相続放棄を決めたあと

仕事の昼休みに友人からLINEが来た。
珍しいなと思い、メッセージを見てみる。

『実は〇〇(死んだ旦那)に200万円を貸している』

何の構えもなくメッセージを見てしまったものだから
衝撃が大きかった。
一文字一文字、ゆっくりと読み込んでみる。
血の気が引いていくのを感じた。

実は、旦那は以前もこの友人から借金をしていたことがある。
それはきちんと返済したはずだ。
家庭から捻出したお金で返済をしたのだから間違いない。
まさか、それをどこかで使いこんで返していなかったのか?
それを否定できない生前の旦那のお金のルーズさに頭が痛くなる。

心臓をばくばく言わせながら友人にLINEで確認したところ
その借金はきちんと返済されているものの、その後、新たに借したとのこと。『借用書もある』と友人から新たにメッセ―ジが届く。

またか。またなのか。どれだけ借金してるんだ。
やはり弁護士さんの言う通り相続をしなくて良かったのかもしれない。
債権者が他にも出てくる可能性があると言っていたものの、
本当に出てくるとは。しかも、友人とは。

当たらなくて良い予想がばっちり当たってしまっている。
泣けてくる。もはや笑えてくる。

相続をしていたら、自分がしていない借金を
支払わなくてはならないわけで。
ただ、ただ、稼いだお金が消えていくわけで。
そこに、何か実りや収穫はあるのか?
やっぱり相続放棄の選択は間違っていなかった、そう思った。

相続放棄をした私にはこの借金を払う義務がない。
というより、払ってしまうと相続放棄ができなくなってしまうので
債権者への支払いは一律しないようにと弁護士さんから言われている。
その旨を友人に伝え、私ができることは
一債権者として、友人のことを後に選任される財産管理人に伝えることぐらいだろう。債務整理をした際に、少しでも債権を回収してもらうしかない。
そう友人に伝え、また、弁護士さんに事の顛末を報告した。

こんなLINEをもらったら、
おちおちLINEを開けなくなるじゃないか。
他の友人からも同じようなLINEが来る可能性だって捨てきれない。
こんなボディブロー、もういらない。

友人は今私が置かれている状況を知っているから
私個人に借金を払えなどとは言ってこないし
むしろ、私の身を案じてくれている。

私も無い袖は振れないし、個人間の借金を払いたいとは思えない。
いや、どんな借金でも、自分がしていないものに関しては
正直払いたくない。

けれど、そう思っていても、
相続をしていたら払わなくてはいけなかった。
理不尽だ。私が使ったお金じゃないのに。
ただ、配偶者というだけでここまで背負わされるのか。

理不尽な借金を返済している人っていると思うけど
どんなメンタルでそのことに向き合っているんだろう。

私はひたすらに怒りの気持ちで日々の不安感を打ち消しているけど、
どんな気持ちで日々を乗り切っているんだろう。
違う切り口っていうのも知ってみたい。
その方法が自分に合うのかどうかは別として
色んな手札を持っておくことは大切なことだと思うから。

旦那が死んで変わったこと。一日一日の重み。
一日が終わって眠る時に、今日はやりきれたかな?
そんな風に考えるようになった。

だって、人って本当に死ぬんだよ。
分かっていたけど、旦那の死っていうのは特別違った。

祖父母の死は順当だと思って受け入れることができたけど
旦那の死は番狂わせも甚だしい。
未来予想図にこんなものは含まれていなかった。

どうせ死ぬんだから適当に生きよう、
とは、子供がいるから考えられなかったし、
じゃあ、どうするの?って考えたら、
一生懸命生きる!、、、というのは違和感しかない。

元々そんな熱血タイプではないから。
けれど、ただ消化するのはつまらないから
きちんと生きてみるか、って思った。

きちんと生きるとは、ただ、目の前のことを淡々とやるだけ。
洗濯物をきれいにたたむとか、
きれいに掃除をするとか、
仕事に真面目に取り組むとか、そんなこと。
そうしていると、勝手に気持ち良く一日が終わる。

過去と未来は考えると不安になる。
たいていこんなことを考えている時は暇な時だ。
電車に乗っている時とかね。

だから、考え始めたと気づいた時点で
次の駅の名前は何だっけ?と考えてみたり
目の前にいる人の人生を妄想してみたり
とにかく、考えないように自分を誘導する。

過去は考えても変えられないし
(旦那と結婚しなかったらっていうことを妄想したり)
未来は考えても分からない
(ボロボロの家で孤独死、なんて妄想をしたり)

夢を語るのは良いと思うけど、
今の私にとって過去と未来について考えるのは
メンタルを下げるだけだ。

旦那の死でよく理解できた。
そのことについては素直にお礼を言いたいと思う。
そして、草場のかげから私達を応援しろ。
私たちに幸があるよう霊的なパワーでも送ってきたらいい。

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