胃切除後症候群

胃切除後症候群とは、胃を切除した後に起こる様々な合併症のことを言う。

具体的には

 1. ダンピング症候群

 2. 胃切除後貧血

 3. 胆道系の機能低下

 4. 逆流防止機構の喪失

 5. 輸入脚症候群

の5つが合併症として挙げられる。

 1. ダンピング症候群

 ダンピング症候群とは、胃での消化がされず、高張(濃度が高い)となった食物が小腸に直接侵入することで生じる。

 高張な食物は、体内の水分を吸収してしまい、循環血液量の減少を引き起こす。循環血液量の減少に伴い、それを代償する形でめまい、動悸、発汗などの交感神経症状をきたす。また、高張な食物によって誘発される消化管ホルモンが亢進することにより、腹痛、嘔吐、顔面紅潮が生じる。 この一連の症状は、食後20〜30分後くらいの間に生じるため、早期ダンピング症候群と呼ばれる。

食後2〜3時間後には、食後高血糖によるインスリン過剰分泌が生じる。そのため、低血糖となり、発汗、動悸、振戦などの低血糖症状をきたす。 これは、後期ダンピング症候群という。

 2. 胃切除後貧血

 鉄の吸収が行われる際、胃酸とビタミンCにより、胃にてFe3+がFe2+に還元される。そして、十二指腸で吸収が行われる。そのため、胃切除により鉄の吸収不良が生じ、鉄欠乏性貧血をきたす。

 また、ビタミンB12は胃の壁細胞から分泌される内因子と複合体を形成して吸収されるため、胃切除により、ビタミンB12欠乏による巨赤芽球性貧血も同時に生じる。

 3. 胆道系の機能低下 

胃での消化が行われないため、胃と胆道系の消化の際のシグナル伝達が正常に行われない。そのため、胆道系の機能低下をきたす。これにより、胆嚢収縮能の低下による胆石の産生や、胆汁排泄能の低下による脂肪吸収障害が生じる。

 4. 逆流防止機構の喪失

 胃を切除することで、逆流性食道炎や、残胃胃炎を生じる。

 5. 輸入脚症候群

 BillrothⅠ法とBillrothⅡ法が術式として存在し、BillrothⅡ法では、十二指腸を輸入脚として残すため、胆汁や膵液の貯留を引き起こす。それにより、腹痛、胆汁性嘔吐が症状として現れる。また、細菌感染により、吸収不良が生じる。

胃切除後症候群の対策としては、一回食事量を減らし、食事回数を増やすことと、糖質の量を減らすこと、また、後期ダンピング症候群の発作時には、糖分摂取をすることが必要である。


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