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【憑(の)り移れるのは一分だけ。】


ギギキキッッーーーーーーーィッッっつ!!!!!!! 

不敵に笑みを浮かべる運転手。
彼らを乗せたバスは崖の底へと転落(てんらく)していった。

深夜 緊急で運び込まれた病院内。

「先生。どうして助けてくれなかったんですか。?」

多くの関係者が集まるなか執刀医に泣きつく一人の男。
周りの家族や監督コーチたちは皆 呆然としている。

「かれら七名は、ほとんど”即死”に近い状態でした。
もうここに運ばれてきた時点で、救う余地は無いに等しい状態でした」

奥歯を嚙みしめ、淡々と状況を説明する執刀医。
駆け付けたチームメイトたちも皆 
突然の”仲間の死”にただ呆然とするしかなかった。

目の前に広がる異様な光景と
変えうることの出来ない現実を前に 誰かが,口を開いた。

「 宝たちが死んだ 」

バスに乗っていた生徒七名 即死。
うち運転手一名重体。 


ブーーーーーーーーー!!!!!!!

張り裂けるブザーの音とともに、目の前の試合は終了をむかえた。

【0‐187】

あまりの”大差大敗”に体育館内ではどっと笑いが巻き起こる。
腹を抱えて爆笑するスタンドの観客たちや他校の生徒たち。

大勝をおさめた選手たちは、まるで何もなかったかのように、
平然と体育館内を去っていった。

笑いが巻き起こるなか、その”ど真ん中”で立ち尽くし、
うなだれる選手5人。

「ちきしょ、、、とんだピエロじゃんか、、俺たち、、」

「ほんとだよ、、もっと気遣ってくれたって、、笑われすぎぼくたち。。」

顔を真っ赤にして俯く選手5名を前に、
スタンドからまたどっと笑いが起きた。
そのスタンドからは罵声(ばせい)も飛び始める。

「やめちまえっつ!!! こんな底辺バスケっ!! 
”万年最下位”がどの面下げて試合してんだよっつ!」

なぜか体育館内では、罵声と爆笑。 この状況が同時に起きていた。
あまりの言われっぷりに、、ついに泣き崩れてしまう選手1名。

他の4名で床に泣き崩れる1名を起こし支えると、
顔を真っ赤にさせながら、
”最悪な空気”となるその体育館に背を向け、出ていった。

監督1名 担任の先生 (バスケ素人)
コーチ0名 レギュラー選手5名のみ。 控え選手0名

指導においても、人数においても、その実力や才能においても、
この湘下高校(しょうか)バスケ部は、もはや”最悪”そのものだった。


高校の体育館近くにそびえる満開の桜。
その分厚い一本の桜の木にもたれかかり座る一人の少年。
彼は真上にある満開の桜を、不思議そうに見上げていた。

「へぇー俺って 
成仏(じょうぶつ)できなかったんだ」

少年は悲しそうに満開の桜を見つめていた。


体育館裏、一人の少年を取り囲み見下す同級生4人。

「なぁ、もうバスケ辞めちまえよ?
この高校の恥(はじ)なんだよ、おまえ。」

「あんな無様な試合しといて、よくこの敷地に入ってこれるよな?」

ニタニタと笑みを浮かべて取り囲む。
少年は申し訳なそうに、背中を丸め込んだ。

「ごめんよ、、、昨日は1点も入れられなかったから、、、
、、、
3点を目標にしてたんだけど、、、」

彼のそのセリフに大爆笑が止まらなくなるいじめっ子たち。

「なにっつおまえっつ、、
たった3点が目標だったの??? 
そのくせ100点以上も取られてっっつ、笑笑」

腹を抱えて笑いもだえる彼らに 
少年はおもわず奥歯を嚙み締めた。
悔しさがあふれ出そうになるが、、手をぎゅっとさせる。

「ま、もうバスケ辞めてくれよ?
 お前ら最弱バスケ部のせいで、
学校ごと見下される羽目になるんだわ。
気付けよ?。」

実力も才能も無い自分に 
”恥ずかしさ”がこみ上げてくる。
彼ら4人は笑い転げながら、その場を去っていった。

「ぼくだって、、負けたくて、
負けてるわけじゃないよ、、。」

両腕で涙をぬぐいながら、体育館裏で一人へたり込んだ。
自分の”バスケの才能”の無さに思いつめていた。

「みんなの言う通り
もうバスケやめようかな」

だがそう言った瞬間、、
なぜか誰もいるはずのない体育館裏で
誰かの”狂い笑い”が聞こえてきた。

桜の木の下で、狂気な笑みを浮かべる一人の少年。
狂い笑っていたかと思うと、急に”真顔”に変わり口を開いた。

「さっきからダセーんだよ」

目の前の”謎の少年”に、啞然とし、思わず目を瞬かせる。
彼は満開の桜の木にもたれかかり、
”超傲慢(ごうまん)な態度”で頬杖をついて足を組み、
ガンを飛ばしてきた。

「 なぁ  なんでやり返さない?  
あんだけ笑われりゃあ、、
もう殺りゃあいいんだよ? 」

あまりの”乱暴すぎる”その言いっぷりに、さすがにビビってしまう。
そんな情けのない姿に、
彼は呆れ返ると、お手上げのポーズで大あくびをした。
そのままその場に寝っ転がった。

(なんなんだ、、この人、、、)
すべてがまるで”帝王”のような、目の前の謎の少年に、
余計頭が混乱する
だが、、すぐに気が付いた。

「あれっつ、、、他校の制服(せいふく)、、??」

ガァーーーーー、、グゥゥーーーーーー、、

「えっつ、、、、」

大いびきをかき、”大爆睡”をはじめる謎の少年。
口と両腕をだだっ広げ、もはや寝ているときですら、豪快だった。

「いいのかな、、?、、他校の生徒ここに入って、、しかも寝てるし。」

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