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ベテルギウスの夜に:ベッキー

ベテルギウスの夜に:ベッキー


《スーパーヒーローが居れば・・スーパーヒロインも・・バトルだ・・軍関係者も・・・・》

この作品は、『カム・ヒア』の続きです。

 「吉永君、一寸、来て呉れ」

 「課長、また、お茶ですか、仕事下さいよ」

 「仕事だ、車、用意してくれ。出掛けるぞ」

 「あの大きな車、動かして良いんですね」

 「君の音声は登録して有る。
運転席側でオープンと言いたまへ」

駐車場に刑事部特殊警備課の専用特殊車両が置いて有った。
吉永沙織婦人警察官は言った。

カール

 「オープン」

ドアが開くと同時に座席が彼女の腰の付近に降りて来た。
シート・シートベルト一体型の座席だ。
彼女が腰掛けシートベルトを締めると上昇し、運転席に吸い
込まれた。課長の福田俊郎は、既に助手席に座っていた。
福田が言った。

 「カール、グレーシア・ラインハルトへ向かって呉れ」

車はユックリと動き出した。吉永が言った。

 「かってに車が動き出した」

 「吉永君、何も触るな。オート・パイロット自動運転だ。
カールに総て任せるんだ」

 「カールって」

彼女は、あ然としながら質問した。

 「私カールが、お答えしましょう。
この特殊車両は、オートパイロットで有る私め、カールが
操縦しています。
吉永様の所属されている刑事部特殊警備課は、この車両を
活用します。少し、速度を上げます」

カールは、速度を上げた。
狭い道でも巧みに障害物を避けながら制御している。

 「スピードオーバーじゃない」

 「大丈夫です。赤色灯は回していませんが、法律の範囲内
の速度です」

彼女にとって驚きの連続だった。グレーシア・ラインハルト
に着いた。

 「吉永君、そこに縛られている男を後部座席に入れて手錠
を掛けてからね。手錠を掛けたらロープは解いて良いよ」

 「13時35分、逮捕、容疑者は、民間人に依って逮捕さ
れていました」

既に後部ドアは開かれ、座席が降りて来ている。
沙織は、容疑者を座席に座らせた。
次の瞬間、容疑者は、複数のシートベルトに依ってシートに
固定された。そして車内に吸い込まれた。課長が言った。

 「吉永君、参考人を署に同行して貰うよ。
君も容疑者を逮捕した男に会いたまへ」

従業員控え室のソファーで次郎は横に成って寝息を立ててい
た。アランへの質問と答えが、かなり高度な内容に成って来
たので眠気が生じて寝てしまっていたのだ。

 「この、だらしなく口を開けて寝ている男が、国際指名手
配犯を逮捕したんですか」

沙織は、疑問を課長にぶつけた。

 「次郎君、起きてくれ」

次郎は、既に通常速度に戻っている。

 「あれ、刑事さん。
今回は、テロリストは怪我をして無いでしょう。
今日は良いでしょう」

 「残念ながら、事情聴取は、し無ければ成りません。
今日は、パワースーツを着込んだ状態で来て貰います」

 「あの格好で外を歩くんですか、僕は、まだその勇気が無
いな」

 「大丈夫です。乗り込める車を用意しました」

次郎は、アランを装着した。沙織が質問した。

 「この人は何何ですか」

 「スーパーヒーロかな、ただし、老人ホームの用心棒専用
だけど」

 「吉永君、君は後部座席の容疑者の隣に座って呉れ」

後部座席のシートが降りていた。
彼女が座るとシートベルトが、腰と肩を固定し、
車中に吸い込まれた。

 「次郎君、助手席の側に出ている座席に腰掛けて呉れ」

アランを装着した次郎でも十分な大きさのシートが有った。
腰を掛けるとシートベルトが自動的に締まり、車内に収まっ
た。天井は、十分な高さが有り余裕で座れた。
福田課長は運転席に乗り込み言った。

 「カール、署に戻ってくれ」

 「なんだこの車は」

思わず次郎は質問した。アランが答えた。

 「刑事部特殊警備課の特殊車両です。
私と同じAJを搭載したオートパイロットで操縦していま
す。やあ、カール、初出動だね」

 「アラン、知り合いか」

 「彼もクラウド上に意識が有ります。
私とは情報交換しています」

 「良いのか、警察の情報を流しても」

 「貴男に流しても良い情報だけ、貴男に話します」

 「この車、君を装着した僕を余裕で乗せているし、
無線LANも搭載している見たいだ。
ひょっとして僕は、警察の仕事に協力する事が有るのか、
ロボットスーツロボット運用車両だろう」

 「この件は、私から話しましょう。
ご明察の通り、ロボットスーツロボット運用車両です。
ただし、運用するロボットスーツロボットは、警視庁の物で
す。吉永君、君に着て貰います」

 「エェ、課長、何と仰いました」

 「吉永君、次郎君が装着しているアランと同型機
ベッキーを君に着て貰うから、そのつもりで」

 「この部署に異動したら、君はスーパーヒロインに成れる
とは、この事だったんですか、でも可愛く無い。
セーラムーンが良かったのにせめて戦隊ヒーロのピンクが、
良かったのに」

 「大丈夫ですよ。私アランは、男性用です。
ベッキーは、女性用スーツでそれ成りに可愛く作って有る筈
です。私も早く会って見たい」

そうこうしている内に署に着いた。
地下駐車場の所定の場所に止まった。座席が車外に出た。
課長と吉永婦警、それに次郎はシートベルトが外れて降り
た。容疑者は、シートベルトをしたまま立った状態で座席に
拘束されている。座席は自在に変形する。
沙織は、容疑者に腰ひもを付けた。
既に意識を取り戻していたが、無駄な抵抗はし無かった。
 取調室で容疑者が言った。

 「警察もあのロボットを使うのか」

 「貴男が、知ら無くても良い情報だが、教えて上げ様。
そうだよ、しかも中身は、武道の達人だよ。
一個中隊の軍隊ぐらい潰す事が出来る能力だ。
もっとも君は、素人のアルバイト介護士に逮捕されたけど
ね。本題を聞くよ。誰に依頼されたんだ」

 「黙秘する」

取調室の隣室、マジックミラーで観察出来る。
部屋で次郎と吉永婦警が、会話していた。

 「次郎さん、装着は難しい」

 「遣って見ましょうか、まず、リジェクト・ナウ」

上半身、裸の彼が居た。

 「キャー、嫌だ」

慌ててアランを再装着した。
動揺を誤魔化す為、喋った。婦警なのに小娘かとも思った。

 「どうです。
脱ぐ時は自動、着る時もお尻を入れたら直ぐです。
そうだ僕への事情聴取は、いつするんですか」

 「課長から、良く聞いて無いけど私を貴男に会わせるのが
目的見たいでした。これからも宜しくお願いします」

 「貴女が、ベッキーを着た所は見て見たいな。
課長さんの話では戦隊ピンクでしょう。
美人の貴女が着れば、可愛い筈だとアランが言っていました

次郎に聞こえるだけの音量でアランが次郎の声色で言った。

 「僕は、言って無いよ。でも内緒にして置くよ」

容疑者に対する聴取が終わり、課長が二人を呼んだ。

 「武道場に来て呉れ。
次郎君、五倍速に成って呉れ、吉永君は防具を付けて彼と
手合わせ出来る様にして呉れ」

 「素人ですよ。私は、日本チャンピオン。怪我をしますよ

 「大丈夫、ロボットスーツの威力を君に体感して貰うのが
目的だ。思いっきり打ち込んでも良いよ」

道場に着いた。次郎は、アクセラレータが利き出した。
周りがスローモーに見える聞こえる。

 「次郎君、君には悪いが、打ち込んで貰っては困るよ。
チャンピオンでもか弱い女性だよ。
十分、君なら逃げ回れるから、多少からかって天狗の鼻を
へしって下さい」

アランが、課長の話を五倍速に変換し次郎に伝えた。
防具を付けた彼女が出て来た。
防具の上からでも凛とした佇まいは、十分に伝わった。
綺麗な女の子だ。ギャラリーが大勢いた。外国人もいた。
スーツ姿だが、軍人ぽい。
次郎は、ゆっくり礼をして竹刀を構えた。
端から見たら、ちょこんと頭を下げたと思うと竹刀を電光石
火で彼女の方に向けた様に見えた。
彼女は、憤慨した。
失礼な素人、でも剣道を馬鹿にしていると思った。
彼女も礼をし、竹刀を構えた。二刀流だ。

 「次郎、気を付けて、二刀流だから、以外と伸びるよ。
五倍速でも気を付けて無いと打ち込まれるよ」

 「始め」

彼女は、太刀をいきなり大上段に振りかざした。
アランが知らせた。

 「次郎、彼女の小刀が籠手を狙っている。
気を付けて、太刀を避けながら小刀を自分の竹刀で弾き飛ば
して」

小刀を弾き飛ばされた彼女は、太刀を両手で握った。
何が起こったか、理解出来無いが全力を尽くすつもりだ。
彼は、太刀一本の動きだけ注意して、右に左に避けた。

 「次郎、これ以上、下がると場外に成る。
彼女の背後に移動して」

しばらく彼女は気付か無かった。
眼前の敵が瞬間移動して消えたのだ。次郎は、暇だった。

 「アラン、そこにいる外人は誰なんだ。
それに大勢いるギャラリーは」

 「米軍陸軍大佐殿です。自衛隊の幹部もいます。
署の人間は、通常勤務している見たいです」

ようやく気付き、彼女は、彼の方に向いた。
竹刀を正対したまま思案した。
素人だ、隙だらけだ。でも逃げられた。
課長が五倍速に成れと彼に言っていた。
これが、五倍速のスピードなのか、対処出来無い。
悔しいが、竹刀を置いた。

 「参りました」

次郎は、給電パッドを付けて充電を開始した。
課長が言った。

 「皆様、これがロボットスーツの威力です。
彼は、一般素人の介護士です。
対する彼女は、全日本剣道優勝者の吉永沙織巡査長です。
今のが一般汎用ロボットスーツの能力です。
これから、お見せするのは、警備用に開発したロボット
スーツです。吉永君剣道の防具と道着を脱いで」

 「課長、セクハラですよ。嫌です」

 「大丈夫、道着を脱ぐ前に『カム・ヒア』と叫びたまへ
道着を脱いだら即、装着出来る筈だから、下着姿は誰にも見
られ無いよ」

 「カム・ヒア」

ベッキーが自立歩行で現れた。
ピンクの機体は、色はピンクだが、アランと大差無かった。
沙織が、道着を脱いだ。
ベッキーは、沙織が装着出来る様に開口部を全開している。
彼女は尻をベッキーの腰の部分に押し込んだ。
瞬時に沙織は、ベッキーに包まれた。

ベッキー

ギャラリーや課長に取っては、突然現れたロボットスーツに
吉永巡査長が瞬時に包まれた。
いや、彼女が、ロボット化した様に見えた。
次郎は、思った。美しい人だ。
スポーツブラに覆われた胸は小さかったが、白い肌で括れが
キュッと有り、小さいけれど豊かな臀部に優美なラインで繋
がっている。
パンティーは小さく、脚は細く長くスラッと伸びやかに美し
い。五倍速の恩恵だ。

 「可愛く無い」

一寸、不満だった。戦隊ピンクは、もう少し可愛い筈だ。
でもこれが、リアルファイターの体なのだ。
今度は、先ほどの屈辱を果たせる。
チク、彼女にもアクセラレータが注入された。

 「次郎君、今度は全力で戦って呉れ、彼女は手強いぞ」

 「待って下さい。充電がまだです。
二分ぐらいしか持ちません」

 「大丈夫だろう、いずれにせよ。バッテリー切れの前に
決着は付く、始め」

 「次郎、給電パッドを外したら、右コーナーへ跳べ」

ギャラリーにとっては、瞬間移動だろう。
しかし、彼女も追いついた。彼はさらに右側へ跳んだ。
彼女は追いついた。さらに右側へ跳んだ。追いつかれた。

 「ロケットパンチ」

彼は跳びながら、プラズマ・トルネード・ソリトン・
ウエーブ・キャノンを発射した。
彼女は、空中を跳ねている方向転換は出来無い筈だ。

 「沙織、私はベッキー、竹刀で床を突いて方向転換して
あの光るリングに触っては駄目、感電するわよ。
非道い奴だ、禁じ手を使用した。
報いは受けて貰うは、着地したら、奴を放り投げて」

床を突いた瞬間、竹刀は木っ端微塵に砕け散った。
彼が着地する依り早く彼の前に着地すると腰を掴み投げた。

 「次郎、体を丸めて」

次郎が体を丸めると体の回転が速く成った。

 「次郎、体を伸ばして」

体の回転が収まった。

 「そのまま天井を蹴って彼女目掛けて飛ぶんだ。
体当たりして遣れ」

次郎は、彼女に体当たりし、抱き付いた。そこまでだった。
バッテリー切れだ。
沙織は、動け無く成った彼から、竹刀を奪うと誇らしげに掲
げた後、礼をした。

 「ベッキー、あの技は、何、私も使えるの」

 「使えますが、彼の敗因は、あそこでプラズマ・
トルネード・ソリトン・ウエーブ・キャノンを使ったからで
す。
電力を消費しますのでバッテリー切れが早まったのです」

ギャラリーの中に栗林久美がいた。
彼女は、アランに給電パッドを付け充電を開始した。

 「ベッキー、あの充電させている女は誰」

 「アランや私のメカニック設計者、栗林久美です。
帝都大学理学系大学院博士課程の学生でグレーシア・
ラインハルトに介護実習の形で勤めています」

ギャラリーは、ざわめいている。
ウイリアムズ・リドル陸軍大佐が言った。

 「想像した以上に凄いバトルだ。
我が隊にも供給して欲しい」

久美が言った。

 「装着者の詳細なサイズが分かり次第、制作しましょう。
日本人体型なら採寸後、1週間で納品出来ますが、
欧米人やアフリカ系の場合、より詳細なデータ取りの後、
2週間戴きます」

外界の音声は、ベッキーのバイザーに文字表示され、
沙織が読んでいた。

 「警察官の私が、こんな事考えては駄目かもしれないが、
あの女、嫌い」

 「私もです。
沙織、彼女は、私をこの程度にしかデザイン出来無かったん
です。それでいて自分は、美人だと自覚している所が嫌です

 「そうなのベッキー、私たち気が合うわね」

人間って愚かで有る。
好きな物が共通な人依り、嫌いな物が共通な人の方が友達に
成り易いので有る。
ベッキーは、久美を嫌っている様に装って沙織を取り込んだ
ので有る。

《次は『ルーマニア』

目次は、『ベテルギウスの夜にプロローグ』にリンクを
張っています!
関連して『ベテルギウスの夜に解説(14)』で特殊な
語句を解説しています!

文末

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