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慰安婦は戦地で稼いだ金を持ち帰ることができなかったのか、というお話について

慰安婦は無給で働かされていたとか、戦地で稼いだ金は持ち帰れなかったとか、故郷に送金させてもらえなかったという主張をする人がいるのよね。
それホント?というお話。

「1942年6月南方総軍軍政部総監部「本邦向送金取締規則」では、「南方占領地域に在りては軍政部の許可を得くるに非らざれば本邦(内地、朝鮮……)への送金を為すことを得ず。」として、南方と日本との貿易以外の資金移動を厳格に遮断した」と堀和生が言ってる!だから慰安婦は朝鮮に稼ぎを持ち帰ることができなかった!

ふうん。じゃあ、その本邦向送金取締規則を読んでみましょう。
『本邦向送金取締規則改正の件』(昭和18年9月9日)(アジ歴A17110516500
第1条で南方占領地から朝鮮を含む日本国内に送金する際は、軍政監の許可を受ける必要があることを規定するとともに同条但し書きで、例外を規定している。
その第5項には「本邦ニ在ル家族ノ生活費ニ充ツル為、奔放ニ在ル家族ノ教育費若ハ医療費ニ充ツル為又ハ本邦ニ於テ支弁ヲ要スル保険料ノ支払ニ充ツル為、一箇月ヲ通ジ各二百円ヲ為ストキ」と、生活費その他の必要経費を送金する際は、月額最大600円までの送金は許可が不要とされている。
故に、慰安婦は「家族の生活費」という名目だけでも月額200円、年額2400円は無許可で送金できたことになる。残念、送金できます。(笑)

さて、月額200円、年額2400円というのがどの程度の価値か、というお話。『本邦向送金取締規則改正の件』が示された昭和18年を例に取れば、『昭和十八年・勅令第六二五号・大東亜戦争陸軍給与令』(アジ歴A03022851800)28コマ目の「第1表 俸給」にある陸軍少佐の二等に相当することになる。つまり、慰安婦は最低でも中堅以上の陸軍少佐の年収に相当する金額を家族の生活費として無許可で送金できたということである。
これを現代に単純に当てはめると、自衛隊の俸給表によると陸上自衛隊の3等陸佐の俸給が約32万円から48万円であり、その中間値より上ということは月額40万円、年額480万円以上ということになる。
けっこう無許可で送れますよね。

それを超える額は許可されなかったんじゃないか、というお話ですが、さて、みんな大好き『ビルマ・シンガポールの従軍慰安所』を見てみましょう。
昭和18年1月24日の記述に「野戦郵便局に送金をしに行ったら、兵站司令部の許可が必要だと言われ、同司令部へ行って副官に言ったら、毎日 500 円以上は送金できないという。青鳥食堂へ行って主人の大山氏に会ってみた。銀行送金は多額でも大丈夫だが、軍政監部の許可が必要であると言われ、同監部に行って話してみた。 銀行で許可用紙を得て申し込めばいいという。」という記述があり、多額の送金には軍政監部の許可が必要であったことがわかる。

さて、では送金できなかったのかというと1月24日の時点で「銀行送金は多額でも大丈夫」と言っているので送金できることは自明ではあるが、一応確認。

昭和18年9月6日
南方開発銀行に寄って送金許可申請の手続きを提出 し、検疫所に行って検疫に対する防毒、予防接種を済ましてから、細菌研究所に行って検疫 をし、インセンの一富士楼の村山氏宅に戻り夕食を食べた。」

昭和18年9月 7 日
「朝飯も食べずにラングーンの南方開発銀行に行き、送金の手続きを済まして、正金銀行で釜山の家内の弟の嫁である山本○連氏に弔 慰金として受け取った金500円を送った。

月額200円を超える送金の許可がサクッと出て送金をサクサクとやっております。

これは慰安婦の金ではない!というかも知れませんので、慰安婦の送金の記録を見てみましょう。これも同じ『ビルマ・シンガポールの従軍慰安所』から。

昭和19年5月31日
「正金銀行に行って、金川○玉の送金許可申請を提出し、眼鏡店に行って、先日注文した眼鏡を受け取ってきた。」

昭和19年6月10日
金川○玉の送金許可が下りたと正金銀行から通知が来た。」

昭和19年6月12日
「朝飯を食べて横浜正金銀行の支店に行き、金川○玉の送金許可書を貰ってきた。」

昭和19年6月14日
「朝食後、横浜正金銀行に行って、帰郷した金川○玉の送金をした。中央郵便局から大邱の家内に600円の電報為替を送金した。」

申請から送金まで2週間です。送金できてます。
申請している以上、無許可で送金できる限度の月額の200円は超えてるんでしょうね。まる。

さて、慰安婦さん、どれくらいお金を送ってたんでしょう?

昭和19年11月24日
正金銀行に金○守の送金許可申請を提出し、中央郵便局で李○鳳の送金をした。」

昭和19年12月1日
横浜正金銀行に行って金○守の送金許可書を受け、特別市食品課に行って金○愛の転出に因る異動届を提出した。」

昭和19年12月4日
「正金銀行に行って金○守の許可済みの送金 1万1,000円を送金してもらった。」

月の無許可送金限度額200円の55倍の金額をサクッと送っております。(笑)

で、戦地ではインフレがー実際の価値はー!というお話がありますが、ですね。
本邦向送金取締規則改正の件』って現地通貨のお話なんか1mmもしていない規則なんですよ?この規則、日本円での制限額のお話しかしてないんです。つまり、送金額ってそういうことなんです。(にっこり


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