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政策と社会的インパクト|20-21週目|インパクト投資奮闘記

先日、6ヶ月のまとめエントリを足早に書いたが、少し巻き戻ってまだ働いていた頃の思い出を記してみようと思う。
2/27-3/10週

新ファンドの投資方針決めのためのリサーチ

インターンの子とリサーチプロジェクトのまとめプレゼン。
新しいファンドでケアセクター(高齢者、障がい者、児童養護施設、病院、保育園など)について投資することが決まっている。その中でどんなサブセクターに投資するべきか、投資する時のセクターならではの要素やKPIを調べて、候補の会社をリストアップすることで、具体的な投資の方向性を決めていくための仕事。

私は英国のケアセクターについてほぼ無知の状態だったので、よく調べたし、投資候補のリストを100社近く集め、7社ほどはケーススタディとしてまとめた。なんとか仕上がって良かったなと思う。
もちろん全部を調べ上げる時間はなく、浅く広くと、特定のサブセクターについて深く調べた。

ただ、銀行にいた時ならもっと効率的に調べられた。というのも、銀行では会社として業界レポート(有料)を購入していたのでそれを読めば良かったが、今の勤務先にはそんな余裕はないのでゴリゴリに調べるか、友達ネットワーク(院生)を使ってそのようなレポートに辿り着くような方法など中小企業ならではの悩みを感じた次第。

他の仕事と並行してやっていたものの数ヶ月と思っていたよりリサーチに時間がかかり、今後リサーチ業務をすることになった場合何に気をつけるか、周囲とのコミュニケーションの頻度など、失敗から学ぶことが多いなと感じたプロジェクトだった。
必要以上に感謝されたり褒めてもらったし、私のリサーチや候補リストが参考になってこれからあるインパクト投資ファンドが投資をすると思うとなんだか不思議だ。

政策と社会的インパクトの関係


ソーシャルインパクト投資に関わり始めてから、社会問題に向き合う時間が増え、政治が社会に大きく関わっていると(当たり前のことだが)感じる機会が増えた。
国の政策によって投資先の収益モデルも変化するし、社会的企業やチャリティーは国や企業が支えきれなかった社会課題解決のために働いていることが多いので政策が変わると事業自体のニーズが激減するかもしれない。

例えば英国では(日本ほどではないが…)高齢化が深刻な問題になると言われているのに庶民が入れる老人ホームの数が圧倒的に不足していて、国からの財政支援も需要に対して大きく不足している。
老人ホームに入って暮らすような介護が必要なのに入れない人がたくさんおり、自宅介護などで家族も悩んでいるという社会問題があるといえる。この課題を解決するために、チャリティー業態(ハゲタカファンドに買われたような利益吸い上げ型ではなく、上がった収益は株主のためではなく施設のこれからの投資や従業員の給与に反映させる)の老人ホームにより投資しようという考えがあるのだけれど、これも国がもし国民全員必要な人は老人ホーム入れます!とかいい始めたらその投資方針は変わるだろう。
言い換えると、投資の社会的インパクトを考えるときに、その社会課題を「ど何人の人がどの程度困っているか」を考えるが、その程度感とか規模感は国のルールが変わるとときに一緒に変わるなぁと思った。

余談だが、現在のルールではロンドンなどイングランドに住んでいたら貯金が£24k(380万円)以上ある場合、介護レベルがいくら高くても(病気を治すために入院や治療は受けられるが)国から介護の補助などは受けられない。
老人ホームに入りたかったら全額自費で、ロンドンの平均費用は1週間で£1,031(16.5万円)なので月70万円ほど。つまり貯金を食い潰して、食い潰す貯金がなくなったら国からやっと支援がもらえる仕組み。
流石にこれは酷いと今年の10月からルールの改正(最低貯金額の引き上げ、ケアコストへのcap付)が行われるが。。。
ちなみに人手不足が深刻なので、昨年ついにビザの要件を緩和して外国人を呼び込むことになった。

ギャップイヤー


このプロジェクトを一緒にやってくれたインターン生はドイツ人のギャップイヤーをしている方。銀行員が長いと自分が万年下っ端であることに慣れているので、10も歳が離れた子が自分から学ぼうとしてくれる状態に狼狽した。
高校を卒業して大学の間まで少し自分の時間をとっていて、色んなところでインターンとして働きながら自分の関心を確かにしたり、少し心を休めて、大学に出願しているようだ。
高校の間は勉強して少し疲れたから、自分のことを考える時間が欲しかった。大学に入るために専攻を決めないといけないのに何やりたいか全然わからなかったし笑」と笑って教えてくれた。
私も高校時代は部活に課外活動に受験勉強に結構必死だったけど、考えたり休む時間を能動的に取ろうという意識はなかった気がする。
世代もお国柄も個性も影響していると思うけど、自分のために余白の時間をとってwell beingを考えながら生きる選択をしている彼女を尊敬した。

英語が堪能で驚いたけどヨーロッパスタンダードでは普通なのかもしれない。上手ですねなんてきっと失礼だから言わないけど。
私は英国も六年目(!)でだいぶ英語に慣れたものの、誰が聞いても日本語アクセントは残っているし、英語のアニメやコンテンツも観てこなかったから雑談で話がわからないこともよくある。
もっと若い方から学びたいし、若い方の時間を貰えるような大人になりたいと襟を正す気持ちがした。

ではでは。こちらはイースター休みで4連休。どこも激混みだけど、エネルギーチャージしたいと思います。

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