2050年の日本を動かす次世代技術

仕事で調査をしている時に衝撃的な資料を目にしました。何かできる事はないだろうか、そう考え始めるきっかけです。前の記事では説明不足の面がありましたので、少し補足をしたいと思います。

2050年の日本

講演で使用するプレゼン資料を作成する為、鉄道ローカル線の状況を調べる事となり、読んだのが国土交通省のホームページにアップされた白書です。そこには2050年の日本が書かれていました。
・日本の居住地域の6割超で人口が半減し約2割は人が住まなくなる
国土交通省が2014年に発表した「国土のグランドデザイン2050」のベースデータとして試算した結果です。たかだか30年後の日本で多くの町が廃墟となる。それは俄に想像できない光景です。
さらに調べると、人口問題研究所が人口関連の予測を発表してました(2017年)
         2015年    2050年    2065年
・総人口   :1億2700万人 1億0200万人    8800万人
・生産年齢人口:   7700万人   5300万人    4500万人
・老齢人口比率:   26.6%      37.7%    38.8%
実際に予測通りの数値となるかは分かりませんが、トレンドとして正しいと思われます。受け入れざるを得ない日本の未来です。

地方の生活基盤衰退

予測通りとなれば、過疎が進む地域で問題となるのは生活基盤の衰退です。
『スーパー・小売商店・飲食店などは客数が減り、売上が落ちて閉店せざるを得
 なくなる。職が無くなり多くの若い人が都会へと出ていき、その影響で子供も
 減り幼稚園や学校が縮小されていく。宅配への依存度は高まるが深刻な人手不
 足により物流サービスは十分に行き届かない。高齢化が進む事から病院の患者
 は増えるが、生活環境の悪化が進む地域では医者や看護師を集めるのは困難』
過疎が進む状況下で、地方が人と仕事の減る悪循環から抜け出すのは、そう容易い事ではないでしょう。

「小さな拠点」の構想

このまま人口減少が進めば、過疎化する集落は孤立し始める事が予想されます。地方自治体の方と話す機会がありましたので、世間話程度ですが状況を聴いてみました。日本政府は、地方創生を目指した政策「まち・ひと・しごと総合戦略」を2016年に改訂し「小さな拠点」を基本目標の一つに据えました。「小さな拠点」とは、集落の中心エリアへ生活に必要な機能を集約して、その徒歩圏内に地域住民を集める構想です。
・集落の中心エリア:生活サービスの場として活用できる廃校舎、撤退スーパー
          旧庁舎などの有るエリア
・生活に必要な機能:買い物、医療、学習などの生活サービスの提供
そして、コミュニティバスなどの交通手段も整備して、近隣の「小さな拠点」間を結ぶ事で集落単位の孤立を防止する計画です。
実際に2021年の内閣府調査では、すでに全国の市町村(東京都23区を除く)の約3割で「小さな拠点」が形成されている結果となっています。
一方で「小さな拠点」の実現に高いハードルがあるとの指摘がありました。
・ロケーション:集落の中心エリアに廃校舎などが無い
・生活サービス:提供を行う民間業者やボランティアが集まらない
・地域住民転居:仕事も含めて住み慣れた場所から移動する事への強い抵抗感
これは至極当然と思われる理由で、行政機関が民間を強制的に動かす事はできないと言う話しです。今後さらに「小さな拠点」を進展させるには、民間サイドからもアイデアを提案していくのが重要と思います。

「小さな拠点」を動かす次世代技術

限定したエリアに生活サービスの提供を集中させる事は、確かに過疎地域の持続可能性を高めるように思えます。地域住民のアクセスが「小さな拠点」の課題であるならば、解決する一つのアイデアは次世代技術の活用です。
物流業界では深刻な人手不足の対策として、ドローンやロボットの活用にトライしています。自宅やオフィスへ荷物を届けるラストワンマイルの配送で期待されています。海外の自動車メーカーや物流サービス会社は、配送用バンのルーフからドローンを飛ばして宅配する実証実験を開始しています。
日本にも、トヨタ自動車が開発している低速度で走る自動運転EV「e-Palette」があります。先の東京オリンピック・パラリンピックでは、選手村の巡回バスとして利用されていました。この「e-Palette」の大きな特徴は多用途性です。ボディが低床の箱型となっており、内部の設備を入れ替える事で、移動型のコンビニ・レストラン・診療所・学習塾・オフィス・美容室・ホテルなど様々な用途での活用が考えられるEVです。
これらの次世代技術を上手く使えれば、モノやサービスを住民の住む場所へ移動させる事ができそうです。これまでの固定した生活基盤を前提にした静的な地域開発では無く、生活機能サイドの「小さな拠点」を次世代技術で動かす動的な地域開発は、一つの目指すべきアイデアと考えます。

確かに、ドローンや自動運転は安全性を含めて未だ検証途中の技術ですし、動的地域開発の導入や維持のコストを誰が負担するのかなど、課題は多々あります。
しかし、これは過去にピンチと遭遇した際も同様だった事でしょう。知恵を絞り試行錯誤を繰り返しながら前へ進む。その結果が現在の地域の姿だと思います。
念ずれば花は開く、そう信じたいものです。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?