見出し画像

どんなおにぎりよりも




お母さん

はい、どうぞ。


小さな手で握られたおにぎり。

決して形はきれいとはいえないし

美味しそうにも見えないけど。

お母さんを思う気持ちは

どんなおにぎりよりも負けません。

ベッドに横になり、起きる事もままならないお母さん。

少しでも元気にと

女の子は学校から帰ると

毎日その小さな手でおにぎりを握りました。

お母さんはそのおにぎりを手に、目を細めて

「美味しい。ありがとう」

と笑って食べるのです。


心の病気と闘うお母さん。

女の子は子供ながらにそれを知っています。


私が作ったおにぎりを食べると

お母さんはいつも笑顔になる。

どんなお薬よりも私のおにぎりで

お母さんを元気にしてみせる。


今日も明日も女の子は

お母さんを笑顔にするために

おにぎりをつくるのです。


両手からこぼれそうになる米粒を

しっかりと握るのです。

大きな海苔を一枚広げて

しっかりと握ったおにぎりをまん丸に包んで。

お母さん、元気になぁれ!と、思いを込めて。

        おしまい

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?