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迷宮の世界へ6


「試作のゲームプレーヤ―は3人ですね」「そりゃそうだろう、知名度はないんだから。3人もいただけでありがたく思わなければ。HPは削除したかね。」
「そうですね、試作で実験しなければなりませんからね。3人見つかって良かったです。HPは削除しました。」
「あぁ。タカという男はどこに消えたんだ?」
「博士曰く、ゲーム内でやられたら体ごと消えるようになっているので現実の世界では行方不明扱いになるようです。」
「行方不明か。」
「残りの2人が10頭倒し、無事現実の世界に帰って来られれば合格ですね。」
「ははっゲームの中に入るゲームなんてこの世にここにしかないからな。博士はすごいのを作ったな。」
「ええ。びっくりです。」

しかし暑いな。現実では8月だ。ここも8月か?猛獣より水場を探さなければならない。サキはどうしているだろうか。まぁ7頭も狩っているし心配はいらないだろう。自分に集中だ。

サキは1日ゆっくり過ごしたお陰で体が良く動く。今日こそ3頭仕留めるぞ。その時、突如後ろから猛獣が吠えたのが聞こえ5頭がサキを囲った。何これ。囲まれたわ。斧をしっかり持ち、来たものから倒してやる。5頭なら3頭倒して即帰れるわ。これはチャンス。えぇぇい!と斧を振りかざしたが外れた。素早い。今までと違うわ。もう一度。こちらから。えぇぇぃ!当たったわ。1頭が消える。後2頭。キャッ…猛獣の爪がサキの背中をひっかいた。熱いものが流れ痛い。これはタカの二の舞に。いや治療は現実でやれば良いんだ。この機を逃さないわ。全身全霊を込めて2頭をやっつける。ええぇえい!ごっつん!地べたに当たる。逃がさないわよ。えぇっい!振りかざすごとに血がどくどくと流れるのがわかるが止められない。えぇえい!猛獣はサキを囲み、サキを襲おうとしている。早くしないと。サキは焦った。行くわよ!猛進して、ええっい!首の根元にに斧が刺さってしまった。あれ、とれない。これがないと。その時サキの腕にもう1頭が噛んだ。キャッ!その勢いで斧が首に食い込みめでたく9頭狩れた。サキは腕の肉が千切れそうになっている。手負いだが、後1頭なら頑張れる。こっちから行ってやる。えええぇっい!どん!運よく首に入った。これで帰れるはず。だんだんサキが消えていく。もう帰れるんだわ。よくやった。うれしくて涙が出てきた。

サキは自宅の椅子に座って目覚めた。痛い。背中と腕が……お母さんに言わないと。心配しているわ。早く下に降りないと。あれっ意識が遠のく。このままじゃお母さんっ。サキの身体が消えて行った。

「博士、現在一人が負傷しゲーム内で消え、もう一人が上がりましたがゲーム内でゲームオーバーになって現実の世界に戻っているようですが。」
「それはゲーム内で負傷したのだろう。移送途中で事が切れたんだ。エラーではない。実際身体は見つからないはずだ。」

「わかりました。もう一人は奮闘中です。」

「もう少し被験者が居たらな。お前は?」

「え?あっすみません。ゲームは疎くて。また報告します。」

「はーい。」

何て怖い事を言う。いや、危険なものを売ろうとしている俺もか。

やっと小屋についた。えっ?血?あぁ。これはタカのか。いや、違う。もしかしたらサキだ。

「サキいるか?怪我を負ったのか?」サキが見当たらない。もう狩った後か?もしかしたら近くにいるかもしれない。探しに行こう。近くを見回るもいない。ここで争った形跡はある。この血は猛獣かサキのどちらかだ。サキは後3頭だったから狩って現実の世界へ帰ったに違いない。これだけの奮闘ぶりだ。そう思わなければやっていられなかった。

タカとサキがいなくなり、再び一人になった。心細い。いや現実に戻って二人と会うんだ。この前話していた時、3人とも電車で会いにいける距離だった。必ず会うんだ。これからどうしよ、猛獣が出る機会に出くわさなければならない。

うぅぅっ~。唸り声が聞こえるぞ。声がする方へゆっくり行ってみると後ろを向いている猛獣が1頭いた。行くか。そぉーっとそぉーっと。ごっつん!ありゃ、外れた。あれ、心なしかスピードが速くなっている気がする。もういっちょ行くか。おりゃ!やっぱり早くなっている。猛獣も学んでいる。だが逃げてはられない。突進していくぞ。おりゃ!ごつん!運よく首へ入った。そして消えた。後5頭だ。ようやく半分だ。えっ後ろに5頭の猛獣がこちらを睨みつけている…全頭倒したら戻れる。やるぞ!思いっきり木の棒を首に目掛け振り下した。外れるもまだだ。ごつん。タカの敵だ!ごつんごつん!猛獣が逃げようとしないならここで決着が着く。おもむろに振り下ろした。ごつんごつん!ふ~これで最後だ!ごつん!あっ消えた。ってことはここで一気に?嘘だろう?あれ俺は消えないのか?頭数を間違えたのか?

しばらく経っても消えない。確かにやっつけたぞ。もしかしたら時差があるのかもしれない。ゆっくり小屋で待とう。

「博士、失礼します。」

「何だね」

「最後の一人が10頭狩ったのですが、一向に現実の世界へ戻りません。」

「頭数を間違えているんじゃないの?」

「確認致しました。」

「そう。ならこっちでやってみたら」

「こっちと言いますと。」

「これでリセットしたら良いよ。」

「わかりました。リセットすると、現実に戻れるんですか?」

「そうだね」

「じゃ押します。」

「うん。」

ポチッ

おっようやく現実の世界へ戻れるぞ。だんだん消えていく。

目覚めると、自宅に居た。さっきまで森に居たと思わせる程、スーツはボロボロだ。やっぱり、夢でもなく、ゲーム内に入っていた証拠だ。しかしその他の証拠がない。ゲームだ。ゲームはどうなっている。恐る恐る画面を見た。ボタンを押さないように。画面にはゲームオーバーとなっている。あれ?10頭じゃなかったのか?運よく戻れたってことか?それと、ゲームはもう潰れたかのように画面が動かない。なんだこれ。それはそうとゲーム会社に問い合わせなくては。会社名しか載っていない。HPで見るか。PCを立ち上げ検索履歴から見るも無くなっている。これはおかしいぞ。何かある。しかし、住所もHPもわからない状況でどう探れば良いのか。あっタカとサキの家にとりあえず行こう。その前に風呂と食事か。久々の風呂は染みる。よく怪我もせず帰れたもんだ。他の二人も今頃。と考えた途端、また涙が出そうになった。実際会わないといけない。冷蔵庫の残りで何とか食事を作り食べた。よし、行こう。今日中に会えるぞ。

「博士、三人目はリセットして戻ったようです。」

「まだスムースに移送ができない箇所があるようだね。後で手を入れとくよ。」

「お願い致します。」

「販売はいつになるの?」

「あえーともう少し様子を見ようと思っています。」

「様子?なんの?」

「はい。現実の世界へ戻ったら戻れなかった者を探すのではないかと懸念しております。ゲーム内で協力し合う場面もありましたし、現実の世界にて再会を約束する可能性があります。その時、本人がいなかったら行方不明。ゲームが関連していると騒ぎ立てると思います。その反応を見たいと思っています。」

「説明書に書いてあるでしょ。終わるって。」

「その通りですが、終わるの意味を取り違えているかもしれません。ゲーム内では終わり、現実では違うというように。」

「まぁ勝手にして」

「はい。また報告にあがります。」

何て言う博士だ。敵に回したくない。こんなゲーム世に出したら騒ぎ立てるだろう。博士の作った物は想像を超えていた。ゲーム内に入るとは思いもしなかった。

電車で10駅ほどか。タカの家は〇〇荘でひとり暮らしだったな。ここだ。

「タカ!剛だ。開けてくれ。頼む。」ドンドン。

何度もドアを叩いた。するとここの大家らしき老人が来た。

「あなた山崎さんの友人?」

「はい。タカはいますか?」

「山崎さんね、二日前程に無断欠勤が心配で会社の方が来られて開けたのよ。居なかったのよ。家具はそのままなんだけどね。警察に届け出しをしていた所よ。」
固唾を飲んだ。まさか、
「すみませんが、もう一度部屋を開けてくれませんか」

「仕方ないわね。」

「ありがとうございます。」

タカの家にゲーム機があるはずだ。あった。画面にゲームオーバーって書いてある。これが意味するのは……。

大家に礼を言って部屋を後にした。涙が溢れてきた。

次はサキの家だ。サキの家はここから離れているが行こう。再び電車に乗り、サキの家へ行った。

サキは住宅街に住んでいる。ここだ!岡山って苗字だった。待て、未成年の少女宅に大人の俺が尋ねたらどう説明するんだ。もしサキがいなかったら犯人は俺になる。ここは慎重にいかないと。うん?電柱に……サキの顔写真がある。出会った時と同じ服装だ。探しています。と張り紙に書いてある。サキ…もやられたのか。あの時俺がそばにいてればと後悔した。

電車に揺られ自宅に着いた。何か他に証拠があれば。ふとあの赤い木の実を思い出した。ズボンのポケットにあれば、、、と思ったが無かった。これも消えたか。手がかりはゲームしかない。HPからの購入だったため問い合わせる場所もない。どうしたものか。


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