いつまでも〜龍神の誕生〜
私が生まれたのは300年も前のことだ。
この地もまだ村と呼ばれ、山々に囲まれ、田畑を見渡せる山地。
人々は貧しくも互いに協力しながら暮らしていたころ。
その村に、ある娘がいた、名は「ちよ」17の年になる。
ちよの家も貧しく、父、母、ちよの3人で暮らしていた。
『おっとう、おっかあ、これからせいじさんと山へ薪になる木を取りに行ってくる』
『気をつけてな』
せいじは、ちよのいいなずけ。力仕事はいつもせいじが手伝っていた。
『ちよ、これくらいでいいだろう。山をおりよう』
ん?
たまご??
私の顔より大きい。
『せいじさん、見て、おっきなたまご』
『ほんとだな、でもやめとけ化け物だったら食われちまう』
『まだ温かい、親が産み落としてどこかへ行ったのよ』
せいじの注意も聞かず、ちよは、たまごをしっかりと抱いて帰った。
それから、ちよは、肌身離さずたまごを温め、ひと月後私は生まれた。
『まぁ、龍??あなた龍の子?』
『ピュ〜』
『可愛い鳴き声ね』
『名前、そうね、きっと立派な龍になるから、大きな事を成し遂げてくれる。大成!うん!だいじょう、にしましょう。だいじょう、よろしくね』
不思議とこの村の人々は私を怖がる事もなくすんなりと受け入れ、みなが私を可愛がってくれた。
私はみるみる大きくなり、みなを見下ろすほどになった。
ある日、里へ出た村のものが慌てて帰ってきた。
『大変だ!だいじょうの事がたいそうな噂になって、退治して見せ物にしようと騒ぎになってるぞ!』
ちよも村の人々も急いで私を助けようと私が隠れられる場所を探した。
それが丘の上だ。
あの頃は険しい道で人もあまり寄り付かなかった。
そこへ私を隠し、みなが交代で私の様子を見に来てくれた。
何日もそんな生活が続いたある日、雨が降り続いた。
何日も何日も続いた。
ちよは私を心配し、私の所に来て離れようとしなかった。
すると、山の奥からもの凄い音が聞こえ地響きがする。
土砂崩れだ!
『大変、村が村が』
慌てるちよ。
『ちよ、ここにいては危険だ。村のみんなと逃げるんだ』
『だいじょうを残してはいけない』
『ちよ!』
せいじが血相を変えて来た。
『大変だ!村が沈みはじめてる。みんな逃げる準備を始めてる、ちよも急げ!』
『このままだと村は?村はどうなるの?』
『今のままだと沈んでしまう。向こうの山の大きな池がもう決壊して流れ込んできてる』
『そんな、だいじょう!どうにかできない?村を残さなきゃ。みんなを守らなきゃ。あなたを守って助けてくれたみんなを』
私は考えた。
あの山を崩してあの沢山の岩も砕けば、なんとかなるかもしれない。
『ちよ、私に考えがある。私に任せて早くせいじと逃げるんだ』
『だいじょうを残しては行けない!私も手伝うから!』
『ダメだ!ちよ!!』
ちよは、私に飛び乗りしがみついた。
振り降ろそうとしても降りようとしない。
すると、せいじまでもが私に飛び乗った!
『お前たち、何してる!早く逃げろ!』
『だいじょう、ちよが残るなら俺も残る、俺たちは後悔などしない!これからもずっと一緒だ!急げ、だいじょう!村を、村を守ってくれ!これからずっと続く村だ。この先、生まれてくる者たちのためにも!』
私は2人を乗せ、山に向かった。
何度も何度も山に体当たりし岩を砕き、山を崩し、流れくる水をせき止めた。
力尽きた私は2人を乗せたまま崩れ落ちるように倒れた。
やがて雨は止み、光が差し込んできた。
ふと、2人をみると、まるで眠っているかのように穏やかな顔で手を取り永遠の眠りについていた。
2人の姿を見て私も息絶えた。
幾日かたち、村人達が私たちのために祠を建てた。
村を救った私たちを祀り、代々言い伝えてくれたのだ。
今でも丘の上に3つ並ぶ祠に人々が手を合わせに来る。
村から町になった今。
私、ちよ、せいじは、ここで時々空を舞い、人々を見守っている。
これからもずっとずっといつまでも守り続ける。
私が倒れた場所には雨水がたまり大きな池になり、龍の形をした池として今でも残っている。
現在、私達を祀る祠に多くの人々が来る。
その者たちの願いを聞き、正しい行ないをする者たちの手助けを私達はしている。
おしまい
長くなりましたが、読んで下さりありがとうございます😊話の内容は私の妄想です。絵本ストーリーというより、昔話❓のようになっちゃいました😅
マキさんが、龍の絵を描いて下さり、絵を見た瞬間このお話が浮かんで来ました🐉
書き始めると止まらなくなってしまい長くなりました😅
マキさん!
素敵な龍🐉のイラストありがとうございます♪♪
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