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オモニの話

 天国のオモニが帰ってくる夢を見た。現世の親友たちが、何度も名前を呼んでくれたから戻れたらしい。

 天国での好きなテレビ番組の話を聞かせてくれた。北と南のアイドルたちが、順番に手にしたダーツを打ち込みながら、済州島から白頭山まで、手を取り合い進むというコーナー。ゲストに招かれたアボジが、平壌冷麺を練り続け、ダーツと麺が刺繍のように、朝鮮半島を一つに結び繋げる演出。まさに統一冷麺。目が醒めたら、娘が自分に抱きつくようにして眠っていた。

 6月15日、快晴。親族25人が集まり、オモニの納骨式を行った。霊園の墓守の人が、こんなに立派なお花やお供えは初めて見た、と話していた。2週間後、妻と娘の家族3人でお墓参りに。広がる青空の雲の隙間から、光が地上に差していた。娘の質問に、「あれは天国のハシゴと呼ぶんだよ。ハンメが会いに降りて来ているんだね」と説明した。

 先日、妻が予約してくれた美容室で、受け持ってくれた人が、たまたま生前の母の担当者だった。「よく息子さんの、話をしていたんですよ。お店を継ぐことになった話を、とても嬉しそうに話していました」

 一緒に働いた6年間、少しもそんな素振りは、見せてなかったのになあ。ふいに、こみ上げるものがあったので、じっと目を瞑り、ハサミの音を聞いていた。

※朝鮮新報「それぞれの四季」に掲載されました。

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