ベテルギウスの夜に：フランクフルト
ベテルギウスの夜に：フランクフルト
《菅原道真は、唐から学ぶ物は無いとして遣唐使を廃止した・・生まれ変わりわりの尾崎道真は、学校の成績は良く無いと・・言っていが・・コンピューター系・・天才・・・・そしてＡＪ人工思考体が・・・》
この作品は、『ストックホルム』の続きです。
メルヘン街道を探索する一行は、ミュンヘンで鉄路に乗り
換えた。馬車の辛さに堪えきれ無かったのだ。
シュツットガルトで途中下車し、フランクフルトに着いた。
シュツットガルトは、ＤＭＷの企業城下町と言って良いが、
先の大災害で世界中からスポーツカーが売れ無く成って
大不況地帯で有る。
でも流石ＤＭＷで有る。尾崎を研究所に招待した。
アーティフィカルジャッジＡＪに付いて意見を聞かれた。
良く調べている。
尾崎が、責任者で成果が出始めている事を知っていた。
「ＡＪを何に応用されるおつもりですか」
「オートパイロットを我が社では、開発しています」
「今、再生可能資源動力エンジンを実現するのが、
災害後のトレンドの時代にオートパイロットですか」
「何れ、エネルギー事情は、改善すると我々は見ていま
す。次は、オートパイロット自動運転です。
カメラ・センサー類は、一通り揃えました。
後は駆動する頭脳エンジンです。
ファジィアレイプロセッサＦＡＰを開発し、それを生かした
ＡＪで民意予測システム用のメタ言語の開発に成功したと聞
きましたよ。
我々は、ＦＡＰとメタ言語を融通して欲しいと考えています
」
「私を威すつもりですか」
「貴男、何で貴男が今の話で威されるの」
めぐたん が不思議そうに聞いた。
「民意予測システムの事を知られている。
直接民主制の肝で有る国民投票依り先に民意を汲み取る機構
として民意予測システムをＡＪで行える様に考えたんだよ。
それが知られると民意とは異成る事が政府で行われていると
誤解される恐れが有るんだ。
今、ＡＪで予測した事と実際の投票との誤差を調べているん
だが９５％まで同一化出来たんだ。
ＮＫＮ総選挙を今、遣れば君がトップだと出たよ」
「嬉しい、でもＤＭＷさんが欲しいＦＡＰとメタ言語って
何」
「ＦＡＰファジィアレイプロセッサは、ファジィ論理って
一時期話題に成ったから君にもその流行が有った事、知って
いるよね」
「私、理科系よ。デジタルだけど人間の感覚に似た判定を
行える論理だと聞いた事が有るわ」
「そのファジィ論理の演算何だけど高精度浮動小数点演算
が、必ずしも必要では無いんだ。
ビット数が少無い演算器でも演算出来るのでファジィ論理専
用のマトリクス演算器を半導体メーカに作って貰ったんだ
よ。勿論、高速に大量のファジィ演算を効率良く演算出来る為だよ」
「今有るＣＰＵやＧＰＵでは、ファジィには演算精度が
高過ぎるけど遅いと言う事なのね」
「メタ言語とはコンピュータ言語を定義する為の言語なん
だよ。ＣとかＪＡＶＡは知っているね。
それらプログラミング言語の意味を記述する為の言葉で
プログラミング言語の設計図の一部なんだよ。例えば、
数字：：＝０｜１｜２｜３｜４｜５｜６｜７｜８｜９と
言う風に書いて数字とは０か１か２か３か・・・７か８か９
を意味するとかね」
彼は、傍に有ったホワイトボードに思わず書いていた。
「ＡＪのメタ言語とは」
「民意予測システムの様な森羅万象大量のビッグデータか
ら民意を予測する為に何をどう調べるとかを記号で記述した
物なんだ。
このメタ言語に書かれた方式をＡＪが自分でプログラミング
してシステムを構築するんだ。森羅万象のデータとは天気予
報や天気予報の的中率の様なデータも含まれるので直接人間
がプログラミングするのは不可能に近いんだ。そこでメタ
言語で方向性だけ決めてＡＪ自体にプログラミングを遣らせ
るシステムなんだ。
オートパイロットも車内・車外の情報や搭乗者の健康情報等
大量のビッグデータを瞬時に判断する必要が有るので
ＦＡＰとメタ言語が必要なんだと思うよ」
「御解説、有り難う御座いました」
ＤＭＷの研究員が言った。
「しまった。喋り過ぎたかな。
ＦＡＰは、商業用一般半導体ですから、御購入下さい。
機密品では有りません。
我々としても開発費の元は取りたいですからね。
メタ言語は、研究段階の試供品しか存在しません。
お互いに進化させる為に提供する方向で検討しましょう、
スケジュール的にもう暫くしたら、日本のネットワーク環境
が復活する予定です。
ＦＡＰやＡＪの情報もオープン化する予定です」
シュツットガルトの近くには、本来の黒い森
シュバルツバルトが広がっているのだ。案内して貰った。
魔女博物館の近くの森とは比べ物に成ら無い、広大な森が
有った。
端っこは、木々が大気汚染で白く枯れていると言う報道が
過去に有ったが、黒い黒い森が広がっていた。
森に圧倒され駅に送って貰いフランクフルトへ鉄路を向かっ
た。列車の中でめぐたん が、質問して来た。
「私が一位って何故、知らせて呉れ無かったの」
「あくまでも実験途中のデータ検証の一部だよ。
特に意味の無い情報だよ」
「理解して無いは、私達アイドルに取って大事な事よ。
マリアさんは何位だったの」
「ＡＪがジャッジしたデータは、マリアさんが、処女の時
だよ。彼女は、七位で ののこ が三位だった。
だから言わ無かったんだよ。今ならマリアはモット上だよ。
君と順位が入れ替わっているかも知れ無い」
「結婚引退報道がどう出ているか分から無いわね。
それもＡＪは、ジャッジ出来るのね」
「そうだよ。
でも実際の投票と比べて見無いとＡＪの評価が出来無いんで
シークレットなんだ」
フランクフルトに着いた。ソーセージ工場を見学した。
ソーセージ作りを体験させて貰った。矢張り、めぐたん は
悲惨な料理音痴だ。
フランクフルトソーセージは、有る場面では、男根を意味す
る隠語だが、彼女が小腸を破り何回目かに成功した
ソーセージは悲惨だった。
ごつごつとしたその姿は、グロテスクな大人の玩具のそれで
有った。
このまま『愛のエプロン』とか『やってＴＲＹ！』タレント
版とかのＴＶ番組を作ったら、彼女はレギラーとして
視聴者の笑いを誘うだろう。
工場を出るとかなり遅い時間に成っていた。
食事は、工場でソーセージをビールと戴いた。
出来た不細工なそれは、薫蒸が完了してから日本に送られて
来る予定だ。
塩加減やスパイスの調合も間違えているが、食べ無ければ、
大丈夫だ。道真は忘れ様と思った。
ホテルに付くと部屋に直行した。
今日は、疲れた。
シュツットガルトの件もソーセージ工場の件も想定内の
出来事だが、実際に経験すると疲れた。
軽くシャワーを浴び、ベッドに横に成った。
彼女がシャワーを浴びている。良い匂いが近づいてくる。
でも無視して眠ろうとした。苦しい蛇がいる。
「助けて・・判った。君を愛するから引っ込めて」
「私を無視して何を考えているの」
「君の良い匂いがしたんだが、疲れているんだよ。
今日は愛撫だけで良いね」
彼女の唇を奪い、枕の下に隠していた熊野筆を取りだし尻の
割れ目を軽く撫でた。
「ヒャー、イャン、ヤーン、イーイ・・熊野筆ね。
ヤーン、イーイ・・久振りね。
どうして今まで使わ無かったのイーイ」
彼は、彼女の背骨沿いに首筋を撫でた。
項は、彼女の強烈な性感帯で有る。
「ア、アン、イーイ、イク、イクイク・・イクイクイク
イク、イクー」
あっと言う間にオルガスムに達してしまった。
道真は、枕の下に筆を仕舞うと深い眠りに就いた。
彼女の良い匂いや可愛い嬌声で彼の男根は少し起立し出した
が、眠気には敵わ無かった。
翌朝、朝食時に道真は彼女に再び聞かれた。
「貴男、熊野筆は、どおして封印していたの」
「出来るだけ、僕の手や唇で愛撫したかった為だよ。
これは、もしもの場合、エマージェンシーの場合用だよ。
昨日とうとうエマージェンシーが、発生したけどね。
疲れている僕に無茶苦茶迫るんだよ。
でも気持ち良かっただろう。
アッという間に達したじゃ無い快感で満足したろう」
「嫌よ。もう少し、愛して呉れると思ったわ。
眠ちゃうなんて嫌よ」
シルビアが聞いた。
「熊野筆って何、どうしてモメているの」
「シルビア、掴美姉さんも持っている筈だから彼女に経験
させて貰うと良いよ」
「駄目よ、私の熊野筆は、メーク用よ」
「後でシルビアの顔にメークして見てどんな物か、彼女な
ら判ると思うよ」
食事を終わり、ホテルから、郵便の束を受け取った。
フランクフルトから河を船で下る事にした。
マイン川を下りマインツからコフレンツまでライン下りの
コースを行った。
川沿いには中世の城やワイナリーが有り、ヨーロッパを堪能
した。古城に立ち寄り、白ワインを堪能した。
日本からの手紙を めぐたんが見ていた。
「ミセスに成ってからの御初のテレビだわ。
貴男の好きな『愛のエプロン復活スペシャル』と有るは、
貴男も出演者よ」
自分自身も出演者と聞いて内容を確認した。
「ウヮー、嫌だ。
何が夫婦特集で奥様達が作って旦那さんが審査員で評価する
なんて僕は、君の料理を完食して『おいしい』と言わなきゃ
成ら無いんだよ。新婚旅行から帰ったら特訓だよ。
少無くとも食べられる物が作れる様に成ら無くっちゃ」
「非道い、夫婦揃ってのＴＶ出演よ。上手く遣ってよね」
「君の作った物を、完食して『おいしい』と言えてか、
君が僕の指導無しに何を作ったか、思い出して見て。
君自身でも完食出来無かったでしょう」
「非道い、酷い、非道い言い方、あ、そうだ。
昨日のＡＪ関連のＦＡＰとメタ言語の話し、昨日はイベント
が多くて説明して呉れ無かったわ。私、興味有るわ。
説明して」
彼女は、話を変えた。巧妙で有る。
ＡＪプロジェクトが成功し掛けている。
技術者として話したくて仕方が無い筈だと自分の料理下手の
話題から話を変えられると思ったので有る。
「ＦＡＰの方が簡単だから、そこから話すよ。
世界のランキングトップを走るスーパーコンピュータは、
パソコンでも使用されているＣＰＵと高性能テレビモニター
や録画装置で使われているＧＰＵグラフィックプロセッサを
大量に組み合わせて作られている事は知っているよね。」
「ええ」
「ほぼ、その通りだが、もう一つ、装置の冷却技術が、
かなり重要なウェイトを占めるんだ。
でも、今回の技術的な話とは違うのではしょるよ。君の想像
通りで良いよ」
「その組み合わせとコントロールするソフトが、順位を
左右するのね。そうだＧＰＵて何で必要なのそうだなの前々
から気に成ってたの」
彼は、思った。
コンピュータおたく以外は、知られて無いんだ。
少し面倒だとも思った。
「先ずＧＰＵは、グラフィック・プロセッサ・ユニットの
略なんだ。その名の通り、グラフィック処理を目的とした
半導体チップなんだ。このチップでのグラフィック処理とは
線形代数学的処理での座標変換・・・」
彼は、数式と図形をスケッチブックに書いて見せた。
Ａ＝ＣＢ、Ａ：結果画像、Ｃ：変換マトリックス
Ｂ：元画像の座標とその画素データをそれぞれ表します。
Ａ・Ｂは、代表の頭文字でプログラミング言語的表現では、
Ａ(i,j)の様に記述します。i・jは、メモリにマッピングし
ている二次元的配列表現での添字・インデックスと言う英語
表現の方が馴染むかもしれませんが添字と表現させて下さ
い。そして｛iは０から右端｝、｛jは０から上端｝と
マッピングした画像の範囲を表しています。
Ｃは、
｜a b｜
｜c d｜
と行列式で表現出来ます。a・b・c・dは、パラメータの数値
とか数式を表します。
この式で表しているのは、Ｂの画像をマトリックスＣに
適応してＡの画像を作成する事を意味します。
そしてＡの座標の位置へＢの画像を１画素毎にコピーする事
で画像の拡大・縮小及び回転補正や効果を行う事が出来ま
す。」
道真は一気に捲し立てた。我ながら遣り切ったと思ったが、
彼女が質問した。
「一寸待って、何か、変・・・そうだ。マッピングされる
Ａの画像メモリーの方が面積が大きかったらスカスカに成る
んじゃ無い」
「凄い、鋭いな。でもこの式で良いんだよ。元画像座標Ｂ
の方にマトリクスＣが掛けられているだろう。
新規作成画像Ａは『i,j』と添字０から右端・上端と全ての
範囲を網羅しているだろうＢ画像の変換に対応する画素の
添字を算出して対応する画素の値をＡ(i,j)の場所に格納す
るんだよ」
「でも、それじゃ、回転角度に依っては、ガタガタに成る
んじゃ無い」
「またまた鋭いな。今回は、説明の為、補正を入れ無かっ
たけどコレじゃ座標計算の整数値部分だけで変換しているの
でガタガタに成ります。良く分かったね。
そこで本当の応用では、画素の値も小数点以下の部分をその
パーセンテージに応じて複数の画素を加算合成する事で
Ａ(i,j)に格納します。
この様な一連の操作を繰り返すのが、ＧＰＵでの画像処理で
す。
そしてＧＰＵは、画像処理だけで無く、同じ様な繰り返しの
定型処理を高速に出来る為の物なんだ」
「ＧＰＵは、解った。では、ＦＡＰって何なの」
「１９８０年代にファジィ制御家電が流行った。主に温度
センサーの値を元にしたエアコンや調理家電の制御等、
一次元的制御だったと思う。今でも同様の応用で使用されて
いる筈だ。さてＡＪは、人工知能的手法としてチェスや将棋
での勝負判定をファジィ演算に依る関数で多くの手数を
何手先でも算出したり、大量の増減データをファジィで高速
に判定する必要が生じた為専用のファジィ演算に特化した
アレープロセッサを作成したのだよ。
ところでコンピュータで計算する計算は、整数演算と浮動小
数点演算と二つの方式が有る事は知っているよね」
「小数点が付か無い数値と小数点が付く数値ね」
「その解釈で良いよ。厳密な定義は、情報工学や計算機数
学専攻の学生の内何パーセントが理解しているか、心配だが
ね。今、主に使われている整数演算は３２ビットサイズでは
マイナス２１４７４８３６４８から０まで一つづつ増えて
最大値は２１４７４８３６４７と言う数なんだ」
彼は、スマホの電卓を起動して正確に努めた。
「何でマイナスの方が一つ多いの」
「これが、二の補数表現を使用した整数の表記方式なん
だ。そうなる物と納得して日本に帰ったら、ちゃんと解説す
るよ。
浮動小数点演算は、例えば基本的な３２ビット単精度演算は
仮数部２４ビット指数部８ビットと３２ビットを二つの部分
に分けてそれぞれ、仮数部は、マイナス８３８８６０８から
０まで一つずつ増えて最大値は８３８８６０７これで十進数
にすると約６桁＋αの小数点で記述した部分を表すんだ。
指数は、２のベキ乗方式を使用します。
指数部は、マイナス１２８から０まで一つずつ増えて最大値
は１２７と指数として表すんだ。指数は解るよね。
例えば、光速度は、２．９９７９２×１０の８乗簡単に表す
場合は、３．０×１０の８乗。その１０の何乗で表すのが、
指数方式、これは解るよね。何でこの様な方式が取られてい
るか」
彼女が答えた。
「科学技術の計算では、もの凄く大きな値や極小な値を取
り扱うのに便利だからよ」
「それで既存ＣＰＵやＧＰＵには、８０ビットを
６４ビットの仮数部と１６ビットの指数部という非常に
高精度な演算機構が採用されているんだ。
これなら６４ビットの倍精度演算でも余裕で四捨五入すれば
桁数的には、答えが間違わ無い。
だから、普通演算には高精度な演算が出来る方が良いが
ファジィ論理には、そこまで必要じゃ無いんだ。
もっともファジィ演算も高精度な演算器でも計算可能だが、
無駄なんだよ。そして何より高精度の演算時間より少ない
精度の方が断然処理速度はハード的に速いんだ。
ＦＡＰの演算器では、１６ビットで０から１迄の数値を表す
固定小数点法を採用したんだよ。数値的には、
０，０．００００１５２５９，０．００００３０５１７５，
０．００００４５７７６と０．００００１５２５９づつ増え
る数値を採用したんだ」
「整数と固定小数点てひょっとしたら同じじゃないの」
「君は、流石に鋭いな。演算器の中では、二進数表現で
００００００００００００００００，
０００００００００００００００１，
００００００００００００００１０，
００００００００００００００１１と成り全く整数値と同じ
なんだ。唯、意味が違うんだ。
整数演算では足し算を意味する加算や引き算を意味する減算
や、掛け算を意味する乗算や、わり算を意味する除算を行う
んだが、ファジィ演算は主にファジィ集合演算なんだ。
集合の和とか集合の積やファジィ算術的演算が主なんだ」
「集合の論理演算って整数演算でのビット毎のロジック
演算の事じゃ無いの」
「またまた鋭い、ロジック演算すなわちブール演算は同じ
です。ブール演算は、真と偽、白と黒、コンピュータの内部
では０と１です、でもファジィ集合演算独特の０と１の間
灰色の状態が有ります。
０は０ですが、０．００００１５２５９は、０では有りませ
ん。０に非常に近い状態です。
１は１ですが、０．９９９９８４７は、１では有りません。
１に非常に近い状態です。その灰色の状態を表す為にＦＡＰ
では、１６ビットの固定小数点表示を採用したんだ。
それでも浮動小数点表示の様に単精度浮動小数点で
３２ビット、倍精度と呼ばれる高精細浮動小数点で
６４ビットを使う事に比べて小さくて済み、メモリ節約や
演算器自体の半導体面積の節約や演算速度の高速化が行え
るんだよ」
流石にファジィ演算自体の説明は避けた。
さらに、めぐたん が質問して来た。
「１６ビットの演算器を新設するのは解ったわ。
でもＦＡＰのＡアレーって何」
「ＡＰでアレープロセッサ、つまり同じ演算を纏めて大量
に処理する演算器と言う意味だよ。
普通のＣＰＵに対してＧＰＵは、用途からグラフィック・
プロセッサと言われているけど実は、アレープロセッサ
なんだ。
ＦＡＰは、ＧＰＵでの高速大量演算をファジィ演算に対して
行う演算器なんだよ」
「なんで今まで無かったの」
「ファジィ演算は、１６ビットだけなので作るには対して
手間が掛から無かったが、元々需要が少無かったんだよ。
計算機の処理速度の世界ランキング何位とかの評価基準には
ファジィ演算のスピードは、影響が無かったので高速な
コンピュータを作る時にも顧見られ無かったんだよ。
今回ＡＪアーティフィカルジャッジ開発に必要だから作って
貰ったんだ」
「基本的な質問だけど良い」
何だろう、面倒だと彼は思った。
彼女は、鋭い質問を続けている。
「何でしょうか」
「８・１６・２４・３２・６４って８の倍数の数字が良く
出て来るんだけど教えて」
こっち系か、ホットした。彼女の本音は、料理下手を誤魔化
す為だとは分かって無い。
「元々のロジック回路は、信号が１か０、有るか無いかを
判別したりＡＮＤ・ＯＲ・ＮＯＴ論理的演算が行える物から
始まったんだ。
歴史的にはバベジの解析機関等、歯車を使った機械式からの
スタート何だが、今の事情と懸け離れているので省くよ。
現代的論理回路は、リレーや真空管で構成され、
１ビット分の回路を作るのも大きな本棚ぐらい必要だったん
だ。それでも実用的な計算機が開発されるんだ。
勿論、戦争の為だよ。アメリカは、日本人の職人芸に対抗し
て予算を掛けて電子計算機を開発したんだ。
その過程で０から９までの数値を表すのに４ビット有れば良
いと考えて４ビットで１桁を表し、複数桁は、それを組み合
わせる事で対処したんだ。
その戦果は、砲弾の弾道計算で如実に現れたらしい。
米軍の弾は、外れても２回目・３回目には、日本軍の陣地や
船舶に命中したらしい。
第二次世界大戦後、ビジネスとしてコンピュータを作る企業
が商売を始める前に通信関連企業がタイプライタ同士を接続
して遠隔で紙の文章の遣り取りを行おうと計画したんだ。
アルファベットと数字とタイプライタに備わっていた特殊記
号それらの文字をコード化して送れば良いと考えた人が居た
んだ。彼は、文字は６ビットで表現出来る６４文字以内の
種類だとして６ビットの符号を提案したが、４ビットで
１セットの論理回路を開発していた連中は、２セットで
８ビットで回路を作ろうと提案して来たんだ。
そしてＡＳＣＩＩアスキーコードと言う７ビットのコードが
設定されたんだ。８ビットじゃ無く７ビットで全文字は、
網羅し、プラス１ビットがパリティビットと言う偶奇
チェックに使用されるビットを通信時には加味されたので
デジタル回路的には、８ビットが主流でバイトと言うデータ
単位が生まれたんんだ。
これがベースで計算機の１回に処理するデータの単位も８・
１６・・・６４と進化して行ったんだ」
さてパリティ位は、質問して来るかなと準備していたが、
彼女が新たに質問した。
「ＦＡＰに付いては解ったわ。
でもメタ言語って良く解ら無かったわ。説明して」
厄介で有る。でも彼女は理科系女子、その能力ならどうにか
解るかな。
「コンピュータ言語システムと言うのが人間が有る規則に
従って記述した記号の羅列をコンピュータの電子回路が理解
出来る機械語と呼ばれる０と１のビット構造の列に変える物
だと言うのは解るよね」
「それが、高級言語と言うやつね」
「それ、誤解なんだよ。コンピュータサイエンスの世界で
は水準とかレベルとかの言い回しをするんだ。
機械語に近いコンピュータ言語を低水準ローレベル言語、
アプリケーションを直接表現し記述した様な物を高水準
ハイレベル言語と言うんだけど。
詰り計算機が、直接判る機械語が、一番水準が、低く、
アプリケーションに近い物が、水準が高いと言う人間第一
主義指標だったんだが、高級・低級と言うブランド品みたい
な下世話な言い回しが、不幸な事に一般的に流布されてし
まったんだよ。決して機械語が、低級言語では無いんだよ。
寧ろ高度な技術のいる高級なプログラミング作業だったんだ
けど日本語の言い回しで変な事に成ってしまったんだ」
「私、Ｃ言語は比較的水準の低い言語だと聞いた事が有る
わ」
「それを言っていた人はコンピュータサイエンスに精通し
た人だよ。
Ｃ言語は、機械語に近い記述が出来て高速に効率の良い
システムプログラミングを行う為に開発された物なのでそう
言った言い回しに成るんだが、正確に言うと
『Ｃ言語は機械語に近い記述が出来る比較的水準の低い
コンピュータ言語だが、表記方法は比較的自然言語や数学的
数式に近い高級な言語と言える』」
「なんだか、ややこしいわね」
「パソコンが広まった時に比較的に簡単で習得が容易な
コンピュータ言語ＢＡＳＩＣを『高級な言語ＢＡＳＩＣを
搭載していますので使い勝手が良いです』と広告しちゃった
のが、恐らく元凶だろうな。
そうだ今なら、ＢＡＳＩＣ依りも使い勝手が良い高水準言語
としてＥｘｃｅｌの様な表計算ソフトを言う場合も有るんだ
よ」
「それでメタ言語は」
「御免、話を戻すね。ありていに言えば、
プログラミング言語の上位言語に当たるんだよ。
尤も最上位言語は、僕達の世界では、日本語に成るんだけど
ね」
「どお言う意味。もっと分かり易く成ら無い」
「御免ね。
君でも無理か、長い話に成るけどがまんして。
概念から話すよ。
コンピュータサイエンスの世界では、プログラミング言語は
アプリケーションを記述する為の言語。
ここまでは、解るよね」
「はい、解ります」
「メタ言語と言うのは、プログラミング言語がどの様な
構造に成っているかとプログラミング言語の書き方で何が起
こるのかという事を記述した言語でプログラミング言語自体
の構造と意味を有る規則に従って書いた物なんだよ。
プログラミング言語の文法自体を記述した設計図の
プログラミング言語と言った物なんだよ」
「一寸、ややこしいけど。
アプリケーションにとってメタは、プログラミング言語で書
かれたプログラムでプログラミング言語自体もメタ言語を
プログラミング言語とするアプリケーションなのね」
「流石、君は鋭い。概念的には、その通りです。
だから、そのメタ言語を解説している日本語の文章を
メタメタ言語と呼ぶんだよ」
「貴男は、今、メタメタ言語を喋っているのね。
でもアーティフィカルジャッジやオートパイロットに必要な
メタ言語って何なの」
「政策や裁判に使用するアーティフィカルジャッジは、
複雑怪奇なのでオートパイロットの説明で良いかな」
「良いわよ」
「今実現されている。
自動操縦じみたものは障害物が現れたらストップさせるもの
や精々、先行する前車に適正な車間で付いて行くと言う機能
なんだけど。
レーダーやソナー等のセンサと複数台のビデオカメラで捕ら
えた画像を参考にして障害物や前車との距離を把握して速度
を落としたりブレーキを掛けたりする仕組みだとは、認識し
ているね」
「ええ、大災害前に発売されている車は、その様な機能
だったわね。
私も試乗させて貰ったけどチャント止まったわ」
「それらは、レーダやソナーなどのセンサでの距離情報と
カメラでの画像から物体認識やステレオ映像解析で距離を求
めたり、対象物のサイズを認識したりして車をストップさせ
るかどうかの判断を下すんだが、総て人手でプログラムを組
み上げているんだよ」
「それがどうしたのシステムってそうやって作るんでしょ
う」
「今のは緊急時に止めるだけのシステムなんだが、
オートパイロットだと車の内外の情報を桁違いに把握する
必要が有るんだよ。
車内では、搭乗者の状態・荷物の状態、搭乗者の健康状況、
急加減速や急なハンドル操作に耐えられるかどうか、
ジュースやコヒーなどの飲料品がどう成っているか、
人間のドライバー成らば十分に把握している事も考慮する
必要が有るんだよ。
車外に至っては、雨や雪等の天候は当然、前方の落下物等の
情報だけで無く道路の側面の木とか看板が倒れ無いかどうか
人や自転車が道路を渡ろうとしているか、否か、近くで子供
が遊んでいるか否か、前方を歩いている人や自転車の人が
携帯電話で話しているか、音楽プレーヤを聞いているかどう
かも判断し無いといけ無い。
上下線の有る道路でも反対側の車線にオカシナ動きをしてい
る車が無いかどうか、自分の後ろからどの様な車が来ている
か、特に二輪車や自転車の動きには、注意し無ければいけ無
い。
対向車線では、特に前方から来る対向車の動きに気を付ける
必要が有る。まだ有るよ。
交差点では、特に気を付け無ければいけ無い。
当然の事ながら、信号機の情報は把握して置か無ければ成ら
無い。
厄介なのは警官や誘導員の手旗信号を把握しなければ成ら無
い事だ。
まだまだ有るけど人間が普通に把握している事は実は凄い事
なんだ」
「なんだか、自動車の運転って面倒ね。
私、免許取るの止めるわ」
「そうしてくれるのは嬉しいな。心配事が一つ減る。
僕は、常々アイドルの女の子に車の運転をさせるのは反対な
んだ。彼女達は助手席で微笑むのが一番似合う。
君もそうだよ。
この様に一寸、上げるだけでも面倒で複雑怪奇なんだ。
一々個別の状況把握をプログラミングしようとしたら出来無
い事では無いんだが、かなり人手のコストが掛かるんだよ。
それを有機的にシステムに組むと成ったら大変なんだよ」
「それで人工知能的手法が検討されたのね」
「本当に君は理解力抜群だよ。
でも大量のデータービッグデータから答えを導き出す為に
典型的な人工知能的手法の学習機能方式ディープラーニング
が有るが、それの方向性を決めるのが、メタ言語なんだ」
「だいたい概要は解かったわ。
でも方向性ってどう言う意味」
「車を運転するとは、どお言う事だと思う」
「Ａ地点からＢ地点への移動なんじゃ無い」
「主にそうだが、デートで海岸をドライブしたり、配送業
務で数ヵ所に配ったりするとか、色々なパターンが有るんだ
よ。そうだ、例え話をしようか
『一組の男女が高速道路でデートしていたとしよう。
サービスエリアで彼が言った。【シートベルトはちゃんと締
めてね】、彼女が応えた【嫌よ、何かしようと考えているで
しょう。結婚式まで我慢して】男女は婚約する時に愛の証と
称して割と高額の生命保険に加入していた。
彼は、飛ばした。
先行するトレーラーとの車間が極端に狭く成った。
彼は、急ブレーキを踏んだ。彼女はシートから飛び出し、
フロントガラスに激突した。即死だった。
彼は、保険金を受け取った。
セックスどころか唇までを事有る毎に拒否しながらもデート
を求める彼女がいい加減鬱とおしかったのだ』」
彼女にしたら、彼にお預けさせて楽しんでいただけだが遣り
過ぎたのだ。
「ののこ には、シンデレラのその後の話しとか言って
お話しをしてたけど私には、初めてね」
「あの時は、ののこ に僕とのセックスを許して貰える様
にする為の小細工だよ。
君との生活では、君が十分に助平に成っていたから必要無
かったんだよ」
「でも非道い話ね。それがどう関係しているの」
「もし、オートパイロット付きの車でこの事件を起こそう
としたらどうだろうか」
「普通に考えたら無理よね」
「この場合、『オートパイロットオフ』と彼が口答で命じ
ると
『危険ですから、オフまでの秒数を指定して下さい』と
オートパイロットが応えた。
『一秒で良い』言うやいなや彼は、ブレーキを目一杯踏み
込んだ」
「非道い、それで彼女矢張り死ぬの」
「この場合、乗員の生命優先の原則が適応され、先行する
トレーラに接触する程度で衝突する事で衝撃を最小限に止め
救急隊を呼ぶ事に成る」
「安心した。でも、彼、文句を言わ無い」
「彼も身体的にダメージを受けている筈だから、頭が回ら
無いと思うよ。
ここまでオートパイロットの状況判断ジャッジは、しなきゃ
成ら無いんだ。
それをどう判断するかの条件を入力しているデータを解析す
るのが、メタ言語そのメタ言語で実際に作動する
プログラムシステムが生成され作動するんだ。
だからメタ言語は、従来のプログラミング言語の様に
テキスト形式つまり、文字や記号で記述するだけでは無く、
映像を示してこの場合はこうする等と指定するんだ」
「分かった気がする。でも非道い例え話だったわね」
「男って、たがが外れたら、遣りかね無い普通の話だよ」
「だから、貴男、ののこ を襲ったのね」
「女って、何時までも昔の事を言うね。
男は、前しか向いて無いから忘れるんだけどね。
あ、そうだ。男性の運転手の場合前方からが原因の事故は、
少無いんだが、後ろから追突されるとか、後ろから来る
二輪車を巻き込む事故は多いんだ。
オートパイロットは、その為にも効力を発揮するけど本当に
優先順位の設定は難しいんだよ」
《次は、『専務理事』》
目次は、『ベテルギウスの夜にプロローグ』にリンクを
張っています！
関連して『ベテルギウスの夜に解説（１２）』で特殊な
語句を解説しています！
文末
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか？