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中学受験に失敗した息子が東大に現役合格しました。④ 〜令和5年度東大入学式に参加して〜

4月、うららかな春の早朝、水道橋近くのホテルを出発。日本武道館をめざし、慣れない靴でひたすら歩く。まばらだった人が次第に増えていき、目的地に近づいた途端あっという間に人の波に翻弄される。

今日は息子の東京大学入学式。
 入学者1名につき、保護者2名まで入場可。
 会場内ではマスク着用、極力会話を避ける。
去年5月8日から新型コロナウイルス感染症の位置付けが「5類感染症」へ移行したが、まだこの時点では、式案内では感染拡大に警戒を強めていた。前年度はリモート参加だったと聞く。

入学式に親が参加できるなんて。
私は喜びを噛みしめる。
卒業式など過去の行事の節目に立ち会えなかった悔しさも全て吹き飛んだ。

入学式には夫とではなく私一人で上京した。近郊に住む兄夫婦の奥方、義姉と一緒に参加するため合流。
まだ入場前、一足先に上京していた息子が同郷の友達と記念撮影をしている。

息子の高校からの現役合格者は6人。毎年3桁の合格者を送り出すK成をはじめN高やA高といった都市部の有名校には程遠いが、笑顔で談笑する彼らに「みんなよく頑張ったね」と心から祝福を送った。

やがて入場の長い列に並び、ようやく保護者席に着席。会場にぎっしりと人が埋まっていく。新入生が約3千人、それぞれに保護者が2人ずついるとすればざっと9千人強の人間が日本武道館に収まっている。

やがて厳かに開式した。
藤井総長、学部長の式辞に続き、国際機関グローバルファンド馬渕俊介氏による来賓祝辞。
東大在学中に発展途上国を巡り現地で培ったさまざまな体験が今のキャリアに生きているという。特に印象的だったのは「夢」についての話だった。

『夢は待っていれば突然降ってくるものではありません。探し続けて行動し続ける人にしか見つけることはできません。ひたすら探し行動し続けて、その中で少しずつ「彫刻」のように形作っていくものです』
思わずハッとさせられた。


息子が東大を選んだ理由は、進学選択制度、通称「進振り制度」によるところが大きい。「進振り」とは「2年生の時点で3年生から通う学科を選択する」という独自の制度。息子は文科Ⅱ類を受験したが、入学するとまず全員が教養学部に所属することになる。18歳の時点で自分の方向性が定まらない人達にとってこの制度はありがたい。

何も夢を持てないと悩み続けていた息子。
私も何のアドバイスができないままでいた。

そうか。夢を持つには受け身じゃダメ。必死こいて目の前のことに取り組んでいる過程で形を成していくものなんだ。これは4年間うかうかと過ごせないぞ、息子。

遠いところからはるばる入学式に参加して、私も大きな希望と勇気をもらうことができた。
「子育て」は「己育て」。
私も夢を持って生きたい。
今年の入学式はどんな言葉を聞けるだろうか。

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