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[小話]雪玉

 雪玉は雪原を転がり始めた。縦横無尽にただ転がり続けた。大きくなるのだとただそれだけのために。
 そうして雪玉は大きくなった。一回転がれば、昔よりもいっぱい雪がつく。でもその一歩が重い。雪玉はもう自由には動けない。自分の凸凹の通りにしか動けない。雪玉は後悔した。あの時ああすればこのコブはつかなかったのに。このコブさえなければ向こうに行けるのに。でももう小さくなれない。もっと大きくなるしか道はない。
 ある時、雪玉は止まった。もはや動けない。ただそこに佇むだけ。時折雪玉は昔を懐かしむ。自分の好きなように転がれたあの頃を。
 春が来た。雪原も雪玉も、跡形もなく消えていた。

めでたしめでたし

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