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ティンダーと私と、私の今日の日記


新しい洗濯機が欲しいけど、
それを言うとこの先も長くこの人と生活を共にするのかと思ってしまってずっと言えないでいる。

私は2019年から、主婦という立場でありながらマッチングアプリの沼に溺れている。

もう6年目。大ベテランだ。

家庭での虚しさを埋めるために。
離婚したいの一言が言えないために。
山のようにドブのように嘘を吐いて時間を作って男の人と会ってきた。

罪悪感はもちろんある。
…いや、ないのか。
ないからこんなに数字を重ねてきたのか。

もしこの日記を旦那さんが読んだら?
バレてしまったら?
私は開き直って離婚届けを突きつけるだろう。

後先考えずに。

日記の数字が増えるたびに
それは男から愛されなかったという証拠記録でもあるので
また記録更新したなと、自己嫌悪に陥いる。

既婚女性と本気で向き合おうという男はいないのだ。

38人目にこの間、私がもし離婚したら貰ってくれないか?と半分冗談で言った。
そしたら、

彼は真剣に悩んで、
「金なら貸せるけど」
と答えた。


45人目に、私たちって付き合ってるの?と
聞いてみたら、

"結婚してる相手と付き合う"って
なんなのかわかんない。
形式めいた名称のある関係で考えたことはないけど、強いて言えば進展しちゃいけない恋愛関係みたいなイメージでは捉えている気はする。

という答えだった。


私の事、貰ってくれる人なんて
後にも先にも、
今の旦那さんしか現れないのかもしれない。

だけどその旦那さんとはもう肌を重ねる事が出来ない。無理だ。
大きな矛盾。

私はもう積み上がってしまったテトリスみたいに身動きが取れなくなっていた。

あと一つ積んでしまえばゲームオーバーになる。


私は自活したくて、今日はライターの仕事に
幾つか応募した。
でも返信は来なかった。

私は専業主婦。
実績もない、そんなに世の中甘くない。


心も体も冷える。
雨が降ってるから。

そんな霧雨の中、

今日は占い師と会った。

占い師は弟子を連れていた。

「休みだ、わーいということで
昨日の夜から飲んじゃってまーす」

占い師は半袖を着ていた。

「酔っているのでちょうどいいでーす」

「え、昨日から今の昼までオールで飲んでるんですか?」

占い師は酒豪だ。

この占い師はティンダーでマッチしてから、たびたびその時私が関わっている男の人について
アドバイスをくれる存在だ。


お時間ありますか?という事で
今日は渋谷で会う事になった。

私は実は警戒していた。
前回会った時占い師とはエロいことをしてしまったから、
またそういう展開になってしまったら
どうしようと。

そう思っていたけど
穏やかそうな優しそうな弟子が
ちょこんと横にいて

「今日は勉強のためにコイツにも
同席してもらいます。いいですか?」

私は大丈夫です、と答える。

占い師は相変わらず饒舌で、
カラオケボックスの店員のお兄さんに向かって
イケメンですね!お兄さん!と思い切り褒める。

たしかにびっくりする程イケメンだった。

ティンダーだったら右スワイプする。


占い師はこうして褒めておく事であとあとサービスしてもらったりする。徳を積むんです。
そうすると運気がドンドンよくなりますよ、
と私にコソッと話しかけた。


私は6月7月に超モテ期が来るらしい。

もう来月ですよ。

僕の占い、今まで当たってるでしょ?

と聞かれ、うーん、まぁ…と答える。

確かに外してはない気がする。

でもキチンと占ってもらった感じがしない。

いつも話が長すぎるから。


弟子に私の説明をする。
この人はね、波瀾万丈の人生を送ってきてて
普通の人だったら死んじゃうくらいなの。
それを生き残っててすごい珍しいケースなの。

これから先もすごい運気の大きな波に揉まれると思うんだけど、乗り越える度に強くなる。

そして有名になって大金を稼ぐようになったらね、おこぼれをね、もらおうと思ってるんですよね?

と占い師は私に握手してきた。

私は出された右手をはぁ…と握り返した。

アルコール飲み放題コースというのにして、
レモンサワーで乾杯をする。

よろしくお願いします…とゴクリと飲む。

私はマッチングアプリやってる割に人見知りなのだ。まだ弟子の存在に慣れなかった。

私は現状について電話でも話していたけど、
改めて簡単に説明した。


















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