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Day21】猫保護家の死

1.一本の電話

残された保護猫のうちの1頭。 クリちゃん。

会社で仕事をしていると、一本の電話がかかってきました。
いつも明るいその女性の声が沈んでいましたので、まさかその連絡かと咄嗟に思いましたが的中でした。
「本当にお世話になりましたが、姉が本日亡くなりました。。」

服部緑地へ続く通りを挟んで、アイデンの向かいには6件の1階テナント型戸建てが並んでいますが、昨年の5月、そのうちの1件でテニスショップを営んでいた80歳のNさんが脳内出血で倒れました。
お子さんがおられず、アメリカ人である元夫は本国へ帰り、1人で暮らしていたNさんは倒れてから2、3時間発見されず、病院へ運ばれてから亡くなるまで1度も目を覚ます事はありませんでした。

電話を切りしばらく呆然となったあと、誰もいなくなった向かいのテニスショップに手を合わせました。。

2.たった1人の保護猫活動

Nさんと最初に会ったのは2016年にアイデンを移転した際、近隣への挨拶をしに行った時です。
テニスショップでありながら、店の奥のスペースに猫が20頭近くおり野良猫を保護している事を知りました。

ご高齢の一人暮らしで、会社の向かいという事もあり、またこちらは犬事ですが保護に犬も猫も関係ありませんので、フードを持っていったりエアコンを提供したり色々とお手伝いをしました。

ただその時点で70代後半であり、ある日Nさんに言いました。
「Nさんが元気なうちはいいけれど、縁起でもないですが、もしNさんに何かあったらこの猫ちゃん達はうまく譲渡につながらないと殺処分になりますよ。そろそろこの子たちの譲渡を考えていきましょう。」
そして僕の知り合いの犬猫保護をされている方やペット信託を扱っている行政書士さん等に来ていただきNさんと共に話もしましたが、話が終わってテニスショップを出た後に知り合いが口を揃えて言ったのは、Nさんは猫を保護する事を生きがいとしているんだね、という事でした。
譲渡につなげてもまた増えるんじゃないかと。

3.本当に訪れたその瞬間

2階にハシゴをかける消防隊員。
辺りは数十人が集まり騒然となった。


そしてとうとう恐れていたその瞬間が本当に訪れてしまいました。

夜の10時ごろ、僕が会社に1人残り仕事をしていると救急車、消防車、パトカーが何台も会社前の道に止まりました。
僕の会社の前にも2、30人の人集りができNさんの住む2階の窓に消防隊員がハシゴを立て始めました。
鍵を閉めたまま2階に倒れているようで、2階の窓からレスキューが入り、身動きひとつしないNさんが担架で運ばれていきました。

そしてその瞬間から、残された8頭の保護猫の世話をする人はいなくなってしまいました。

残された保護猫たち。
サンボウ。
ヒット。
最後は触らせてくれましたが、臆病な子でした。
ヌキ。

次の日、Nさんと猫はどうなったかと朝早くに行ってみますと今回僕に電話をくださった妹さんがおられ、伊丹市という離れたところに住んではいますが事情が事情ゆえに2年ぶりにここへ来たと言われていました。

Nさんは意識不明という事ではありましたが一命は取り留めたと妹さんから説明を受けました。
猫ちゃんはどうしますかと訊きますと同じく70代のその妹さんの顔が曇りました。
妹さんのご主人も認知症の状況で毎日ここに世話に来る事はできない。。

アイデン総出での保護猫の世話が始まった。
100日も経てば、自分たちの猫のようになる。

そこから100日に及ぶ8頭の保護猫の世話と捕獲と譲渡活動がアイデンメンバーによりスタートしました。

続きは次回で。

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