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元祖平壌冷麺屋note(173)

先日、冷麺ライターの一人者である金才順氏がご来店した際、4代目のチャン・スギさんですね? 初代のチャン・モラン氏にそっくりです、と唐突に言われた。

朝鮮新報の連載「冷麺物語」で、元祖平壌冷麺屋が紹介されたのは、10年前だった。

初代・張模蘭さんは、1903年、平壌生まれ。幼い頃に両親を亡くし、祖母に育てられ、冷麺屋の小僧をして家計を助けた孝行者だった。1920年代の初め、平壌ではあちらこちらに冷麺屋が店を構え、人々は祝い事があるたびに縁起の良い食べ物として麺を好んだ。「大同江よりなが~い麺を打ってください」と注文したという。24歳のときに同郷の全永淑さんと婚約した張さんは、植民地支配が朝鮮半島を覆う中、生活の場を求めて、1929年に海を渡った。たどり着いたのは、平壌出身の人が多く住む神戸の町だった。

曽祖父に似ていると言われたのは初めてだったので、父とはクローンですけどね、と定型文で返答をしてしまったのだった。

20年前、親族の大集合するチェサで、冷麺屋の一代記を書いてみないかと、提議されたことがあって、その時は教員生活の多忙な日々を送っていたから、場を濁してしまった。

けれども、いつか、それだけの力量が備わったときに実現させたいと思っている。

「サマータイムレンダ」(全25話)を観終えた。時によって上書きされ続ける夏の記憶。君だけがいない街、オール・ユー・ニード・イズ・キル、隔たる世界の二人、ハッピー・デス・デイ・・・。

上書きされる歴代のループ作品たち。

「おかえり、ただいま。」帰りの電車待ちで、最終回での、変わらない日常の更新された「美しさ」に、ちょっと泣いてしまった。

平壌冷麺を練り続けた先代たちの記憶も、日々、レンダリングされているのだ。

創り手のだけではなく、それを食べてきた人たちの記憶の蓄積と伝承によって。


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