあずかってニヤニヤできる

まずは現物。

いちおうお断りしておきます。
香水に手を出し始めてさほど日の経っていない一介のオタク(エンジニア)が、休職中のリハビリとして始めた趣味の記録です。
業界も御社も弊社も全く関係なく、広告収入なんかもありません。

▼公式サイト(日本語ではない)
https://www.diptyqueparis.com/en_eu/p/edt-trois-fl-100.html

▼Celes(2021/04/21 
 欠品中でムエットのみ)


第一印象:ン゛ッ!?!?!?!?

Celesさんでのレビューを見てみると、「くどくはない」とか「森」、「柑橘系の樹」、「お香」、「木の中にハーブのスパイス」といった爽やか系の印象を受けるんですが、香水に詳しいわけではない私がこれを最初に吹いた時、爽やか系のイメージが吹き飛んでいわゆる宇宙猫フェイスに。

何か強烈な香りが、森より柑橘より先に来る印象。
(もっとも、例えば手首などに吹いていたなら、トップが空気を含んで広がることでそういった印象になったかもしれません。私は「私のための香水であるから、私がいちばん匂いを嗅げる場所」として顎の下~首を狙って吹いています)

「何か強烈な香り」は最初のワンプッシュだけかな……、とも思いましたが、これが驚くべきことに、何度吹いても何か強烈だ……と感じる。
これがおそらく「お香のような」「神秘的な」と感じさせる部分なのだろう、とは思いつつもそれにしては強烈なので、毎度宇宙猫になります。
上記の通り、クセは強いと思っている。


言いがかりをつけていく

ユニセックスらしい

 正直「マジで!?」と思いました。
 香りのとしての印象がかなりメンズ香水寄りだったため。
 ただ、この香りをつけている、という前提でものを考えると「人ウケを狙ってつける香り」というよりは「自分の好きな香り」でのチョイス、または「一筋縄ではいかないという印象を持たせたい」あたりの感覚にたどり着くため、そう考えるとある種の(いい意味での)天邪鬼ユニセックスを感じますね。たいへん良い……

これをつけてる男性のイメージ

 大枠、先述の通り。
 「私はこの香りが好きなのでつけている」タイプの我の強さがまず真っ先に思い浮かびます。しかし印象が強いのがトップの僅かの間だ、ということを加味すると「私はこの香りが好きなのでつけているが、職場に辿りつく頃には”仕事モード”の香りに仕上がるので都合がいい」というような、ある種切り替えのスイッチ的役割を持たせることもできる。
 落ち着き始めてからの香りは「背筋の伸びたスーツの男」の印象が強いです。やはり私の感覚ではメンズ寄り、だなぁ……
 さて、「一筋縄ではいかない」についてですが、これも男性だと考えると、仕事人的な印象に落ち着きます。例えば営業さん、アングラな交渉ごとの場などでこれが香る男と対面したら、と考えると、マジで怖いぞ。私は。
 このへんは香りから受ける高品質、高級感のためと思いますが、そもそもこれ「強者」の香りがするんですよね。テーブルの対面を震えるチワワにする。

これをつけてる女性のイメージ

 先述の通り、基本が男性的な印象になっているので「あえてそういう香りを選ぶ」という一段階が加わります。
 強くなければいけない、と背筋を伸ばしているひと。男社会でのし上がったり、男社会を渡り歩いたりしてきたひと。または例えば、ノブレスオブリージュ的なパターンも夢が広がりますね。
 おうちに資産があって、このグレードに親しんでいる。かつ、胸を張って立っている。そう考えると「没落したおうち、残った現物資産。あの頃の生活と家族、守るべき領民のために家名を再建するぞ!」みたいなパターンはカルビ盛り合わせみたいなところがある

これを「贈る」ということ


 上司から部下、親から子、そういうシチュエーションに興奮します。
 友人同士で気軽に贈るもの、というよりはこの香りを「こうあれかし」と贈る、「そろそろこれを付けてもよかろう」と贈る、そういう意味を含んだ感じのね……


紹介文を読む


ギリシャのアトス山の頂上、長いハイキングあと修道院の白塗りの壁の中で燃える太陽から避難するためドアを開けると、礼拝中に燃えたお香やミルラに樹木が混ざり合った、スパイシーでウッディな香りに歓迎されました。その香りは神秘的で静寂なムードを呼び起こし、心身と魂を鎮めてくれました。この香りは没薬、乳香、黄金の贈り物を持って静かにやってくる3人の賢人を想起させる聖なる香りです

celesさん 商品ページより

急なギリシャ。
ギリシャ未経験ながら、なんとなく言いたいことをくみ取っていく。

「山の頂上、長いハイキングの後」
 今まで嗅いできた空気は、山の空気だったわけです。長いハイキング、であるから、そこそこの高さがあるのでしょう。少なくとも山で過ごした時間は長いと考えて問題なさそうですね。

「修道院の白塗りの壁の中で燃える太陽から避難する」
 ハイキング開始時刻は不明ですが、長い、ということから燃える太陽は夕暮れと考えてもいいのかもしれません。朝から昼までのハイキングって長いかしら。どうだろう……
 夕暮れであれば、身体はすっかり疲弊していることでしょう。心地よい疲労、という感覚かもしれませんが。いずれにせよ、日が暮れてからの外、疲れた身体で過ごすに良いことはない。少し気が急いているかもしれない。
 まひるごろ、と考えることもできるでしょう。空のてっぺんで燃える太陽からの避難。こう書くとすこし夏の気配がしますね。清涼ながらもどことなく湿度のある森、土独特のあの空気から逃げ出すのに、扉を開いたかもしれない。
 いずれにせよ、この避難という言葉には、扉を開くことへの期待が感じられる気がします。

「礼拝中に燃えたお香やミルラに樹木が混ざり合った、スパイシーでウッディな香りに歓迎されました」
 この一文は、私の感覚と非常に近いかもしれません。
 先述の通り期待をはらんだ手で開けた扉の向こうから、待っていましたとばかりにあふれてくる香り。お香っぽい、とするならこれかも、と言った私の宇宙猫フェイスのもとが、日本的奥ゆかしさを肩車しながらハグとキスの雨です。すごい来る。すっ      げー----来るじゃん…てくらい来ます。
 いやでも修道院ですからね、ここは修道院。私の印象に影響を受けすぎた解釈かもしれません。たぶんそうです。

「その香りは神秘的で静寂なムードを呼び起こし、心身と魂を鎮めてくれました」
 これ、” そう ”です。
 第一印象の話を繰り返してきましたが、それが落ち着いた後のこの香水、すごいです。通常人間の機能として、強烈なインパクトの後。しかも直後で、それが残っているとなると後続を感じづらいもの、と思っていますが、これは落ち着いてからが本番。
 もちろん、第一印象の残り香もあります。
 森感や柑橘感もここで来ます。
 強烈なものがまず来て、それが落ち着いて中身が出てくる。この流れが完璧です。もともと落ち着いているものを更に落ち着けるのは様々な意味で困難ですが、興奮したものを落ち着ける、これまでの瞑想的な描写から感じられる「深部への落ち着き」への導入としてこれ以上ない働きを見せます。
 びっっっくりしたぁ……って言って深呼吸する時の、ふかぶか度合いを参考にしていただければ。
 柑橘、森、系の香りに対して、私が個人的に感じるのがリラックスではなくハリのある「朝」であることが多いので、余計にこれすごいよ!!!とはしゃいでいるという可能性はありけり。

「この香りは没薬、乳香、黄金の贈り物を持って静かにやってくる3人の賢人を想起させる聖なる香りです」
 没薬、乳香、黄金、3人の賢人といえばキリスト教。高価な贈り物のうちでもとびっきりのやつ、という感じで書かれていたと思います。
 このワードからだとイメージがしづらいですが、要するにメチャ……いいよね……て感じかしら。
 高品質感、高級感は、すっごいあります。
 ディプティックが自信を持ってお出しする、あなたをラグジュアリーにする香り。そんな感じかなぁ……と思って原文を見たんですが、どこだろう。これ。Celesさんのオリジナル文言かも。

というわけで流れで原文も

At the top of Mount Athos, after a long hike, we sought shelter from the burning sun within the walls of a monastery. When we opened the doors, the scent of resinous shrub mingled with the incense and myrrh burned during the service. A spicy, woody scent, mysterious and soothing.

Diptyque 公式商品ページより

ざっくりいきましょう。

At the top of Mount Athos, after a long hike
 これが「ギリシャのアトス山の頂上、長いハイキングあと」
we sought shelter from the burning sun within the walls of a monastery
 これは「修道院の白塗りの壁の中で燃える太陽から避難するためドアを開ける(た)」。
 sought:求めた、何を、というとシェルターを。sought shelter:避難するため。
When we opened the doors
 「ドアを開けると」
the scent of resinous shrub mingled
 ここは「樹木が混ざり合った」。
 resinous:樹脂を含む、shrub:低木、mingled:混ざりあった
with the incense and myrrh burned during the service
 「礼拝中に燃えたお香やミルラに」ですね。
 service:礼拝 のよう
A spicy, woody scent, mysterious and soothing
 「スパイシーでウッディな香りに歓迎されました。その香りは神秘的で静寂なムードを呼び起こし、心身と魂を鎮めてくれました」たぶんこうです。
 直訳すると「スパイシーで、ウッディな香り。神秘的で、心を落ち着かせる」て感じ。
 soothing:なだめる、鎮静させる

賢者の話、見落としてたらここだよ!て教えてください。


成分表記を見る


Raw materials
 Myrrh, Rockrose, Incense

Olfactory accident
 Rosemary

Diptyque 公式商品ページより

Raw materials:原材料
 Myrrh:ミルラ(没薬)
 Rockrose:ヨーロッパ南部と北アフリカの雑木林と乾燥した林地の小さな低木(Weblio英和辞書)、小さなバラのような黄色または白または赤みがかった色の花を持つハンニチバナの多数の変種の総称(英ナビ!辞書 英和辞典
 Incense:お香、薫香、抹香等

Olfactory accident:アクセント(直訳:嗅覚事故)
 Rosemary:ローズマリー

宇宙猫の香りがどれなのか、私には分かりませんでしたが……
今後香水沼に浸かり続けるにあたって、原材料として表記のある3つは気にしてみようと思います。ミルラ、ってそもそもあんまり聞かない気がする。


あとがき

 以上の全て、一個人が趣味で、ほんとうに「覚書」として残したものであって、あなたが香水をワンプッシュした時の印象はあなたのものです。
 筆者はムエット(試香紙)で感じる香りと現物の香りを全く異なるものと感じるタイプなので、あなたにも同じことが言えるかもしれません。
 中々ハードルの高い、機会の少ない部分はありますが、香水は「香り」そのものだけでなく、吹いた時、その後の変化、それが誘起する自分の感覚などを味わう「体験」としての側面もあると、私は思い、楽しんでいます。

 こういったメモ書き、覚書が、業界や担当者さんの利益を損なうようなことがあった場合、私の望むところではありません。ご連絡いただければ非公開などの対応を行います。お手数ですが、よろしくお願いします。

 どこかの誰かの思考の肥やし、体験の助けになれば幸いです。

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