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男子校の意義

はじめに

 昨今では少子高齢化や男女共同参画社会やジェンダーレスという名目から男女別学、特に男子校の存続が危ぶまれている節がある。男子校は前時代的な男尊女卑の巣窟であり、時代錯誤も甚だしいとまで言われている。
 しかし果たしてそれは適切な指摘なのであろうか。筆者はこの時代であるからこそ男子校の存在が必要であるのではないかと考える。本文ではそのことについて論じていく。

本論

 男子校には無論、男子生徒しかいない。男しかいないコミュニティでは男であるということが全く個性にならない。つまり、男女共学の場合は、おのずと男か女かそれ以外かということが、その人の個性に直結する。それ故に生徒自身も自身の性別によって自らの可能性を無意識的に狭めている場合がある。一方で男子校の場合、男であることが全く個性にならないため、男であるということが行動の理由にならない。
 男の中に男が入っても自分が男であるということは気にならない。むしろ男と女がいるところに男を入れると自分が男であるということがことさらに強調される。女がいることによって男であることが相対的に認識され、それ故に「男らしく」あることが求められる。わかりやすい例で行くと、力士がラッパーと会話をするときに自分は力士であるという意識が会話内容に非常に影響する。時には典型的な力士像を演じることが求められるかもしれない。一方で力士が力士と話しているときには自分が力士であるということが認識されにくいため、力士らしい発言をする必要がなくなる。人の個性は他者によって規定されるものであり、他者との差異が大きければ大きいほど、珍しい人間と認識される。人間が他者との関係性の中で自らを規定するとき、その関係性の中に女がいると男であるということの認識が強くならざるを得ない。男子校では男性器があるという個性が機能しておらず、それ故に一歩踏み込んだ理解が求められるようになるというわけだ。
 男子校の生徒らは、自らが男女の中で相対化された男であるということを認識する機会が少ない。性別の概念を認識しにくいときに、性別以外の要素で自らを語らなければならない。それ故に男子校の生徒らは非常に個性的である。よく、男子校では女子の目がないからのびのびと好きなことをできるという人がいるが、その現象の正体はこれである。
 人間の性質を語る上で、性別概念を別個のものとして考えることは非常に難しい。特に、思春期という男女の違いが身体的にもはっきりと出現する時期においては尚更である。一方で、思春期は将来の職業選択や人生選択という大きな選択を迫られる時期でもある。それ故に自らに冷静に向き合うべきである中で、男子校という性別の概念を取っ払ったコミュニティに属することは非常に有意義な経験となるのではないか。
 男子校では男であるという足枷、いわばジェンダー的な役割から脱却して自らの行動を規定することができるのである。それにより、共学においては無意識的に制限される可能性を男子校では選択することができるのである。共学では男女の概念というものを意識せざるを得ず、それにより行動を規定されるか、そこに息苦しさを感じた場合、男女の概念のアンチテーゼとなるほかにない。これはどちらにしても男女の概念という尺度に呪縛された行動となる。つまり、共学の論理でいえば、男女の概念か男女の概念のアンチテーゼとしてしか行動を規定できないのである。一方で男子校では男女の概念そのものが存在しないため、そういった尺度では測れない行動をすることができるのである。
 男子校のそもそもの端緒は男と女で教育するものが異なるため、分けたほうが効率よく教育できるというものであった。これは社会的に性別の役割が規定されていた時の産物であり、その成立過程をもって前時代的であるということは間違いない。しかし、成立過程こそ時代錯誤ではあるものの、そこで学ぶ学生らにとっては想像以上にジェンダーを意識させないものとなっている。今ジェンダーを意識させない社会を形成しようという中で、人生の中で最も男女の身体的差異を認識する思春期に、性別を意識させないコミュニティに属することは大変意義のあることではないか。

おわりに

 本文では男子校の現代社会における意義について論じた。もちろん、男子校での生活には様々な弊害があることは否めない。ただ、思春期の青少年らに性別を意識させないコミュニティに属させることはそれ以上に有意義であるのではないかと考える。同じことは男子校に限らず、女子高についてもいえるであろう。
 ここまで駄文にお付き合いくださりありがとうございました。読了後はぜひ忌憚のないご意見をお寄せいただきたいです。また、似たようなことをすでにどこかで誰かが発表しているなどの情報がありましたら、今後の糧となりますので教えていただきたいです。よろしくお願いいたします。


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