中村俊輔を見に来て、佐藤謙介を語る

そうだ、サッカー観戦に行こう

「中村俊輔を観に行こう」

転職して2年、同僚を誘ってサッカー観戦を企画した。
試合は7/31(水)の横浜FC対レノファ山口。
19時30分キックオフと、仕事上がりでも間に合う良い時間の試合。

中村俊輔が本当に出場するかは微妙だったが、それでも観に行くと言ってくれた人が3名もいた。

「中村俊輔って横浜FCなの?」

「カズは出るの?」

「サッカー観たことないんですけど大丈夫ですか?」

「皆川佑介が好きです」

様々な質問を受けたが、3人とも横浜住まいということもあり、高いモチベーションで観戦に向かった。

試合が始まり、私はレノファ山口寄りの立ち位置で観ていたが、気づけばある選手を目で追っていた。

彼の名は「佐藤謙介」

大卒で横浜FCに加入後、ずっと横浜FCでプレイしているボランチで、30歳の選手だ。

得点が多く入る試合で、FWレアンドロ・ドミンゲスが高い技術を見せ、FWイバが強さと得点力を示し、MF中山とMF松尾の両翼がサイドを切り裂くという横浜FCにおいて、冴えない中年男が同僚に「横浜FCの8番(佐藤謙介)を後半から注目してみて」と語る様はマニアックなそれ以外の何者でもなかった。

私もそれほど多く彼のプレイを観たことがあるわけではないのだが、私が持つ彼に対するイメージと、この試合の中での彼の振る舞いについて語っていこうと思う。

サガン鳥栖サポーターだけど。


佐藤謙介という選手(のイメージ)

佐藤謙介選手を知らない人もいると思うので、まずはJ2の出場歴から見ていく。

【成績】※いずれも横浜FC
2011年 32試合 0ゴール
2012年 28試合 3ゴール
2013年 30試合 1ゴール
2014年 19試合 1ゴール
2015年 35試合 1ゴール
2016年 38試合 3ゴール
2017年 40試合 4ゴール
2018年 37試合 5ゴール

毎年コンスタントに試合に出場しており、来年(もJ2なら)J2通算300試合に到達するであろう選手である。

歯に衣着せぬ言い方をすると、Jリーグの中でも「特殊」な横浜FCという環境においてこれだけコンスタントに出場しているというのは非常に珍しいし、カズに次ぐ最長在籍年数であり、数少ない生え抜きでもある。
※違ってたら誰か指摘してください

当然加入した2011年から現在に至るまで様々な監督がいて、補強もあれこれ行われたが、佐藤謙介はレギュラー格を守り続けた。

ヴィッセル神戸も大型補強からのなんだかんだ最終的には田中英雄がレギュラーになり、年1回ミドルを決めるという慣例行事があっだが、佐藤謙介はそれとは異なる理由で起用されていると考えている。

この試合を観ていても、その理由をしっかりと確認できた。


佐藤謙介の「やり方」

佐藤謙介は常に周りを見ている。

自分が視界に入る仲間にボールが入れば、その時点ではいるべき場所に移動し、出すべき場所を手や声で仲間に示している。

当たり前のことに思うかもしれないが、佐藤謙介はこれを90分繰り返している。
淡々と、そしてずっと繰り返している。

そして、常に周りを見ているからこそ、自身にボールが入った際には出すべき場所を決めており、ほぼワンタッチ、時々ツータッチでシンプルにボールを出す。

持っている時間は2秒もないだろう。

同僚たちに佐藤謙介に注目するように言うまで、同僚たちは佐藤謙介を認知すらしていなかった。

だが、後半に佐藤謙介に注目しろという中年男の言葉を聞いた同僚たちは

「8番(佐藤謙介)シンプルにやってるからリズムが途切れない」

「周りを見てずっと指示してる。チームを回してる」

などの発言をしていた。

後半、佐藤謙介が短い間に5回ボールに触れる機会があったが、いずれもワンタッチで回し、体力が落ちてきたレノファ山口のスライドが間に合わない状況を生み出していた。

試合のMVPはハットトリックを達成したFWイバ、MIPはMF中山が受賞していたが、チームを機能させたという意味では佐藤謙介なしではなし得なかった勝利だと思っている。


横浜FCの「黒子」として

先述の通り、横浜FCは特殊なクラブだ。

中村俊輔を補強し、より特殊さが増したと言ってもいい。

その中村俊輔(怪我明け)を途中交代でボランチ起用した際は「オイオイ大丈夫か?」と思ったが、佐藤謙介は何も変わることなく、淡々とやるべきことをこなした。

ワンタッチでリズムを崩さず正確に回す。

仲間にシンプルに指示を出す。

攻撃も守備もいるべき場所にいる。

接触プレイで肩を痛めた感もあったが、試合後の挨拶まではそれをあまり出すこともなく、本当に淡々とプレイした。

チームとしてやるべきこと、必要なことを淡々と行い勝利に貢献する佐藤謙介こそ、横浜FCという特殊なクラブにおいて必要不可欠なピースなのだと考える。

こういう黒子的な選手がいないと、特殊なチームは回らない。

特殊とは少し違うかもしれないが、私が応援するサガン鳥栖も、池田圭という選手の存在があり、J1昇格、躍進、残留を成し遂げたと考えている。

池田圭について語る場ではないため詳細は控えるが、その池田圭という選手を見てから私はこういう選手が大好きになった。


選手からもらう「明日への活力」

ここまで佐藤謙介について語ってきたが、同僚にこの選手に注目して欲しいと思ったのは、私がこの手の選手が好きだからではない。

サッカー観戦初めての人が多い中でそんなマニアックでリスクが高い語りはさすがにしない。

今回誘った同僚や私は、会社では花形的な部署ではない。

花形的の部署から下りてくるタスクをこなし、実現に向けて準備をし、改善を回す部署である。
裏方役、いわゆる黒子だ。

誰しも花形的な役割に目がいく。

この試合で言えば、FWイバ、FWレアンドロ・ドミンゲス、MF中村俊輔などなどだ。

普段黒子的に働いている私たちだってそうだ。彼らをつい目で追ってしまう。

黒子的な役割の自分たちをもっと見て欲しいと思いながら、舞台が変われば黒子には目を向けず、花形を目で追ってしまう。

だが、佐藤謙介がいるからチームが回っている。

前半途中で佐藤謙介の存在に気づいた私は、彼に自分たちを重ねた。

彼が試合の中で地味ながらも重要な役割をこなすのを見て、彼の貢献、そしてそれがもたらすチームの勝利が、自分たちの存在を肯定することにつながるように見えた。

そして、その気持ちを同僚と分かち合いたいと思ってしまった。

私が同僚に伝えたのは「横浜FCの8番がチームを回しているから、注目してみると面白い」ということだけ。

どれだけ伝わったかは分からない。

でも、同僚たちにJリーグを楽しんでもらえたのだから、まずはそれで良かったのかなと思う。

自分は楽しんだというか、明日からまた頑張ろうと思う活力をもらった。

佐藤謙介選手から。

ありがとう。

自分もまた、やるべきことをしっかり頑張ります。

試合観に行って良かったです。

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