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妊娠④ 流産

スプーンさんとのセックスを思い出しながら目が覚めた。

セックスしたい…

ん?セックスがしたい?


毎日毎朝今日はお腹の子が無事か、子宮口を確かめるのが日課だった。

いつものように寝起きに確かめる。
ん?血が出てる…

子宮口が開いてる。


すぐに検索魔になった。

5週目というのは一番出血が多い時期らしい。

生理痛のような痛みもある。


心配になって、予約をしている産婦人科に電話した。
「この時期の出血はよくある事なので、今病院に来ていただいても胎嚢も確認出来ないかもしれないので…」

看護師になだめられて一旦電話を切る。
でも椅子に座った瞬間、ドロっとたくさん出血した。

もう一度電話をし、病院を緊急受診する事になった。

休日の産婦人科。
待合室はガランとしている。
電気は消えてるけど、自然光が差し込んでいて、白っぽく明るい。
どこか遠くから産まれたばかりの赤ちゃんの声がした。

ひどく現実感がなかった。

問診票を記入し、一番奥の部屋に灯りがともり、呼ばれる。

「ショーツをとって診察台にお登りください。」

診察台に座ろうとしたらまたドロっと出血をし、床を汚してしまった。

先生の診察が始まる。

「出血が多いな…」
胎嚢を確認してるのがわかる。
でもそれらしきものは映らない。

卵巣も確認。子宮外妊娠ではなさそう…と。
また出血で床を汚してしまう。
ごめんなさい、ごめんなさいと何度も謝った。

隣の診察室でお話ししますからね、
床の事は気にしないでください。と看護師さん。

先生がいる診察室のテーブルには、
4枚のエコー写真が並べられていた。


化学流産と呼びます、と先生は話しだした。

妊娠らしき反応はあったと言う事で、妊娠はしかけたんだと思います。
でも出血が始まってるということで、あと数日で生理になるのかな…と経験上。

先生はしっかりと目をみて話してきた。


そして今後の診察をうちの病院にするか、
かかりつけ医になさるかはおまかせします…と。
話しが終わると、
看護師さんが別室で話しましょう、と促す。

たぶん私が泣き出すと思ったんだろう。

でも私は涙も出ない。

お会計の話、今後の診察の話をして、
1人になった瞬間、私は顔を覆った。
やっぱり涙は出ない。

心細い…。


全ての事情を知る38人目さんにラインする。
(彼は日記を読んでいる。)

👩‍🎓:妊娠、ダメになっちゃった…。

👨:よかったのか悪かったのか、もはやなんと言うべきか分からないけども
気を落とさないでほしい。

日記は読んでるけども、結局現状はどこまで知られてるの?

👩‍🎓:旦那さんにも子どもにも言ってない、
ママ友さんに言っただけ…

👨:そうか。そういう意味ではこじれずに済んだのは良かったのか…

👩‍🎓:そうだね…

👨: ひとりで背負う羽目になってしまったとはいえ話聞くくらいしかできないけども、なんかあれば連絡くれ。

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ほんの数日だったけど、赤ちゃんがやってくる夢を見た。名前を考えたり、子どもがお兄ちゃんになるのかと感慨深かった。

街で赤ちゃんを見れば微笑んだ。

一方でスプーンさんと私どちらに似るのだろうと心配にもなっていた。

そんな自分の運命を察知して、この世に来る事を赤ちゃんは諦めたのかもしれない。


スマホの画面にポツポツと水滴がつく。

私が泣いてるんじゃない、

晴れてるのに雨が降っていた。

こんなにいい天気で、雲も少ししかないのに。

雨が降るって、どんだけ…



私は地面に吸い寄せられた。

私は自分で死ぬ勇気はない。

だったら誰か私を殺してくれ。










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