「結縄」という小説と 種苗法改正 とに思う 日本農業の危機
この記事を目にして
ケンリュウの「結縄」という短編小説を思い出しました。
「結縄」という短編は
彼の
紙の動物園
という短編集に収録されていたのです。
アジアの天空近い山に住むナン族の下に
ト・ムというアメリカ人が 商人に連れられてやって来るところから話は始まります。
村中の 植物、動物を
作物、昆虫、薬草を、次々にカメラに納め、愛想よくいろいろなことを質問し、メモを取っていきます。
縄を結んで知恵を伝承し続けていたナン族
縄の結びが知恵の宝庫です。
干魃のせいで収穫が減少していた米に変えて
新しい種籾を提供することを条件に
その結縄の内容を教えて欲しいと
ト・ムは 結縄を読みとけるソエ=ボを
アメリカに招き 縄に記された情報を
コンピューターに移していきます。
ト・ムの提供した種籾はよく実り
村の人々も飢えを凌げて喜びました
が 翌年 また ト・ムがやって来ます。
新しい種籾を売るために。
ソエ=ボは収穫したものの一部から
種籾を採取しているのでその必要はないと
断るのですが、ト・ムは言います
その種は発芽しない。
毎年 我々から種籾を
買ってもらわねばならないと。
誰かが
新しい遺伝子を、作り
その遺伝子が発明者によって所有されており、もしほかの人々がその種を育てたければ、発明者に代金を支払わねばならない。
発明者の許可なく、その遺伝子の入った種を育てようとしたら、発明者から盗んだことになると。
ソエ=ボは
「では 縄の知識を、あなた方は盗んだのでないか」
と
問うのですが、
ト・ムは
「あなたから 学んだことは 古い
保護されていない
著作権、あるいは特許権に
守られていない」
と笑うのでした。
そして、ト・ムは新たな知恵を求めてブータンに向かうというところ 話は終わっています。
2011年に発表された作品のようですが
今の日本が置かれている社会と同じものを
感じました。
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