病原性何タラ

病原性何タラ


 良く夏が近づくとO157とか病原性大腸菌に注意と
警告される。
大腸菌は悪玉菌で乳酸菌やビフィスス菌が善玉菌と
呼ばれる。
私は、研究者として不遇な目にあっていた。
何とか自宅に研究設備を揃えて遂に遂に開発に成功した。
この悪魔的な細菌を病原性ビフィスス菌V1だ。
ビクトリーのVを取ってV1だ。
俺を首にし実質的に業界から追放した連中に復讐してやる。
 俺は、馬鹿じゃない。
菌を単にばらまく様な真似はしない。
先ず、俺を首にした憎き乳酸菌飲料メーカーからだ。
手紙を出した。脅迫状では無い。挨拶状のつもりだ。
 『この度はお日柄も宜しく、貴社の新製品発売を
祝福します。私どもも同封した特異な新種のビフィスス菌を
御社にお送りしました。
アル菌の毒素を生成する遺伝子を受け継いだ株です。
私共は、ビフィスス菌にも病原性ビフィスス菌が、
存在する事をマスコミに知らせようと思いますが、
御社はどの様に対処されるかお示し下さい。
尚、私の銀行口座は、××××××××××』
秘書から便箋を渡された経営者は、
複雑な顔をして怒鳴った。

 「なんだこれは、調べろ。主任研究員を呼べ」

研究所から防護服を着た一団が本社に入った。

 「念の為、預かります。多分、大した物では無い筈です」

 「大した物では無いとは何だ。ビフィスス菌で売って
るんだぞ、病原性ビフィスス菌なんて存在が公になれば、
我が社の製品だけでなく業界全体が大打撃を被るぞ」

 「社長は銀行から我が社に入られてまだ日が浅いですね」

 「何かね。君は、私が素人だから口を出すなと言うのかね

益々、銀行から天下る様にやって来た社長は怒りを露わに
した。

 「失礼しました。
業界の常識で病原性ビフィスス菌が存在する事は、
前々から知られている事実です。
マスコミにも因果を含めています。
彼らもスポンサーを失うのは怖いですから、
知っていても黙っています。
公共放送や役所は、
具体的な健康被害が出ないと何もし無いでしょう」

 「そんな扱いの物なのか、何故儂に説明が無いんだ」

 「社長は、次の株主総会で銀行にお帰りになる
予定でしょう。一年だけの腰掛け様には説明不用と思い
ました」

確かに来月の株主総会で退任が決まっている。
銀行に帰る予定だ。でも何か釈然としない。

 「君、犯人の目星は付いているのか」

 「恐らく、責任のある研究者では無いでしょう。
彼らに取って既知の事実ですから、うだつの上がらない
ラインから外された奴か、下働きだけど多少知識のある
素人に毛の生えたような奴が犯人でしょう。
奴は、思惑を外しているでしょう。
何時まで経っても何処からも金が振り込まれ無い筈です。
業を煮やしてマスコミにたれ込むと思いますが、
先ほど話した様に何も報道されません大丈夫です」

銀行の世界もエゲツナイ世界だと思っていたが、
どこもエゲツナイな。
銀行に戻ったら、ビフィスス菌飲料は飲まなくて良く成る。
元々、あんな物は嫌いだった。

 さて犯人は、マスコミにも送ったが無しの礫だった。
遂に警察に自首した。

 「何処からも貴男が送ったと言う病原菌も手紙も
ありませんでした。私共も忙しいのでもうお引き取り下さい

彼は、警察からも追い出された。
ばらまいてやると思ったが、
効果が少ない事は彼自身良く解っている。
感染力も増殖力も極めて弱い細菌なのだ。
唯一恐ろしいのは、病原性ビフィスス菌が存在すると言う
事実だけなのだ。

後書き

このショートショートは、他のアカウントで「東京の女」
等と纏めて多くの短編を集めた短編集の一つとして発表した
物ですが、個別にシングルカットして前記は発表しましたが、このショートショートは、内容が内容なのでバッシング
を恐れて発表を控えた物です!
所が、小林製薬紅麹事件が起こり、発表を考えました!
2024年3月29に事件で社長(小林社長)が会見して居
るので上記小説では、社長が「銀行天下りの薬物素人」と
設定で記載したが、社名と社長のファミリーネームが一緒≪
偶々「小林」と言う多い苗字かも知れないが、多分、大阪
道修町の老舗同族会社かなと思う!道修町に少しダケ詳しい
のは、ADS社が、OEMとして藤沢薬品の仕事を貰って居
たのでADS社大阪営業部を道修町のオフィスを借りられ、
エッセイ『プロポーズした女』の同期「久美子」が、そこで
働いて居たからだ!≫

文末

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